需給動向 海外 |
◆チ リ◆
2016年の豚肉輸出量は減少し、輸入量は増加
豚肉生産量は前年比3.1%減
チリ農業省農業政策・調査局(ODEPA)によると、2016年の豚と畜頭数は、前年比0.9%減の506万1237頭となった。また、豚肉生産量(枝肉重量ベース)は、同3.1%減の50万7749トンとなった(図10)。
同国では、近年、養豚経営に関連する環境規制が強化され、生産能力の拡大が難しくなっている。2016年は、主な飼料原料であるトウモロコシの生産が他作物への転作やエルニーニョ現象などの影響で落ち込み、飼料コストが上がったことから飼料給与量が調整され、1頭当たり枝肉重量は同1.9%減の100.3キログラム(注1)となった。
(注1) チリの豚枝肉の多くは頭・皮付きであるため、1頭当たり枝肉重量は日本の1.3倍程度が目安とされる。平均出荷体重は120キログラム前後である。
輸出量は微減も中国向けが大幅増
2016年の冷蔵・冷凍豚肉輸出量は、減産を受けて、前年比2.8%減の13万1022トン(製品重量ベース)となった(表4)。
国別に見ると、中国向けは、下半期(7〜12月)に1.5倍を記録するなど、前年比43.4%増と大幅に増加して初めて最大の輸出先となった。背景としては、中国国内で豚肉供給が需要に全く追いつかず、ラクトパミン(注2)を使用していないチリ産豚肉の需要が大幅に増加したことが挙げられる。
豚肉生産の94%を占める企業が加盟するチリ豚肉生産者協会(ASPROCER)は、ラボバンクの報告書で中国市場が2017年も引き続き好調を維持するとの見通しが示されたことを受け、同市場への期待を寄せている。
一方、2015年に最大の輸出先であった韓国向けは、同14.3%減とかなり大きく減少し第2位となった。同国向けは、2004年に発効した自由貿易協定(FTA)により関税撤廃されたことで好調に推移してきたが、2016年は安価なドイツやスペインとの競合激化によりシェアを失った。
また、第3位となった日本向けは、日本国内で豚肉需要が好調に推移した中、安価な輸入豚肉需要も増加し、同8.7%増とかなりの程度増加した。
(注2) 豚や牛の体重増加や飼料効率の改善、赤身肉割合の増加に用いられる動物用医薬品。
輸入量は過去最高を記録
2016年の冷蔵・冷凍豚肉輸入量は、前年比58.3%増の5万4321トン(製品重量ベース)と過去最高を大幅に更新した(表5)。近年、同国では豚肉生産が停滞する中、人口増や経済成長を受けて拡大する国内需要分を確保すべく、安価な外国産豚肉の輸入量が増加している。
また、2016年下半期には、国内有数の豚肉インテグレーターの農場数カ所が、環境問題で閉鎖に追い込まれ、現時点では豚肉生産能力の拡大への期待が見込めないことから、豚肉輸入量はさらに拡大する可能性が高まっている。
(調査情報部 米元 健太)