海外情報  畜産の情報 2017年3月号


ウルグアイの牛肉生産の現状と輸出市場での潜在力

調査情報部 米元 健太、玉井 明雄


【要約】

 ウルグアイの牛肉輸出量は近年増加基調で推移し、2015年には世界第8位の37万3000トン(枝肉重量換算)となった。同国では、国土の大半を占める広大な草地を利用して、ヘレフォード種やアンガス種由来の良質な牛肉生産が行われている。このため、同国産牛肉は、とりわけ欧州で、アルゼンチン産と並んで評価が高い。同国は2000年代半ば以降、積極的な開放政策の下、ブラジルや英国の他、中国資本など外国資本による国内パッカーの買収が相次いでおり、有力な牛肉供給基地として注目を集めている。

1 はじめに

南米のウルグアイは、日本の半分程度の国土で、人口350万人に満たない小国でありながら、牛肉の国際市場で存在感を発揮し続けている(図1)。肉用牛飼養頭数は1100~1200万頭(日本は250万頭程度)前後で安定的に推移しており、1人当たりの牛飼養頭数は世界一である。また、輸出志向型の産業構造ではあるものの、1人当たり牛肉消費量は年間60キログラム程度(枝肉重量換算)と、アルゼンチンと並んで世界最高の水準に位置付けられる。

093a

同国は日本の最遠隔地の一つで、あまり馴染みがないものの、歴史的に見ても長年にわたり、温暖な天候下で良質な牛肉生産が行われてきた。こうしたことを裏付けるように、国連教育科学文化機関(UNESCO)は2015年、1859年に設立された同国西部のリオネグロ県都Fray Bentosの食肉加工場を中心とした産業建築物群を世界文化遺産に認定した。この場所では、近代的な設備を導入して1865年にコンビーフや牛肉エキスの輸出を開始し、冷蔵・冷凍船が出現する前の欧州において人気を博したほか、戦時中の保存食としても重宝された。そして、生鮮牛肉輸出中心となった現在においても、ウルグアイ産牛肉は高品質な牛肉として認識されており、確固たる地位を確立している。

こうした中、2011年11月、ウルグアイ政府から日本政府に対して、ウルグアイ産生鮮牛肉の輸入再開の要請があった(注:日本は1998〜2000年まで同国産生鮮牛肉の輸入を解禁していた)。そして、2016年3月の食料・農業・農村政策審議会第26回家畜衛生部会において、同国からの生鮮牛肉の輸入を認めることについて農林水産大臣から諮問され、同部会において審議が進められている。

現時点では輸入再開の可否について明らかではないが、本稿では、国際市場での存在感に比べて、日本での知名度が低いウルグアイ産牛肉について、需給動向などの基礎情報に加えて特徴や課題などを整理し、さらに日本向けが再開となった場合の輸出可能性について考察する。なお、文中の為替レートは1米ドル=115円(2016 年1月末TTS相場114.81円)、1ウルグアイペソ=4.1円(同4.06円)を使用した。

093b

2 ウルグアイの経済・農業概況

(1)経済

ウルグアイの経済は、隣国のブラジルやアルゼンチンの経済の影響を受けやすいとされる。このため、ブラジルやアルゼンチンが経済危機に陥った2000年前後に同様に経済危機を経験したが、近年は南米南部共同市場(メルコスール)域外(とりわけ中国)との関係を強化する中で、安定的な経済成長が続いている(図2)。この背景としては2005年以降、バスケス第一次政権下で貿易・投資を推進すべく、自由で開かれた政策を深化させた影響が大きい(表1)。中継貿易の拠点となるフリーポートやフリーエアポートを設置し南米物流のハブ化を推進したほか、投資振興法で外国資本の参入に対して税制を優遇した結果、海外直接投資(FDI)は、2005年から2014年にかけて約3倍に増加した(2014年:27億5500万ドル(3168億円))。このため、現在、健全な政治経済運営の下で経済成長が続いており、チリと並んで南米における最も安定した国家と評されることが多い。

094a

094b

(2)農業

ウルグアイ農牧水産省(MGAP)によると、同国の2015年のGDPに占める農畜産業の割合は6.2%を記録した。また、同年の輸出額のうち、農産品(林産品を含む)は74%と大半を占めている。このことから、農畜産業はまさに基幹産業に位置付けられることが分かるが、中でも肉用牛生産は最も盛んである。

同国の国土の大半はなだらかな丘陵地帯であり、牧畜に適した土地が広がっている。土地利用の内訳を見ると、近年、大豆などの畑作や林業が拡大傾向にあるものの、依然として牧畜用草地が国土の8割程度を占めている(図3)。これは、土壌の多くがじょうで、アルゼンチンのパンパ地域と比べて保水力が劣り、耕地としては高単収が見込めないことが大きい。このため、ウルグアイの土地利用上、牧畜が最も収益性が見込めるため、農業者の多くが肉用牛生産に従事している。

