需給動向 海外 |
生乳生産の増加で、バター在庫が大幅増
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が3月30日に公表した「Agricultural Prices」によると2017年2月の乳価は、前年同月比17.8%高の100ポンド当たり18.50米ドル(1キログラム当たり46円、1米ドル=113円)と、2016年12月以来3カ月連続で前年同月を上回った。飼料穀物価格も安価に推移していることから酪農家の収益は安定しており、飼養頭数の拡大が続いている。USDA/NASSが3月20日に公表した「Milk Production」によると、2017年2月の米国の経産牛飼養頭数は同0.6%増の936万7000頭であり、これは過去20年間で最高の水準とみられている(図15)。
USDA/NASSが3月22日に公表した「Cold Storage」によると、2017年2月のバターの在庫量は、前年同月比20.0%増の12万8200トンとなった(図16)。年末の需要期に一時的な取り崩しはあったものの、堅調な生乳生産を背景に生産量が需要を上回って推移していることから、2015年4月以降23カ月連続で前年同月を上回って推移している。
各乳製品とも同様の状況にあり、同月のチーズの在庫量も同6.4%増の57万トンと、2014年11月以降28カ月連続で前年同月を上回った。
メキシコは米国産脱脂粉乳の主要輸出先国であり、USDAによると2016年の脱脂粉乳輸出量の43.1%はメキシコ向けが占めた。しかし、直近の動向をみると、2017年1月のメキシコ向け輸出量は1万9000トン(前年同月比4.6%減)と、依然として総輸出量の39.8%を占めているものの、2016年9月以降、減少基調で推移している。(図17)。
米国乳製品輸出協会(USDEC)はこの要因について、メキシコにおいて2016年1〜8月に多く輸入された脱脂粉乳が在庫として積み上がっていることや、同国内の生乳生産が急増したことを挙げている。この他、米ドルに対しペソ安で推移する為替相場が続いており、米国産の価格競争力が減退していることも背景にあるとみられている。
また、米国農務省農業市場局(USDA/AMS)が2月17日に公表した「Dairy Market News」は、メキシコ政府が、最近EUから1万5000トンの脱脂粉乳を購入したことを伝えている。なお、昨年1年間にメキシコがEUから輸入した脱脂粉乳は8200トンであった。USDECはこのことについて、国境を巡る米メキシコ間の政治的不確実性が貿易環境に変化をもたらしているとみている。
(調査情報部 野田 圭介)