需給動向 海外 |
◆豪州◆
2018/19年度の生乳生産量は1.3%増の見通し
デーリー・オーストラリア(DA)によると、2018年4月の生乳生産量は、65万600キロリットル(67万100トン相当、前年同月比4.5%増)と11カ月連続で前年同月を上回った。2017/18年度(7月〜翌6月)の4月までの累計でも、796万9300キロリットル(820万8400トン相当、前年同期比3.5%増)と前年同期をやや上回った(図17)。
4月の生乳生産量を地域別に見ると、酪農主産地のビクトリア州(38万3700キロリットル(39万5200トン相当、前年同月比3.2%増))で前年同月を上回ったほか、タスマニア州(7万9500キロリットル(8万1900トン相当、同19.6%増))では、天候が良好であったことから2割近い増産となった。
豪州農業資源経済科学局(ABARES)が6月に公表した需給見通しによれば、2017/18年度通年の生乳生産量を前年度比2.6%増の925万キロリットル(953万トン相当)と見込んだ上で、2018/19年度は、乳牛飼養頭数の増加と1頭当たりの乳量の増加により、同1.3%増の937万キロリットル(965万トン相当)とわずかに増加すると見通している。
DAが発表した2018年4月の主要乳製品4品目の輸出量については、生乳生産が増加基調で推移している状況の下、脱脂粉乳および全粉乳は、輸出相手先からの引き合いが強まったことから高い伸びとなった。一方、バター類は、前月を上回ったが、前年同月が高い水準であったことから、2割減となった。チーズは、前年同月並みの水準となった(表10、図18)。
2018年6月19日に開催された、乳製品価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(表11、図19)。
バターは、前回比0.5%高の1トン当たり5611米ドルと、引き続き高値で推移した。一方、チーズは低下傾向で推移し、前回比3.8%安の同3847米ドルとなった。脱脂粉乳は、前回比2.3%安の同2003米ドルと、辛うじて2000米ドル台を維持した。全粉乳は、ほぼ横ばいで推移し、前回比0.5%安の同3189米ドルとなった。
豪州の主要乳業メーカー各社は、2018/19年度(7月〜翌6月、以下「新年度」という)の生産者支払乳価を発表した。
集乳量第1位と見込まれるサプート・デイリー・オーストラリア社(ワーナンブール・チーズ・アンド・バター(WCB)社分を含む。以下「豪州サプート社」という)(注1)は、新年度の生産者支払乳価を、乳固形分1キログラム当たり5.75豪ドル(477円:1豪ドル=83円)と、2017/18年度から0.07豪ドル引き上げた(注2)。豪州サプート社は、10月、1月、4月および6月に生産者支払乳価を見直し、市場環境が上向けば、引き上げを検討するとしている。
一方、第2位と見込まれる豪州フォンテラ社は、豪州サプート社よりも高い同5.85豪ドル(486円)とした。また、生産者支払乳価の年度末見込みを同5.85豪ドル(486円)から同6.2豪ドル(515円)としており、中国からの粉乳需要や日本からのチーズ需要が強いことに加え、豪ドル安で輸出しやすい環境が継続すると見込んでいるためとしている(表12)。
これまで上昇傾向で推移していた乳製品の国際価格は、世界的な乳製品供給の増加が見込まれることを背景に、今後下落することが懸念されているものの、豪州の乳業メーカー間では、集乳量確保のための競争が激しくなっており、2017/18年度よりも高い生産者支払乳価を設定することで、新たな酪農家の獲得を図っている。
注1:これまで豪州の最大手乳業メーカーであったマレー・ゴールバン社は、2018年5月、カナダの大手乳業メーカーのサプート社の豪州における子会社である豪州サプート社に売却された。同社は、豪州の大手乳業メーカーの一つであるWCB社の筆頭株主でもあることから、マレー・ゴールバン社を継承した豪州サプート社とWCB社の生産者支払乳価を、統一して設定している。
注2:豪州の乳業メーカーの生産者支払乳価は、乳固形分(乳脂肪と乳タンパク質の合計)1キログラム当たりの単価で設定される。2016/17年度の豪州の生乳に占める乳固形分の比率は、7.49%となっている。この比率で割り戻すと、乳固形分1キログラムは、生乳13.35キログラムに相当する。
(調査情報部 石橋 隆)