095a

気候は、ケッペンの気候区分によると、温暖湿潤気候に属し、毎月80〜120ミリメートル程度の降雨をコンスタントに記録するが、大豆やトウモロコシの生育期となる12月は比較的少ないとされる。このため、畑作物の中では、比較的耐干性に優れ、近年収益性が良好な大豆の生産が増加基調で推移しており、その多くは輸出に仕向けられている(図4、表2)。

095b

095c

なお、同国では基本的に干ばつが起きづらいとされているが、まれに深刻な干ばつが起きることがある。直近では2015年にエルニーニョ現象の影響が強まった結果、降雨が極端に減少し、草地および耕地の生産性が低下した。

3 肉用牛飼養動向

(1)品種・飼養頭数

肉用牛の飼養は、広大な草地を利用した放牧が一般的で、主な品種は温帯種のヘレフォード種やアンガス種である。品種別のと畜頭数に関する公表資料はないが、ウルグアイ食肉協会(INAC)によると、ヘレフォード種60〜65%、アンガス種20〜25%、その他(シャロレー、リムジン、乳用種など)10〜20%とされ、近年はアンガス種が漸増傾向にある。

飼養頭数は、いわゆるキャトルサイクルや干ばつによる影響はあるものの、2000年以降、旺盛な輸出需要にけん引されて堅調に推移している(図5)。県別飼養内訳を見ると、地価の安いタクアレンボ県やサルト県、アルティガス県といった北部を中心に増頭が進んでいる(図6、参考1、表3、4)。地価が比較的高い南部における単年当たりの地代は、購入する場合の30分の1程度(年間1ヘクタール当たり200〜300米ドル)とされ、借地経営の肉用牛農家も多く存在する。と畜は、国土がコンパクトであるため、輸出港に近い南部まで輸送されて行われる場合が多い。

096a

096b

097a

097b

097c

097d

なお、牛と同じ牧区で飼養されることの多い羊の飼養頭数は、大きく落ち込んでいる。羊肉は牛肉よりも高値で取引されるものの、生産者からは、地価が高騰している中、単位面積当たりの産肉性が牛より劣ることに加え、羊の盗難が多発していることも減少要因として挙げられた。

(2)経営形態および飼養スケジュール

肉用牛農家の経営形態は基本的に、繁殖、肥育、一貫経営の3種類で、羊などを含む牧畜農家1戸当たり飼養面積は310ヘクタールである(表5)。牧畜農家戸数や同面積は、5年前の2010年の水準(戸数4万7899戸、1戸当たり飼養面積312ヘクタール)から、ほとんど変わっていない。

098a

種付け時期は10〜12月、分娩時期は8〜10月が多くなっており、これは分娩が牧草の生育が悪くなる乾季に重ならないように考慮している。人工授精は、肉用牛の場合、10%程度と低水準であり、未経産牛に対して行われることが多く、経産牛は自然交配が主である。経産と未経産全体の受胎率は65%程度である。繁殖雌牛の平均供用回数は6回程度で、連続して受胎しない場合は肉用に仕向けられることが多い。

去勢牛の一般的な飼養スケジュールは図7のとおりである。牛の9割は一貫して牧草で肥育されており、残りの1割は仕上げ期にフィードロットで飼養されている。いずれの方法でも出荷時生体重は500キログラム前後であるが、出荷月齢は異なってくる。また、未経産牛の場合は、440キログラム程度で出荷される。近年、出荷月齢の短縮化が進んでいるが、この背景には、品種改良や草地状態の改善など複合的な要因が考えられる。

098b

(3)草地

農牧水産省(MGAP)によると、2015年6月30日時点の肉用牛経営は、11.2%が改良草地、88.8%が自然草地で行われていた(図8)。改良草地の割合は、酪農経営や、畑作との複合経営と比較して低水準にとどまっているが、これは肉用牛が低コスト生産を志向していることによる。

099a

099b

しかしながら、ウルグアイ農業連盟(FUCREA)によると、近年は前述のとおり土地価格が上昇基調で推移しており、今後は単位面積当たりの収益性を向上させるべく、草地の改良が進んでいく見込みである。

具体的には、改良が可能な土地を7区画に分けて、最初の年にマメ科の大豆を、翌年にソルガムを作付ける。その後、牧草種子を播種し、3〜5年程度改良草地として使用するという輪作体系である。改良草地で播種される牧草の種類は、生産者によってさまざまであるが、イネ科(フェスク類やオーチャードグラス、チモシーなど)と、タンパク質含量の高いマメ科(シロクローバ、アルファルファなど)との混播が多い。

(4)出荷ルート

生産者は、牛を出荷する際、パッカーとの取引で有利になるよう、荷受業者または生産者組合・協会を介して出荷している(図9)。なお、牛取引は基本的に米ドルで決済される。

100a

ア 荷受業者仲介ルート

ウルグアイ荷受業者協会(ACG)によると、肉用牛の6〜7割が荷受業者を介してパッカーに出荷される。荷受業者のほとんどは、ACGに加盟しており、全国に150者程度が存在している。なお、荷受業者は、繁殖経営から子牛を買い肥育経営に売り渡す仲介も行っている。

