需給動向 国内 |
平成29年11月の牛肉需給を見ると、生産量は3万2986トン(前年同月比1.1%増)と前年同月をわずかに上回った。品種別では、和牛が1万5664トン(同1.3%増)と前年同月をわずかに、交雑種が8362トン(同8.8%増)とかなりの程度増加したものの、乳用種が8604トン(同5.3%減)と前年同月をやや下回った。
輸入量は、冷蔵品が2万1961トン(同4.0%増)と13カ月連続で前年同月を上回ったものの、冷凍品が1万9548トン(同13.2%減)とかなり大きく減少したことから、全体では4万1554トン(同4.9%減)となった。国別に見ると、輸入量の半数を占める豪州産は2万1332トン(同11.7%減)とかなり大きく減少した一方、出荷頭数増により輸出量が増加している米国産は1万7714トン(同11.4%増)とかなり大きく増加した。また、今年度に入り輸入量が伸びているメキシコ産の輸入量は、956トン(同83.5%増)と輸入量全体に占める割合は少ないながらも大幅に増加しており、特にバラ肉の増加が目立った。
推定出回り量は、前年同月をやや下回る7万5114トン(同5.3%減)となり、推定期末在庫は前月から860トンほど取り崩したものの、出回り量が減少したことで11万7485トン(同3.9%増)と前年同月をやや上回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。
農林水産省は平成29年12月5日、「平成28年度肉用牛生産費」を公表した。これによると、肥育経営における肥育牛1頭当たり資本利子・地代全額算入生産費(「以下「全算入生産費」という)は、全品種ともに6年連続での増加となった。内訳を見ると、去勢若齢和牛が114万6901円(前年度比7.1%増)、乳用雄が50万5244円(同8.1%増)、交雑種が76万9384円(同2.3%増)となった(表1)。また、費目別に見ると、生産費の5〜6割を占めるもと畜費は、子牛生産頭数の減少を背景に増加したほか、労働費も全ての品種で増加となった。一方、生産費の3〜4割を占める飼料費は、主に米国での飼料穀物の増産による輸入飼料価格の低下や為替が円高であったことなどから減少した。
肥育牛の販売価格は、去勢若齢和牛が131万3694円(同8.8%高)、乳用雄が49万7881円(同3.1%高)、交雑種が82万8635円(同0.6%高)と全ての品種で前年度を上回った。上昇要因としては、出荷頭数が減少し、国産牛肉の供給量が減少する中で輸出需要やインバウンド需要が増加したことに加え、ふるさと納税向けの需要が増加したことなども考えられる。販売価格から生産費を差し引いた所得は、もと畜費が大幅に増加した乳用種肥育牛を除きプラスとなった。
平成29年12月15日に開催された「食料・農業・農村政策審議会畜産部会」において、畜産物価格等の算定について諮問・答申が行われ、30年度の畜産物価格等が決定した。牛肉の安定価格については、安定上位価格が現行1キログラム当たり1215円から1255円に、安定基準価格は現行同900円から925円と、それぞれ40円および25円引き上げられた(表2)。
(畜産需給部 山神 尭基)