需給動向 海外 |
◆中国◆
国内の鶏肉小売価格が低下する中、冷凍鶏肉輸入量は
大幅減少
中国国家統計局によると、2017年の鶏肉小売価格は低下傾向で推移した。12月の小売価格は、1キログラム当たり20.5元(354円、1元=17.28円)と前年同月比で6.2%安となっている(図20)。
中国では、市場で生体の鶏を買い、自宅で処理して食べる習慣がある。2016年12月以降、国内でヒトへの鳥インフルエンザ(H7N9型)の感染が多数報告されたことを受け、政府はヒトと家きんの接触を減らすため、生体家きん市場を相次いで閉鎖した。現地専門家によると、生体で販売できなくなった鶏は、処理され、丸どりとして小売店に供給されたため、供給過剰により小売価格が低下したと見られている。
他方、近年、政府は、畜舎や鶏舎から出る廃水に対し、水質基準の順守を厳しく求めているため、畜舎や鶏舎の設備コストが上昇していると言われている。さらに、2018年1月から家畜や家きんの飼養頭数に応じて課税される「環境保護税」(注1)が導入されたことも、鶏肉生産コストを押し上げる可能性がある。
また、政府によって広大な地域が「家畜家きん飼養禁止区域」(注2)に指定され、区域内に立地する畜舎や鶏舎は立ち退きを強いられている。立ち退きの期限は2017年内とされていたが、現地専門家は、2018年も立ち退きが続くと見ており、鶏肉需給に影響を与えると考えられる。
(注1) 「中華人民共和国環境保護税法(2016年12月公表)」による。5000羽以上飼養する養鶏場が対象。30羽当たりの課税額を各省が定める。詳細は本誌P98を参照。
(注2) 詳細は本誌P96を参照。
2017年の冷凍鶏肉輸入量は、前年比で20.9%減少し、44万9350トンとなった。これは、政府が同年8月にブラジル産鶏肉のダンピング調査を行うと発表したことに加え、下半期に国内の小売価格が下落したことが影響しているとみられる(表8)。
輸入単価を見ると、2014年までは米国産が安価であったが、2015年1月に同国で鳥インフルエンザが発生し、輸入停止となって以降は、国による価格差は小さい(表9)。
鶏肉調製品は、約8割が日本向けである。日本向けは、2014年7月に発覚した期限切れ鶏肉の使用問題以降は減少していたが、2017年は前年比で17.7%増と大幅に増加した。(表10)
また、輸出単価を見ると、日本向けはわずかに上昇し、他の主要国向けは低下している(表11)。
(調査情報部 三原 亙)