ACGは、会員の荷受業者を集めて毎週月曜日に会合を開き、前週の取引結果を共有している。取引結果は、カテゴリー別(性、月齢など)にホームページ上で公表しており、INACの統計と並び国内取引の主要指標に用いられている。

生産者は荷受業者を介す場合、自らの牛の売り先を指定せずに業者に託すことになり、パッカーとの交渉も行わずに済む。荷受業者は、パッカーの生産計画について情報収集するとともに、どのパッカーが最も高く買い付けているかを常時把握しており、生産者から預かった牛をまとめて取引することで価格交渉力を発揮している。生産者としては、単に近隣のパッカーに販売するよりも高く売れるメリットがあることから、伝統的に最も一般的な出荷方法となっている。荷受業者の仲介手数料は、パッカーの買取金額の2.0〜2.5%程度である。

イ 生産者組合・協会ルート

生産者組合や協会を介してパッカーに出荷するケースは全体の3割程度だが、近年、増加傾向にある。生産者組合の代表例としては、Vaqueria del EsteやCREA Carneなどが挙げられる。この場合、生産者組合がパッカーとの取引を行うが、半年先までの出荷計画を策定し、あらかじめパッカーと口頭で交渉を進めておく。生産者組合とパッカーの取引では、パッカーの求める規格に応じた場合、インセンティブが付与されることが多く、ある意味オーダーメイドの肉用牛生産が行われる。

ロチャ県の肉用牛農家が集まって1999年に設立されたVaqueria del Esteは、組合として独自に規格を定め、パッカーとの交渉においてINACやACGの公表価格を5%以上上回る価格での買入れを求めている。

101a

4 農家事例

今回の調査では、経営形態の異なる肉用牛農家3戸((1)繁殖経営(2)肥育経営(3)一貫経営)を訪問したので、その概要を報告する(表6)。

101b

なお、肉用牛生産コストについての公式な統計は公表されていないが、訪問した一貫経営のEl Coraje農場によると、去勢牛の生産コストは、生体1キログラム当たり1.1〜1.2米ドルで、出荷金額(同1.6米ドル)の7割強であった。去勢牛は500キログラムを目安に出荷するため、訪問時点(2016年11月)では1頭当たり200〜250米ドル(2万3000〜2万8750円)の利益が見込める計算になる。

(1)一貫経営のEl Coraje農場

農場主のアレハンドロ氏は、兄と2人で農場を経営している。

農場面積の約45%(490ヘクタール)は、肥沃な改良草地で、大豆やソルガムを作付け後、草地としてローテーションしている。改良草地作りには、コストがかかるので、他の農場と比べて単位面積当たりの飼養頭数が多くなっている。

農場内には、ユーカリの植林エリアが多く存在している。これは農場が海から約25キロメートルに位置していて風が強いことに加え、夏は日照りが強いことから、風除けと日陰創出のために植林されたものである。

一貫経営であるが、牧草の生育が良い年には、外部から肥育もと牛(アンガス種)を買い付ける場合もある。

今後の計画としては、牛については既に飼養密度の限界に近いので現状維持とする一方、羊については、羊肉価格が堅調なため、増頭を目指すとのことであった。

なお、農場主は、生産性を高めるためにソフト面の投資を重視しており、従業員リーダーを外国で研修させるなど外部研修も積極的に受講させているとのことであった。

102a

(2)繁殖・育成経営のEl Ombu農場とLos Taras農場

農場主のラウラ氏は、1994年に父から農場を継承した。農場は繁殖中心のEl Ombu農場と育成中心のLos Taras農場の2カ所に分かれている。

以前は一貫経営を行っていたが、現在は繁殖から育成までを主とし、一部で肥育も行っている。土地の生産性などを基に独自の経営分析を行った結果、肥育もと牛を出荷して回転率を高める経営が最も収益性が高いことが判明した。このため、2年前より23カ月齢(360キログラム)前後の肥育もと牛を肥育農家に販売する経営に転換し、毎年11月ごろに近隣の肥育農家へ200頭強販売している。

飼養エリアは幾つかの区画に分かれているが、種付け前の最もデリケートな時期の雌牛は、改良草地エリアで飼養され、分娩後の親子は、自然草地で放牧している。なお、自然交配用の種牛は、雌牛30頭に対して1頭の割合で飼養されている。

今後の計画としては、生産性の高い改良草地に続いて自然草地の生産性を高め、増頭を図りたいとのことあった。

103a

(3)育成・肥育(フィードロット)経営のFrancisco Lista農場

Lista農場は、牧草肥育の一貫経営だったが、繁殖部門を廃止し、穀物生産を拡充して8年前からフィードロットを導入した。経営面積3400ヘクタールのうち1800ヘクタールで穀物生産、残り1600ヘクタールで肥育もと牛の育成や肥育を行っている。穀物栽培面積のうち、外部販売用の大豆が800ヘクタール、フィードロット用の小麦、大麦、ソルガム、トウモロコシ、えん麦の合計が1000ヘクタールである。所在地の年間降水量が比較的多いことから、穀物生産に重きを置いた生産体系となっている。収穫した穀物はビニールバッグサイロ(サイレージ用チューブバッグ)で保管され、フィードロット用の飼料原料として1年以内に使い切る計画である。

