調査・報告 畜産の情報 2017年10月号
調査情報部
【要約】
当機構では、毎年度消費者を対象に牛乳・乳製品の消費動向などに関する調査を実施している。
白もの牛乳類の飲用頻度は、減少傾向が続いていたが、平成28年度の調査結果では、「ほぼ毎日飲む」が44.3%(前年度比1.2ポイント増)と2年連続で増加した。一方で、「全く飲まない」の割合は11.1%(同7.0ポイント減)となった。
食べる頻度では、チーズは「週に1日以上食べる」が46.7%(同4.8ポイント増)、ヨーグルト「週に1日以上食べる」が63.5%(同4.5ポイント増)となり、ともに増加傾向にある。
1 調査の目的 |
本調査は、全国の消費者に対して、牛乳・乳製品の消費・購入・嗜好などの基本的な項目の聞き取りを通じ、その消費構造の変化や消費動向を的確に把握し、牛乳・乳製品の消費拡大に向けた取り組みなどに役立つ情報を収集・提供することを目的として、毎年度実施している。
本稿では、牛乳・乳製品のうち、白もの牛乳類(注)、チーズ、ヨーグルトおよびバターの調査結果を抜粋し紹介する。
なお、報告書の全文および要約版は、当機構ホームページ(http://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_000026.html)に掲載している。
(注) 本調査は消費者の視点に立ったものであるため、牛乳の他にも低脂肪乳、無脂肪乳、栄養成分強化牛乳(カルシウム、鉄分、ビタミンDなどを加えたもの)を白もの牛乳類としており、法律や省令上の種類別分類とは異なる。
2 白もの牛乳類の飲用実態 |
飲み方を問わず、白もの牛乳類を飲む頻度を聞いたところ、「毎日飲む」が32.7%(前年度比1.8ポイント減)、「週に5~6日飲む」が11.6%(同3.0ポイント増)となった。
この2つを合計した「ほぼ毎日飲む」は、44.3%(1.2ポイント増)と2年連続で増加した(図1)。
一方、「全く飲まない」も、2年連続で11.1%(同7.0ポイント減)と前年度よりかなりの程度減少した。
「ほぼ毎日飲む」を性・年代別に見ると、男女とも中学生が高かったものの、男子中学生は68.9%(前年度比11.1ポイント減)、女子中学生は63.6%(同6.4ポイント減)とともに前年度より減少した(表)。
男性は20、40、50代が前年度よりわずかに減少し、また60代がやや減少したものの、70代以上が前年度よりかなりの程度増加し、結果として前年度より3.1ポイント増加した。
女性は、40代と70代以上で前年度を上回ったものの、それ以外のすべての年代で前年度を下回ったため0.8ポイント減少した。
白もの牛乳類の1日当たりの平均飲用量(注)は、全体および男女別とも減少傾向が続いていたが、全体は188ミリリットル(前年度比13.0ポイント増)、男性は202ミリリットル(同18.1ポイント増)、女性は174ミリリットル(同8.2ポイント増)とともに2年連続で前年度より増加した(図2)。
性・年代別では、男女とも中学生が最も多く、男子中学生は292ミリリットル(同12.3ポイント減)とかなり大きく減少したものの、女子中学生は230ミリリットル(同15.1ポイント増)とかなり大きく増加した。
また、男性では、20代、60代、70代以上で、女性では、10代(中学生を除く)および20代を除いた全て他のカテゴリーで前年度より増加した。
(注) 白もの牛乳類を飲むと回答した者(飲用者)の1日当たりの飲用量の合計を、白もの牛乳類を飲むと回答した者数で除して算出している。
白もの牛乳類の飲み方別の飲用頻度は、「そのまま飲む」では、「毎日飲む」と「週に5~6日飲む」を合計した「ほぼ毎日飲む」は、33.2%(前年度比1.4ポイント増)となった(図3)。
白もの牛乳類をコーヒー、紅茶、ココアなど他の飲み物に入れて、または牛乳に「他のものを混ぜて飲む」では、「ほぼ毎日飲む」は、25.6%(同0.8ポイント増)となった。
過去3年間における飲み方別の1週間の平均日数を見ると、「そのまま飲む」「他のものに混ぜて飲む」ともに微増傾向にある。
また、「ほぼ毎日飲む」の夏場と冬場の飲用頻度を比べると、「そのまま飲む」「他のものと混ぜて飲む」「シリアルなどにかける」ともに夏場より冬場が少ないが、「そのまま飲む」は、「他のものと混ぜて飲む」「シリアルなどにかける」より、季節による変動が大きい(図4)。シリアルなどにかける白もの牛乳の飲み方は、男女とも70代以上が最も多く、男性が全体を4.0ポイント、女性が同3.8ポイント上回っている。
白もの牛乳類の飲用シーンで最も多いのは、「朝食をとりながら」が46.6%(前年度比1.9ポイント増)、2番目は「おやつや間食時」が36.1%(同0.4ポイント増)、3番目は「のどが渇いた時」が28.2%(同5.4ポイント増)となった(図5)。
