需給動向 国内

◆牛 肉◆

米国産輸入量、豪州産を上回る


平成29年2月の牛肉需給を見ると、生産量は前年がうるう年であった影響もあり、2万4366トン(前年同月比4.0%減)と前年同月をやや下回った。品種別では、和牛が1万233トン(同7.1%減)、乳用種が7594トン(同5.9%減)と減少した一方、交雑種は酪農家での黒毛和種交配率の上昇により、6221トン(同3.2%増)と8カ月連続で前年同月を上回った。

一方、輸入量は、4万600トン(同23.5%増)と3カ月連続での伸びを見せた。輸入量の内訳は、冷蔵品が1万6912トン(同16.8%増)、冷凍品が2万3644トン(同28.8%増)といずれも前年同月を大幅に上回った。

推定出回り量は、輸入量の増加に伴い、前年同月をやや上回る6万6957トン(同4.3%増)と増加基調で推移している。この結果、推定期末在庫は前月から2137トンを取り崩し、10万3098トン(同14.4%減)と14カ月連続で前年同月を下回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。

米国産への転換進む

平成29年2月の米国産輸入量は豪州産を上回った。米国産が豪州産を上回るのは、関税率引き下げを見越して、豪州産で通関繰り越しが発生した28年3月を除くと、米国でBSE(牛海綿状脳症)が発生した15年以降、14年ぶりとなった。

米国産は、生産量の回復に伴う出荷増により、冷蔵品が9063トン(前年同月比70.9%増)と15カ月連続で前年同月比2桁増となり、冷凍品についても1万208トン(同74.0%増)と大幅に増加した結果、合計1万9271トン(同72.6%増)となった。

一方、豪州産は、日豪経済連携協定(EPA)による関税率引き下げのメリットがあるものの、出荷減から高値で推移しているため、豪州産への依存度が高い挽き材以外は、価格優位性がある米国産への転換が進んでいる。2月の豪州産輸入量は、冷蔵品が7109トン(同15.9%減)、冷凍品が1万423トン(同4.2%減)といずれも減少した結果、合計1万7573トン(同9.3%減)となった(図1)。

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輸入牛肉取扱見通し、「増加」が8割

このような状況の中、牛肉消費の約6割を占める外食などの消費は、好調に推移している。(一社)日本フードサービス協会の「外食産業市場動向調査」によると、外食全体の売上高は、平成27年12月以降、台風の影響などで客数が減少した28年8月を除き、前年同月を上回って推移し、29年2月は前年同月比1.8%増となった。特に、焼肉店やファストフードの売上増がけん引しているものとみられる。

総務省の「家計調査報告」によると、2月の全国一人当たりの牛肉購入数量は、前年がうるう年であった影響もあり、158グラム(前年同月比5.7%減)と減少したものの、28年2月に増加に転じて以降、28年5月および29年2月を除き前年同月を上回って推移している(図2)。和牛や国産牛肉の高値が続く中、購入単価は8カ月連続で前年を下回っており、購入数量の増加分の多くは輸入品が主体と見られる。

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当機構が行っている食肉の販売動向調査結果(注)においても、量販店における29年度上半期の牛肉取扱見通しについて、輸入牛肉が「増加」すると回答した者が79%、米国産牛肉が「増加」すると回答した者が69%を占めており、仕入価格上昇分の価格転嫁が難しい和牛や国産牛肉から輸入牛肉へ、中でも米国産牛肉の取扱量を増やす小売業者が多いことがうかがえる。

注:「食肉の販売動向調査」とは、当機構が年に2回実施している卸売業者および小売業者を対象とした食肉の取り扱いや販売見通しに関するアンケート調査。なお、本アンケート調査の全文は当機構ホームページに掲載している。(https://www.alic.go.jp/r-nyugyo/raku02_000060.html)

(畜産需給部 二又 志保)


				

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