103b

広大な草地を有しているため、仕上げの肥育だけを行う一般的なフィードロットとは異なり、育成段階から自ら行っている。2〜3月に繁殖農家(一部は荷受業者を通じて)から離乳後の肥育もと牛(170〜180キログラム)を購入し、その後350キログラムまでマメ科牧草やフェスク類の改良草地(500ヘクタール)などで育成した後、仕上げ期の100日間をフィードロットで肥育し、520キログラム程度で出荷する。飼料給与は、朝と夕の1日2回で、飼料は牛の品種・性別や生育段階を考慮して設計されている(表7)。ウルグアイのフィードロットは牧草の生育が悪くなる冬季限定型が多いが、この農場は年中稼動する通年型である。最近、フィードロットの収容能力を1000頭まで拡大したため、この規模を維持したいとしている。

103c

コラム:「国内の牛肉生産の1割を担うフィードロット」

 ウルグアイのフィードロットは牧草の生育が悪くなる冬季に多く行われており、フィードロット由来牛はと畜頭数の1割程度を占める。この多くは、仕上げ期に100日以上穀物を給与することが義務付けられるEU向け高級牛肉無税枠(Quota 481:後述の表12参照)に仕向けられる(コラム-図)。Quota 481は去勢牛が大半を占めるが、要件を満たせば未経産牛も対象となる。

 フィードロット協会(AUPCIN)によると、フィードロット由来牛は牧草肥育牛より、1〜2割高値で取引されている。訪問時のパッカー買取価格は、牧草肥育牛が枝肉1キログラム当たり3.1米ドルに対し、フィードロット由来牛は同3.7米ドルであった。AUPCINによると、訪問時点では、フィードロットで130〜140キログラム程度増体させて出荷した場合、1頭当たり60米ドル(6900円)程度の利益が出ているが、あまり魅力的な状況ではないとのことであった。

 なお、フィードロットの生産コストの8割強が飼料費で、飼料原料の約半分はアルゼンチン、ブラジル、パラグアイといった近隣国から、大豆かすやDDGS、ふすまなどが輸入されている。

104a

104b

5 牛肉需給動向

米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、ウルグアイは牛肉生産量では、第17位にとどまるものの、輸出量では8位となっている(表8)。2000年以降、国内消費は堅調に推移している一方、輸出はペソ安米ドル高の好輸出環境や米国のBSE発生に伴う代替需要などにより大幅に伸長した(図10、11)。以下では、ウルグアイの近年の牛肉需給について解説する。

105a

105b

105c

(1)生産動向

INACによると、2016年のと畜頭数は、前年比2.8%増の226万6687頭となり、2010年以降最多となった(図12)。と畜頭数は、季節繁殖と冬季型フィードロットの影響で2〜5月に増え、冬季(7〜9月)に落ち込む傾向があるが、2016年は例年と異なる動きをした。これは、2013〜14年にかけて子牛生産が増加していたところに、2015年の干ばつで育成が遅れ、出荷時期が2016年の6月以降に後ずれして増加したことによる。この結果、2016年の生産者販売価格は低迷しており、生産者にとって喜ばしくない状況にある(図13)。なお、ヘレフォードとアンガスの間で価格差は基本的に無い。USDA/FASによると、2016年末の牛飼養頭数は、肉用牛販売価格の低迷で生産者が雌牛を保留せずに出荷するケースが増加するため、前年から微減と見込まれている。

106a

106b

(2)消費

INACによると、ウルグアイの1人当たり牛肉消費量は依然として世界最高水準にあるものの、2011年以降、鶏肉と豚肉の消費が伸びる中で、漸減傾向で推移している(図14)。牛肉は他の食肉と比べて増産が進まず価格上昇幅が大きくなっていることに加え、健康志向の高まりを受けて鶏肉と豚肉の需要が増加している(表9)。

106c

107a

107b

107c

107d

(3)輸出 

ア 牛肉

ウルグアイ中央銀行によると、2016年の冷蔵・冷凍牛肉の輸出量(製品重量ベース)は、前年比12.9%増の29万2942トンとなった(表10)。

108a

品目別に見ると、冷蔵は4万1625トン(前年同期比4.6%増)とやや増加し、冷凍は主要輸出先国であったロシア向けが原油などの資源安に伴う購買力低下を受けて減少したものの、中国向けやイスラエル向けなどが大幅に増加したことで、25万1317トン(同14.4%増)とかなり大きく増加した(図15)。

