需給動向 海外 |
年明けの原料向け乳製品輸入は構造的要因により急増
農業部の公表する主要生産省・自治区の生乳の平均農場出荷価格は、食品や嗜好品などの需要が拡大する春節(中国の正月で2017年は1月末)前後にわずかに増加し、3月に入ってからは1キログラム当たり3.53元(60円:1元=17円)を維持し、引き続き堅調に推移している(図27)。
政府の統計によると、2015年までの乳牛飼養頭数と生乳生産量はともに増加傾向で推移したとされているものの、飼養頭数と生乳生産量はともに減少しているという見方が多い。なお、米国農務省(USDA)は、2017年の飼養頭数について、前年比50万頭減の750万頭になると分析している。
月ごとの乳製品輸入状況を見ると、主にニュージーランド(NZ)とのFTAの影響により例年同様年明け直後の輸入量が急増している。特に、2017年は、品目グループごとに4つある乳製品の低税率輸入枠のうち3つで枠内税率の段階的削減により無税となった。各輸入枠の数量は年間輸入実績に比べてはるかに少ないため、すべての枠で2月までに枠数量を超過した。なお、中NZ・FTAによる2国間農産品貿易の拡大を受けて、4月下旬にFTAの再協議が行われるとされている。
国際乳製品貿易に大きな影響を及ぼす粉乳類の輸入についてみると、輸入CIF価格が国際相場の回復で上昇傾向にある中、1〜2月の脱脂粉乳輸入量は前年同期比4.2%増、全粉乳は同3.9%増となっている(図28)。
ベーカリー需要の高まりなどにより毎年徐々に輸入量を伸ばしているバターの1〜2月の輸入量は、前年同期比23%減となっている(表9)。中NZ・FTAによる今年の無税枠1万5000トンを下回っており、国際市場価格の高まりを背景に、当面調達を抑えていると思われる。
1〜2月の育児用調整粉乳(育粉)の輸入は、前年同期比11%増の3万4000トンとなっている(図29)。人口減少問題を解決するため、2人目の子供を出産することを認める二人っ子政策が本格始動し、育粉の需要が増大しつつある一方で、2016年10月に施行され、2018年1月までを移行期間とする「乳幼児用粉乳の配合登録管理弁法」により育粉業界の整理統合とブランド規制強化が行われているため、内外メーカーの生産や輸入は一時的に抑えられる傾向にある。これらの要因が相殺し、輸入の急増が抑えられていると考えられる。
現地報道によると、この政策に基づく育粉ブランドの登録承認作業は、企業の提出した申請書類の不備などにより当初予定より遅延しており、状況次第で移行期限が延長される可能性もあるとされている。
(調査情報部 木田 秀一郎)