3年間の比較では、項目ごとに大きな変化は見られず、順位が固定化されている。
白もの牛乳類を飲む理由で最も多かったのは「カルシウムがあるから」が41.1%(前年度比1.3ポイント増)、2番目は「栄養があるから」が33.1%(同0.1ポイント増)、3番目は「おいしいから」が31.7%(同5.1ポイント増)、4番目は「好きだから」が29.2%(同2.7ポイント増)となった(図6)。3年間の比較では、「おいしいから」「好きだから」「いつも家にあるから」が毎年ポイントの増加がみられ、理屈抜きで牛乳を飲んでいることがわかる。
白もの牛乳類の「飲用が減った」、「もともと飲まない」理由として、「あてはまる」または「ややあてはまる」と回答したうち、最も多かったのは「牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる」で30.6%、2番目は「牛乳は味にクセがある」で28.7%、3番目は「牛乳は飲んだ後、口に残る」で27.9%、4番目は「牛乳のにおいが嫌い」で26.5%の順となった(図7)。これら4つが、牛乳の飲用を阻害する大きな理由となっている。
図8に示された項目のうち、普段よく飲む飲み物について複数回答可で質問したところ、最も多かったのは「無糖のお茶飲料」で71.1%、2番目は「コーヒー」で54.9%、3番目は「白もの牛乳類」で47.4%となり、前年度とほぼ同様の結果となった。
また、普段よく飲む飲み物の中から最もよく飲むものをひとつだけ挙げてもらった結果、最も多かったのは「無糖のお茶飲料」で34.2%、2番目は「コーヒー」で21.5%、3番目は「白もの牛乳類」が13.4%となり、こちらも3年間ほぼ同様の結果となった。
図9に示された項目のうち、「白もの牛乳に関してこの半年くらいの間に見たり聞いたりしたもの」について質問したところ、最も多かったのは「①牛乳には、カルシウムやタンパク質など体に必要な栄養素がバランス良く含まれている」で59.2%、2番目は「②牛乳に含まれるカルシウムは、骨を丈夫にし子供の身長の伸びを助ける」で49.2%、3番目は「③牛乳にはカルシウムの吸収を助けて骨粗しょう症を防ぐ成分が含まれている」で43.3%となった。
また、「そういうよい効果があるなら牛乳を飲んでもよい」と思うものはどれかを質問したところ、最も多かったのは「①牛乳には、カルシウムやタンパク質など体に必要な栄養素がバランス良く含まれている」が37.5%、2番目は「③牛乳にはカルシウムの吸収を助けて骨粗しょう症を防ぐ成分が含まれている」で35.2%、3番目は「⑪牛乳は血糖値の上昇がゆるやかなので、ダイエット効果がある」で32.6%となった。
全般的に、カルシウムなど栄養に関連する項目の評価が高くなっているが、今回はダイエット効果があるとされた項目の評価も上位に入った。
また、「⑧牛乳に含まれる乳糖は腸内細菌のバランスを改善し、有害物質の発生を防ぐ」、「⑨牛乳の良質なタンパク質やビタミン類は、ハリやツヤのある肌をつくる」、「⑪牛乳は血糖値の上昇がゆるやかなので、ダイエット効果がある」、「⑤牛乳のカルシウムは魚や野菜のカルシウムより体に吸収されやすい」などの効果は、普段は見聞きする機会が少ないが、効果に対するニーズがあるので、これらを訴求することにより、牛乳の消費量が増える可能性がある。
3 チーズの摂取実態と購入意識 |
日頃、チーズを食べる頻度として、「週に1日以上食べる」が46.7%(前年度比4.8ポイント増)となり、おおむね増加傾向にある(図10)。
この1カ月間にチーズを使った料理を食べた割合は、78.8%(前年度比7.5ポイント増)となり、前年度に引き続き、70%を上回った(図11)。
また、この1カ月に食べたチーズを使った料理で最も多かったのは、ピザが59.9%(同2.6ポイント増)、2番目はグラタンで40.1%(同1.1ポイント増)、3番目はパンで34.3%(同3.9ポイント増)であった(図12)。
3年間の比較では、料理による大きな変化は見られず、順位が固定化されている。
普段チーズ購入時に意識することは、「国産のチーズを購入するようにしている」が42.7%、「生産国は意識していない」が51.5%、「外国産のチーズを購入するようにしている」が0.9%となった(図13)。
性・年代別では年齢が高くなるほど「国産のチーズを購入するようにしている」との回答が多くなり、70代以上では男女とも約70%に達した。
4 ヨーグルトの摂取実態 |
日頃、ヨーグルトを飲食する頻度として、「週に1日以上食べたり飲んだりする」が63.5%(前年度比4.5ポイント増)となり、増加傾向にある(図14)。