108b

なお、EUや米国向けには牛肉輸出枠が設定されており、表11のとおりパッカーへ割当てられる。

108c

 (ア) 中国向け

中国向けは近年、加速的に増えており、2013年以降最大の輸出先となっている。中国にとっても、ウルグアイはブラジルと並んで最も重要な調達先となっている(図16)。ウルグアイの多くのパッカーは、中国の旺盛な購買活動に下支えされているが、中国は過度な規格対応を要求せず多様な部位を骨付きで購入するため、現時点では最良の顧客の1つとなっている。

109a

この背景には、中国の政治的な戦略によるところが大きい。習近平国家主席は、就任前からウルグアイとの関係を深め、投資と貿易促進に一役買ってきた。実際、中国のK?江恒???集?(英名「Foresun Group」)は、ウルグアイの中規模パッカーRONTADEL S.A(2016年と畜シェア2.7%)を買収しているが、さらにLORSINAL S.A(同3.2%)の買収交渉も最終段階にあるとされる。

 (イ) EU向け

EU向けは、ヒルトン枠(EU規則593/2013)と高級牛肉無税枠(同481/2012。Quota 481)での輸出が大半を占めており、主にロイン系(ヒレ、リブロース、サーロイン)などの高級部位が輸出されている(表12)。ヒルトン枠の要件は、INACの格付が適用されている(表13)。ウルグアイから欧州への輸送は、船便でも2〜3週間であることから、冷蔵での輸出が可能である。

109b

110a

 (ウ) 米国向け

米国向けは、長年安定的に輸出している。この背景としては、EU向けと同様に、冷蔵での輸出が可能なことに加え、WTO協定に基づく米国の独自の関税割当制度において、ウルグアイ専用の関税割当枠を有していることが大きい(表14)。これにより、他国の動向に関わらず、大幅に低い関税で安定的な輸出を行うことができる。

111a

北米食肉協会(NAMI)によると、ウルグアイ産の牛肉は、グラスフェッドとこれに基づく有機牛肉の生産が中心であり、豪州、NZ産と同様、ほとんどが加工向け(主に、ひき肉製品)である。ただし、Bos indicus(ゼブー)主体のブラジルと異なり、アルゼンチンと同様に温帯種の良質な牛肉を生産できるほか、船便で冷蔵での輸出も可能であることから、ステーキ用やバーベキュー用のテーブルミートとしての需要も徐々に増している状況にある。

 (エ) その他の国向け(イスラエル、ロシア、韓国、日本)

伝統的な輸出市場としては、イスラエルが挙げられる。同国向けはコーシャ(ユダヤ教で定める食べ物に関する規定)対応が求められることから、大手パッカーは需要期の年2回(11〜12月および2月頃)、ラビ(聖職者)を受け入れてと畜を行っており、季節性が色濃い。なお、各パッカーは、一般的にコーシャ対応をしているが、ハラール対応は積極的に進めていない。

ロシア向けは、2012年までは最大であったが、ロシアが経済危機に伴いルーブル安に陥った2013年以降、漸減傾向で推移しており、正肉中心であった部位も内臓中心となっている。

韓国向けは、2013年の輸出再開以降、漸増傾向で推移しているが、特に2017年に入って引き合いが強まっている。背景としては、競合する豪州産の価格上昇で、ウルグアイ産牛肉(骨なし)の優位性が相対的に高まっていることが挙げられる。

日本向けについては、一時、ウルグアイが口蹄疫ワクチン非接種清浄国に認定されたことを受け、1998〜2000年にかけて解禁されていたが、ウルグアイで口蹄疫が発生して以降、現時点では輸出再開に至っていない。参考までに、日本市場にウルグアイ産生鮮牛肉が輸出可能であった際、日本市場でライバル視される豪州産との競合関係は表15のとおりであった。当時は、豪州を含め世界の牛肉供給が豊富な時期であったが、ウルグアイ産は、比較的高値であったものの年々拡大した経緯もあり、品質面などを総合的に勘案すると、豪州産などの不足分の一部を補う調達先となる可能性がある。

112a

イ 生体牛

生体牛輸出は、需要が年によって変動する不安定な市場へ輸出されることが多いことから、さほど安定的な手段ではない(図17)。輸出対象となる牛は、8〜16カ月齢の肥育もと牛や繁殖目的の牛が多い。2015年以降最大の輸出先となっているトルコは、ブラジルの肥育もと牛高を受けて、ウルグアイに切り替えたにすぎない。政府として振興しているわけではないが、販売チャネルの多角化につながっていると言える。

112b

ウ 加熱牛肉

近年、加熱牛肉の輸出は停滞基調で推移している。米国向けがほとんどであるが、パッカーとしても中国向け生鮮牛肉輸出が好調に推移しており、加熱牛肉の輸出意欲が減退しているといえる。2016年の国別輸出量で、日本向けは第3位であったが、ごく少量(53トン)にとどまっている(図18)。なお、日本のウルグアイ産加熱牛肉の認定施設は2月14日時点で4カ所となっている(表16)。

