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2016/17年度牛肉輸出量、100万トンを下回る
豪州統計局(ABS)によると、2017年5月の成牛と畜頭数は、68万2400頭(前年同月比5.2%減)と引き続き減少した。このうち、雌牛は30万7700頭(同17.2%減)と大幅に減少したものの、雄牛(去勢牛を含む)は37万4700頭(同7.7%増)と22カ月ぶりに前年同月比増となった(図3)。
この結果、同月の牛肉生産量は、1頭当たり枝肉重量が増加したものの、20万1955トン(同1.0%減)とわずかな減少にとどまった。
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2016年11月以降おおむね下落傾向で推移している。2017年6月に40カ月ぶりに前年同月を下回り、7月31日時点で1キログラム当たり583豪セント(525円:1豪ドル=90円)と、2016年6月以来、1年1カ月ぶりに600豪セントを下回った(図4)。しかし、同価格は、3年前の同時点と比較して約1.7倍と、いまだに高い水準にある。
豪州農業・水資源省(DAWR)によると、2017年6月の牛肉輸出量は、9万4422トン(前年同月比1.1%減)と、牛肉生産量の回復を受け、わずかな減少にとどまった。しかし、2016/17年度(7月〜翌6月)の通算では、牛肉生産量の減少に伴い、95万8932トン(前年度比17.8%減)と大幅に減少し、5年ぶりに100万トンを下回った(表2)。
同年度を主な輸出先国別に見ると、前年度に最大の輸出先国であった米国向けは、同国の牛肉生産量の回復に伴い20万8354トン(同37.7%減)と大幅に減少した。一方、日本向けは、主要な輸出先国では唯一前年度を上回る27万7930トン(同3.5%増)となり、再び最大の輸出先となった。その他の輸出先は、豪州の牛肉生産量の減少に加え、輸出先国における競合により軒並み減少した。
MLAは2017年7月18日、「Industry projections 2017 July update」を公表し、2021年までの牛肉需給見通しを次のように見直した(表3)。
2017年のと畜頭数は、6月以降前年を上回って推移すると見込まれることから、前回(2017年4月)から15万頭上方修正され、725万頭(前年比0.5%減)と見込んでいる。また、2018、2019年についても、それぞれ20万頭上方修正された。
2017年の牛肉生産量は、と畜頭数の上方修正に加え、雌牛と畜割合が低下していること、フィードロットにおける飼養頭数が増加していることに伴い、1頭当たり枝肉重量が増加傾向にあることから、6万6000トン上方修正され、213万2000トン(同1.4%増)と見込まれている。また、2018年以降も増加傾向で推移すると見込んでいる。
2017年の牛肉輸出量は、前回の予測では100万トンを下回ると見込まれていたものの、牛肉生産量の回復見込みに伴い2万8000トン上方修正され、102万トン(同0.2%増)と見込んでいる。
今回の見通しの中では、米国の牛肉生産量回復に伴う東アジアでの競合の激化、ブラジル産牛肉の不正問題に起因する牛肉輸入国の輸入停止措置、インド政府による牛(水牛を含む)の牛肉向けと畜禁止の動き、米国の中国向け牛肉輸出の再開など、国際的に牛肉需給に影響を与える要素が数多く存在しており、これらが豪州牛肉業界にどのような影響を与えるかが懸念されるとしている。
(調査情報部 大塚 健太郎)