需給動向 海外

◆E U◆

生乳の減産が続き、乳価は5カ月連続の上昇


生乳出荷量は6カ月連続減少

欧州委員会によると、2016年11月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前月比4.4%減、前年同月比3.6%減の1145万トンとなった(図19)。生乳クオータが撤廃された2015年4月以降1年以上増加を続けてきた出荷量は、2016年6月以降6カ月連続の減少となった。

034a

同月の生乳出荷量を加盟国別に見ると、EU最大の生乳出荷国であるドイツ(シェア21%)が同5.2%減、第2位のフランス(同16%)が同7.6%減、第3位のオランダ(同10%)が前年並、第4位の英国(同10%)が同7.3%減と、特に主要国で減産傾向が強まっている。乳価の長期低迷による乳牛の淘汰や10月から実施されている生乳出荷削減奨励事業などが影響している。

EU全体では、2016年1〜11月の累計では、5月まで前年を上回ったことから、前年同期比で0.8%増となっており、2016年通年では前年比0.6%増と見込まれている。

乳価は32ユーロまで上昇

欧州委員会によると、2016年12月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前月比1.3%高、前年同月比4.4%高の100キログラム当たり32.0ユーロ(1キログラム当たり39.7円:1ユーロ=124円)となった(図20)。

034b

同価格は、生乳出荷量の減少などを背景に、2016年8月以降上昇を続けており、11月には2015年12月以来11カ月ぶりに30ユーロ台まで回復し、12月はさらに上昇した。しかし、2016年の平均では、前年比8.9%安の同28.4ユーロ(同35.2円)となり、欧州酪農危機といわれた2009年以来7年ぶりに30ユーロを下回った。

脱脂粉乳公的在庫の売渡入札、2回連続の不落

欧州委員会は2017年1月17日、3回目の脱脂粉乳公的在庫の売渡入札を実施し、前回(2017年1月3日)同様、全量を不落とした。

今回は、7490トンの応札があった。しかし、欧州委員会は、応札価格が100キログラム当たり155.0ユーロ(1万9220円)から199.0ユーロ(2万4676円)と、前回同様に市場価格をかなり下回ったことから、すべての応札を不落とした。このことは、欧州委員会がかねてより説明してきたとおり、売渡入札の目的が、在庫を市場に放出することではなく、需給バランスの均衡と価格の回復であるということを改めて示す結果となった。

入札対象は、2015年7月から2016年9月9日までに各国政府に買い入れられた累計35万4000トンのうち2015年11月1日までに買い入れられた2万2000トン(公的在庫量全体の6%)であるが、落札数量は、1回目(2016年12月13日)の40トン(落札率0.2%)にとどまっている。

売渡入札については、生乳クオータ制度終了後の乳価低迷下、乳牛を淘汰するなど酪農家の自主的な取り組みを阻害するとして、一部の酪農家のグループが欧州委員会に対し大掛かりな抗議を行うなど批判的な見方もある。乳価がわずかながらも上昇し続けるなど明るい兆しも見えつつあるEU酪農情勢だが、引き続き不安定な要素も含んでいる。

(調査情報部 大内田 一弘)


				

元のページに戻る