112c

112d

6 パッカーの動向

ウルグアイのパッカーは、2005年ごろまでは国内資本のみであったが、外国資本を積極的に受け入れる政策により、現在ではと畜頭数に占める外国資本の割合が約6割にまで拡大している。外国資本は、国内資本のパッカーを買収して、設備の更新を進める場合が多い。ブラジルの大手3社(JBS、Marfrig、Minerva)のほか、英国、中国資本なども進出し、と畜上位のパッカーの多くが外国資本を母体にしている(表17)。政府および業界は、外国資本の占有率がさらに拡大することを特段憂慮しておらず、今後、さらに外資割合が拡大する可能性が高いとされる。

113a

今回の現地調査では、受け入れに協力していただいたた3社を訪問して聞き取りなどを行ったことから、以下のとおりその概要を報告する(表18)。なお、一般的に、各パッカーは自社農場を保有していない。

113b

(1)近代的なBPU社ドゥラスノ工場(英国資本傘下:施設番号310)

英国の食品大手2 Sisters Food Group社が母体であるBreeders & Packers Uruguay(BPU)社ドゥラスノ工場は、ウルグアイの牛肉の質の高さや、良好な投資環境およびトレーサビリティシステムを受け、2010年にドゥラスノ県に1億5000万米ドル(173億円)を投じて新設された。土地の取得からスタートし、同国でのナンバーワンパッカーを目指して処理頭数を増やしている。最新鋭の設備を導入しているため、省力化を実現し、生産効率が高い(図19)。

114a

380の生産者が組織する生産者組合Producer Clubと計画を結び、ここから年間7万頭強(と畜頭数の4割強)を仕入れている。また、大規模なフィードロット経営農家と年間5万頭の出荷契約を結んでいるため、と畜頭数に占めるフィードロット由来牛の割合が高く、EU向けのQuota 481については国内で最大のシェアを占めている。

輸出先は、金額ベースで中国40〜45%、EU15%、米国11%、カナダ10%程度である。輸出先別の特徴は、EUが高級部位、米国やカナダは挽き材、中国は低級部位や内臓中心となっている。

現在の稼動状況は、1シフトで1日当たり800〜850頭であるが、最大処理能力は同1200頭であるので、さらなる拡大を目指している。なお、高級部位の引き合いがある韓国市場に注目しており、2016年下半期に取引実績を伸ばしている。日本への輸出が再開すれば、意欲的に輸出したいとのことであった。

(2) 大手のFrigorifico Canelones社(ブラジルJBS社傘下:施設番号8)

115a

カネロネス県に所在するCanelones社は1947年に設立された家族経営のパッカーをルーツに持ち、2009年にJBS社がBertin社を買収して現在の体制となった。世界最大の食肉企業であるJBS社が、ウルグアイに有している唯一の牛肉生産施設である。10年ほど前は、施設別輸出額が1〜2位だったが、現在は順位を落として2015年は5位となっている。

牛の仕入れに当たっては、仕入れ先と3カ月先までの出荷計画を確認しながら口頭での約束をとりつけ、納入計画を立てている。

金額ベースの仕向け割合は国内:輸出=1:3で、輸出先は、中国40%、EU15%、米国、ロシア、イスラエルがそれぞれ10%前後となっている。中国向けは、4年前まで副産物中心であったものの、現在ではあらゆる部位が輸出されている。中でも、ラウンドカット、トップサイド、ランプといった後肢分体の部位の引き合いが強い。挽き材は、中国向けは85 CL (CLは、Chemical Leanの略で、赤身肉の含有率を表す)が人気である一方、米国向けは80CL、85CL、90CLにニーズがあるとのことであった。また、韓国向けは、関税が高いため、ラウンド、ラウンドロールなど後肢分体のアイテムを若干輸出しているにとどまっている。

日本向けについては、生鮮輸出が可能であった当時は、アサード(ショートリブなどを含むカット)やタンを取り扱っていたとのことで、輸出が再開すれば、その経験を生かしたいとのことであった。

(3)中堅のFrigorifico Matadero Carrasco社(ブラジルMinerva Foods社傘下:施設番号3)

Carrasco社は2014年、ブラジルに本拠を構えるMinerva社に買収された。現在、主に2つの生産者組合から牛を買い付けており、ニーズを伝えた上で年間出荷計画を立て、口頭での約束をとりつけている。なお、Minervaは、ウルグアイ国内にもう一つの施設(PUL:元は組合系のパッカー)を傘下に有している。

輸出先は、輸出額ベースで、中国50%、EU20%、米国とカナダの合計が15%と続いている。取り扱っている牛肉はグラスフェッドのみである。

副産物のほとんどは中国に仕向けられている。中国の需要はウルグアイの供給力を上回る水準で、内臓以外ではシンシャンクの引き合いが最も好調であるとのことであった。

2016年以降は、韓国にも積極的に輸出している。アイテムは、チャックロールが好調で、シンシャンク、チャックテンダー、ブリスケット、ナックル、アイロールなど幅広く輸出しているほか、100%アンガスの「アナパウラアンガス」の引き合いもあるとのことであった。

