需給動向 海外 |
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2017年の輸出量、生産量ともに増加、2018年も増加する見通し
2017年は、輸出量全体の約5割を占める日本向けが年間を通して好調であったため、82万1872トン(前年比7.7%増)となった。品目別にみると、冷凍加塩鶏肉については、主要輸出先国のオランダ向けが減少したことなどから、6万9863トン(同14.0%減)と減少した。冷凍鶏肉および鶏肉調製品については、日本からの需要が増加したことに加え、韓国向け冷凍鶏肉の輸出再開、マレーシアの中国産からタイ産への輸入シフトなどにより、それぞれ53万2747トン(同11.7%増)、21万9262トン(同7.0%増)となった。2018年1月の鶏肉輸出量(調製品含む)についても、前月に続き日本向けが好調であったため、7万2334トン(前年同月比17.8%増)となっている(図17)。
2017年の日本の鶏肉調製品の輸入量は、コンビニエンスストアのホットスナック、弁当や総菜、特に好調なサラダチキン市場を背景に過去最高となる49万トンを記録し、このうちタイ産は29万トン(前年比14.8%増)と前年を大きく上回っている。さらに、冷凍鶏肉輸入量は、競合国のブラジル産が前年並みで推移する一方で、タイ産は13万トン(同15.8%増)と好調で、全輸入量に占める割合は2ポイント増加し22%となっている。
こうした世界的なタイ産鶏肉への需要増を受け、タイの食肉大手各社は、新工場の建設、既存施設の拡大、海外での食品関連事業の買収交渉など積極的な事業拡大を続けている。
タイ農業・協同組合省経済局(以下「農業省」という)は2018年の鶏肉輸出量、輸出額をそれぞれ前年比3%増、4%増と見込んでおり、輸出額のうち日本向けは6割弱になるとしている。一方で、タイ鶏肉加工業協会は、配合飼料価格の上昇やバーツ高により国際競争力が低下するため、鶏肉輸出量は前年比2%増程度と見込んでいる。
同国のブロイラー向け配合飼料の原料の約6割はトウモロコシで、ほぼ国内で自給している。しかし、2017年8月にタイ政府が、国産価格の上昇により、国内トウモロコシ農家の生産意欲を向上させ、自給率を高める狙いから、カンボジアやラオスなど隣国から陸路で不正規輸入される安価なトウモロコシの取り締まりを強化し、流通業者に対し保管場所などを確実に届け出るよう促したこともあり、国産トウモロコシの卸売価格は上昇傾向にあり、2018年2月の同価格は1キログラム当たり9.56バーツとなっている(図18)。
2017年の鶏肉生産量は、世界的なタイ産鶏肉需要の高まりに対応し、8月以降前年同月を上回って推移し、通年では210万6800トン(前年比10.0%増)となった。2018年1月も前年同月比0.7%増の16万5000トンと好調に推移している(図19)。
鶏肉価格(卸売価格および小売価格)については、タイ商務省国内取引局の2018年1〜3月の農産物国内市場価格予測では、国内市場での安定した需給が予測され、国内価格は安定するとしているが、2017年末から低調に推移しており、2月も上昇傾向は見られず、今後も引き続き動向を注視していく必要がある。
(調査情報部 青沼 悠平)