需給動向 海外 |
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輸出、生産ともに引き続き好調、政府が抗菌剤の使用抑制を推進
2017年1〜11月の鶏肉輸出量(調製品等を含む)は、世界各地における高病原性鳥インフルエンザ(AI)の発生などによるタイ産鶏肉への需要増が追い風となり、75万1080トン(前年同期比7.7%増)となっている(図13)。
品目別にみると、鶏肉調製品は、48万8662トン(同12.1%増)となっており、このうち日本向けは25万2621トン(同16.5%増)と5割を占め、引き続き好調な輸出をけん引している。
冷凍鶏肉(カット品)については、19万9949トン(同7.5%増)となっており、日本向けが11万5847トン(同13.8%)と好調なほか、マレーシア向けも2万4795トン(同58.7%増)と大きく増加している。この要因として、2016年12月以降、最大の輸入先国である中国において人へのAIの感染が頻繁に発生しており、タイ産に徐々にシフトしていることが挙げられる。
世界的なタイ産鶏肉への需要増を受け、同国食肉大手各社は、鶏肉事業の拡大に取り組んでいる。GFPT社は、日本やEU向け鶏肉輸出を拡大するため、2020年までに新工場を整備し、1日当たり食鳥処理羽数を38万4000羽に拡大する。タイ・フーズ・グループ(TFG)も、2018年半ばまでに同羽数を現在の54万羽から60万羽に引き上げる計画を有しており、好調な鶏肉事業を背景に、2018年の売り上げを前年比20%増の300億バーツ(1056億円)と見込んでいる。
2017年1〜11月の鶏肉生産量は、世界的なタイ産鶏肉需要の高まりに対応し、184万5000トン(前年同期比5.2%増)と、引き続き好調に推移している(図14)。
鶏肉価格(卸売価格および小売価格)は、10月下旬の菜食週間(キンジェー)などの影響から、10月から下落傾向が続いているが、タイ商務省国内取引局の12月〜2月の農産物国内市場価格予測では、国内外の需要を満たすだけの生産量が見込まれるため、価格は安定して推移するとしている。
タイ政府は2017年、抗菌剤が効かない薬剤耐性菌が世界的に問題となっている中、5カ年計画の「抗菌剤の耐性に関する国家戦略(2017〜21年)」を策定し、2021年までに動物への抗菌剤の使用を30%削減(2016年比)などの目標を掲げ、このたび、同戦略を効果的に実行するための特別委員会を立ち上げたところである。
こうした動きを受けて、食肉最大手のチャロン・ポカパン・フーズ(CPF)は先ごろ、畜産、養殖事業での抗菌剤などの使用を抑制する独自のガイドラインを発表した。CPFは、2020年までに国内はもとより、海外でも同ガイドラインを適用し、専門家などと協力して家畜への抗菌剤の使用を削減したり、アニマルウェルフェアの考えを積極的に取り入れるとしている。
同戦略の今後の動向によっては、肉用鶏農家や鶏肉産業に影響が及ぶ可能性がある。
(調査情報部 青沼 悠平)