同社によると、ウルグアイのパッカーは、豪州のパッカーと比較して、柔軟な個別対応が可能とのことである。日本市場では豪州産グラスフェッドと競合すると考えているが、品質と価格を総合的に勘案して競争力を発揮できると考えている。

現在、Carrascoのと畜実績は処理能力の上限に近づいているが、施設の増・新設は予定していないとのことであった。課題としては、同国は南米の他国と同様に労働組合が強く、労働時間などの制約から、現在の2シフトの労務体制についてシフトを増やすことは難しいという。

116a

7 牛肉生産の主な優位性と課題

ウルグアイの牛肉生産は広大な草地資源下で、温帯種の牛が自然に近い生産体系で飼養されていることが最大のメリットとされるが、そのほか以下の通り優位性および課題が挙げられる。

(1)優位性

ア 良好な疾病管理

牛肉輸出の制限要因となる主要疾病のうち、ウルグアイはBSEについてこれまで一度も確認されておらず、「無視できるリスク」に分類されている。一方、口蹄疫については、2001年8月21日の最終発生以降発生しておらず、口蹄疫ワクチン接種清浄国に分類されている(図20、表19、20)。隣接するブラジルのリオ・グランデ・ド・スル州やアルゼンチンのエントレリオス州やコリエンテス州は、いずれも口蹄疫ワクチン接種清浄地域であることから、防疫対策を連携して講じている。

117a

117b

117c

口蹄疫ワクチンの接種スケジュールは、出産シーズンである9月から5カ月後の2月に一次接種した後、2歳になる前の5月に二次接種する。なお、2014年までは、秋から冬(3〜8月頃)に生まれた子牛のために、11月にも一次接種する機会を設けていたが、2015年から2月に一本化されている。

イ トレーサビリティ

118a

ウルグアイでは、トレーサビリティ法(法律第17997号2006年7月12日制定)の下、全ての牛を対象としたトレーサビリティが整備されている。牛を飼養する農家は現在、家畜や畜産物等の国内物流・飼育等に関する情報管理を所管する農牧水産省の家畜管理課(DICOSE)に農場登録したうえで、個体単位(牛以外は群単位)で国家家畜情報システム(SNIG)に登録する必要がある。登録に必要なデータは、個体番号、性別、品種、出生時期、飼養場所、所有者名である。

この制度では、政府が無料で配布する個体番号が記録された耳標とICタグにより、出生時期、と畜までの移動履歴、所有者の変更、衛生関連などの情報を把握することが可能となる。パッカーは、個体確認の出来ない牛を受け入れることが出来ない。

パッカー搬入後は、INACの食肉産業情報電子システム(SEIIC)の下で、通称「ブラックボックス」と呼ばれるデータ登録システムを通じて枝肉重量などの情報がINACにリアルタイムで送信される仕組みとなっており、製品のトレースバックも可能となっている。

118b

ウ Never Ever 3

ウルグアイ産牛肉の多くは、USDAが2009年に導入したNever Ever 3(No antibiotics, No hormones, No animal by-products)認証プログラムに合致している(図21)。ウルグアイでは、抗生物質や成長ホルモン、増体目的の飼料添加剤(ベータアゴニスト)の投与のほか、畜産副産物の給与も許されていない。この点が、昨今の自然志向の市場において分かりやすい付加価値として、米国に限らず好印象を得ている。

118c

(2)課題

ア 低水準にとどまる飼養密度

ウルグアイは、国土に占める草地面積割合は大きいものの、単位面積当たりの飼養密度が低い水準にとどまっている。低コスト志向が強く草地改良への意識が高いとはいえない生産者が多いほか、輸出に多くを仕向ける産業構造から、国際相場状況を鑑みて経営判断する傾向が強く、短絡的に増頭しないことが考えられる。

となると、増頭手段として集約的なフィードロットでの穀物肥育が有力な選択肢として考えられるが、現在のところ、そのフィードロットも大幅に伸びる可能性は低いとされる。同国は穀物生産が限定的であることから、飼料原料を輸入して高コスト型のフィードロット経営を行っているが、フィードロット由来の牛肉の多くが仕向けられるEUのQuota 481の関税割当枠の拡充もしくは新たな市場が開拓できなければ、フィードロットで生産するメリットはあまりないとみられる。

イ 高い加工コスト

ウルグアイの生産コストは、主に牧草肥育であることからブラジル並みに安価であり、牛取引価格自体は他の牛肉輸出国並みに価格競争力を有している(図22)。しかしながら、出荷以降の人手を多く要すると畜・加工段階では、近隣のブラジルなどと比べて競争力が劣っているとされる。これは、ウルグアイは、労働者の権利が強いことに加え、景気も好調に推移していることから南米の中では人件費などが高いことによる。某パッカーによると、カットラインワーカーを1人雇うのに1カ月当たり2500米ドル(手取り1200米ドル)程度のコストがかかり、ブラジルと比べると1.5倍程度の高水準とされる。最低賃金は、毎年インフレ率を考慮して引き上げられているが、実際の給与は最低賃金を大きく上回っている。なお、鉄道がほとんど敷設されていないため、内陸部からの輸送はトラック中心となっているが、国がコンパクトで輸送距離が短いので、コスト引き上げ要因とはならない。