タイプ別では、「プレーンヨーグルト(無糖)」が47.2%(前年度比3.1ポイント減)、「加糖のヨーグルト」が32.8%(同3.0ポイント減)、「果肉フルーツ入りのヨーグルト」が33.5%(同2.2ポイント増)となった(図15)。
昨年との比較では「ドリンクヨーグルト(飲むタイプ)」がかなりの程度増加し、また3年間の比較では、「手作りヨーグルト(カスピ海ヨーグルト等)」が増加傾向にある。
5 バターの購入頻度、購入意識等 |
バターの購入頻度は、「数カ月に1回位」が31.5%、「月に1回位」が26.6%、「2週間に1回位」が8.1%となった(図16)。
普段バター購入時に意識することで最も多かったのが「価格」で42.7%、2番目は「国産のバターを購入する」の39.2%、3番目は「製造メーカー」の38.3%となった(図17)。
バターの使い方で最も多かったのが「料理に使う」で70.8%、2番目は「パンに塗る」の61.2%、3番目は「お菓子作りに使う」の25.4%となった(図18)。
バターがない時にバターの代わりに使うものとしては、最も多かったのは「マーガリン」で67.2%、2番目は「オリーブオイル」の34.0%となった。また、「バター以外は使わない」が13.0%となった(図19)。
6 白もの牛乳類の飲用拡大に向けた考察 |
これまで中学生以上の日本人の白もの牛乳類の飲用量・飲用機会は低下傾向が続いていたが、平成27年度は8年ぶりに歯止めがかかり、平成28年度には22年度の水準を上回る飲用量となった。また、飲み方のうち、今回初めて調査した「シリアルなどにかける」は、男女とも70代以上が最も多かった。
白もの牛乳類の飲用シーンや飲用理由を見ると、朝食とおやつや間食時が引き続き主なシーンであるが、「のどが渇いた時」「くつろいでいる時」「風呂上り」といったシーンでも増加している。
また、飲む理由では「習慣で」といった意識は弱くなっている一方、「カルシウムがあるから」「おいしいから」「好きだから」「他のものと混ぜたりする」「健康によいから」などが前年度と比べて増加している。
牛乳・乳製品関連の消費拡大には、おいしいというだけでなく、さまざまな飲料と一緒に、あるいは料理に使えるといった長所(他のものと混ぜたりする)という飲み方、使い方の多様なスタイルを提案することが重要と思われる。
また、これまでのカルシウムや栄養豊富といった評価以上に「ハリやツヤのある肌をつくる」や「ダイエット効果」など、まだあまり知られていないが効果が消費者、特に主たる購入層である女性の関心を呼び、さらに健康・美容面での良さを訴求することが重要と思われる。
この調査結果が、酪農乳業関係者にとどまることなく広く活用され、牛乳・乳製品の消費拡大を推進する上で参考になることを期待する。
また、調査にご協力いただきました皆さまに深く感謝するとともに、併せて御礼申し上げる。
(参考)調査の概要 |
1.調査方法
留置併用訪問面接法(注)により、本人が調査票に回答
(注)留置法とは、対象者を訪問してその場では調査票の記入を依頼するだけとし、その後、再訪問して記入済み調査票を回収する手法である。
訪問面接法とは、調査員が対象者を訪問して、直接回答を聞き取る手法である。調査員が回答を確認しながら質問を進めていくので、回答抜けがなく、質の高い結果を得ることができる。
調査では、留置法と訪問面接法を併用している。
2.調査対象
全国の中学生以上の男女個人 2664人(回収ベース)
3.調査地域とサンプル数
回収サンプルの地域別内訳は以下の通り(沖縄除く)。各地域別構成比は回収数全体集計後の値。
【地域】
【都市規模】
4.抽出方法(エリアサンプリング)
平成27年度国勢調査時の母集団人口に基づき、地域(9分類)と都市規模(4分類)により層化し、調査地点数を比例配分する。各層ごとに大字・町丁目の該当人口に応じて、調査地点を抽出した。
世帯から個人の抽出は、性・年齢別の世帯に沿って対象条件に適合する調査を行った。
5.サンプル設計などについて
本年度調査では、アンケート調査を行うに当たって、平成22年度国勢調査を基づいてサンプル数の割合を算出し調査を実施した。 本報告書で記載しているサンプル数は実際に回収されたサンプル数であり、ウェイト集計などは行っていない。
このため、過去の調査結果との比較には留意が必要である。
6.調査期間
平成28年11月15日~平成29年1月6日
7.データを読む上での注意点
・単一回答(択一式選択肢)の場合、回答率の合計が100.0%になるべきところで、そうならない箇所がある。
これは各回答率を小数点以下第2位で四捨五入しているためである。
・表示されているサンプル数は実際の回収サンプル数である。