119a

ウ 締結が遅れる自由貿易協定

ウルグアイは各種貿易交渉を、基本的にはメルコスールの一員として進める必要がある。しかしながら、メルコスールは、経済危機に揺れるベネズエラのほか、ブラジルやアルゼンチンといった大国を抱えており、利害の不一致から交渉が遅々として進まない傾向がある。メルコスールは現在、EUとの自由貿易協定の交渉を継続しているものの、進展がみられていない。また、10年前には、単独で米国とのFTA締結を目指したが、アルゼンチンやブラジルの反対により頓挫している。

こうした中、ウルグアイは2016年10月4日、チリとのFTAの強化に合意した。この合意は、チリとメルコスール間で既に発効している経済補完協定(ACE 35)の経済・通商関係を強化するのが狙いで、中南米のもう一つの主要経済ブロックである太平洋同盟(チリ、コロンビア、メキシコ、ペルー)との貿易円滑化につながるともみられている。ウルグアイにとっては、停滞していたFTA交渉が進展し、新たな商圏を獲得できるチャンスにつながる可能性がある。

また、10月には、バスケス大統領が中国を訪問し、習近平主席との間で、これまでの戦略的な連携を強化する目的で2国間FTA交渉に向けた協議を開始することに合意したと報道された。

8 牛肉生産・輸出余力と対日輸出可能性

(1) 牛肉生産・輸出余力

MGAPの農牧計画政策局(OPYPA)は、短〜長期的な農業政策の立案を所管している。OPYPAは、今後の牛肉生産について、放牧肥育という特徴を大切にしながら、持続可能な形で生産性を高めることが重要としており、具体的には、(1)伝統的な飼養管理からの脱却、(2)研究結果の現場への応用、(3)正しい知識の習得・共有、を重視して政策提言している。牛肉産業に対する政府の補助は基本的にないため、今後は草地の生産性と牛の受胎率(現在65%、目標75%)の向上を主な取り組み課題としている。

また、OPYPAはフィードロットについて、大半が拡大の可能性が低いEU向けQuota 481向けであるため、増産可能性は限定的と考えている。OPYPAは、今後のウルグアイ牛肉の戦略について、放牧肥育主体を維持しつつ、国際市場でのシェアを高めるというよりも品質を上げて単価を高めていきたいとのことであった。

INACでも、国内消費が現在の水準で推移すると仮定した場合、輸出量は今後10〜15年見ても10万トン程度しか上乗せできないとして、供給力が課題としている。

(2)対日輸出可能性

対日輸出が再開されたとしても、輸送日数(50日程度(大西洋航路の例:ブラジル経由→喜望峰周り→香港でトランジット))や賞味期限を勘案すると、冷凍品にほぼ限定されるため、国産牛肉との競合の可能性は極めて低いとみられる。また、商社への聞き取りによると、冷凍品のロイン系アイテムは評価が低いことから、現在豪州産への依存度が高い挽き材の一部がウルグアイ産に置き換わる可能性がある(図23)。輸入可能性の高いアイテムとしては、トリミングが挙げられている。

121a

ただし、競合する豪州産牛肉は日豪EPAによる関税の優位性があるため、実際にどの程度置き換わるかは、豪州産の価格や輸出余力等次第と言える(表21)。

121b

参考までに2015年のウルグアイの牛肉の部位別平均輸出価格は、表22のとおりである。

122a

9 まとめ

現在、日本の主な牛肉調達先は、豪州、米国、カナダ、NZ、メキシコである。しかしながら、牛肉の生産は天候の影響などを受けて変動するため、安定的な供給を確保するには調達先の多角化が重要となっており、ウルグアイの動向は注目に値する。

ウルグアイ側としては、同国産牛肉が口蹄疫ワクチン接種清浄地域からの輸入を解禁していない日本市場に輸出出来るようになれば、ウルグアイ牛肉の品質および生産体系が再評価され、他国向けの輸出にも追い風となると考えていた。

現在のところ、日本にとってウルグアイはあまりなじみのない国ではあるが、その品質は欧米同様、日本でも受け入れられる可能性がある。一方、同国は、(1)短期的には供給量の拡大が限定的であること、(2)最大輸出先の中国との関係を深化させており日本向けとの競合が見込まれること、(3)日本からは最遠隔地に位置すること、などの課題があり、商社からは、ウルグアイのパッカーがどれだけ日本特有の規格に対応してアイテムを揃えられるかがカギを握るとの声も聞かれた。

ウルグアイは旺盛な需要を有する中国のほか、EUや米国、イスラエルといった収益性の高い市場を既に開拓しており、牛肉輸出自体は順調に推移している。しかしながら、今後は業界として持続可能な成長を目指す中で、輸出量よりも輸出単価を引き上げることを目標としており、日本市場への再進出に期待が寄せられていることから、審議の動向に注目が集まっている。


				

元のページに戻る