需給動向 海外

◆豪州◆

生乳生産の増加見通しを受け、国際価格は下落


10月の生乳生産量、前年同月をかなりの程度上回る

デーリー・オーストラリア(DA)によると、2017年10月の生乳生産量は104万7800キロリットル(107万9200トン相当、前年同月比6.7%増)と前年同月をかなりの程度上回った。7〜10月の累計では、332万8800キロリットル(342万8700トン相当、前年同期比2.7%増)と前年同期をわずかに上回った(図17)。

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地域別に見ると、酪農主産地のビクトリア(VIC)州は70万700キロリットル(前年同月比8.2%増)と増加し、同州内の全ての地域で前年同月を上回る生産となった。

豪州気象庁は、11月はVIC州東部やタスマニア州などの一部地域で少雨に見舞われたものの、向こう3カ月は、全般に潤沢な降雨が見込まれるとしており、現地専門家は、こうした見通しを受け、今後の生乳生産は順調に推移するとみている。

また、米国農務省は、2018年の生乳生産量について、潤沢な降雨による牧草生育環境の回復や、乳価上昇による後継牛の保留の増加が見込まれることを受け、前年比2.4%増の953万キロリットルとなるとしている。

全粉乳とチーズは輸出増

DAが発表した2017年10月の乳製品の主要4品目の輸出量は、前年同月と比較して全粉乳とチーズは大幅に増加したものの、脱脂粉乳とバターは大幅に減少した(表7、図18)。

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全粉乳は、中国向けの需要が引き続き堅調に推移していることから、また、チーズは、中国向けや過半を占める日本向けが、いずれもニュージーランド(NZ)産からの切り替えにより増加したことから、ともに前年同月を大幅に上回った。

一方、脱脂粉乳は、マレーシアやフィリピンをはじめとした東南アジア各国から、また、バターは、韓国や中国から、いずれも需要が減少したため、ともに前年同月を大幅に下回った。

生乳の世界的な増産を背景に、国際価格は下落

2017年12月19日に開催された、乳製品価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(表8、図19)。

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NZの生乳生産量が、高温かつ少雨の気候見通しを受け減少すると見込まれることから、全粉乳を中心に価格が上昇するとの見方もあったが、主要4品目の取引価格はいずれも前回から下落した。今回の入札結果は、国際市況の低迷が続いているとして12月上旬に生産者支払乳価を引き下げた、フォンテラ社の見立てを裏付けるものとなった(注)

(注) 豪州フォンテラ社は12月13日、NZのフォンテラ社に続き、2016/17年度末の生産者支払乳価を、乳固形分1キログラム当たり5.62〜5.7豪ドル(506円〜513円:1豪ドル=90円)に引き下げた。同社は、豪ドル安で推移する為替レートが輸出環境の追い風になっているとしながらも、国際市況の低迷が続いていることを引き下げの理由に挙げている。

乳牛飼養頭数、1頭当たり乳量の増加を受け、生乳生産は回復へ

豪州農業資源経済科学局(ABARES)は12月11日、四半期ごとに公表している「Agricultural Commodities」の中で、2017/18年度(7月〜翌6月)の生乳および乳製品需給に関する見通しを公表した(表9)。

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これによると、乳牛飼養頭数は、乳用牛のとう(更新)が一段落したことから、前年度比でわずかな増加が見込まれている。さらに、1頭当たり乳量も、生産者支払乳価が前年度と比べて高い水準にある中、比較的安価に推移する投入資材コストを追い風に、補助飼料の給与が増加したことから、わずかな増加が見込まれている。このため、生乳生産量は、925万キロリットル(953万トン相当、前年度比2.6%増)と回復が見込まれるとしている。

乳製品輸出額は、アジア地域を中心に乳製品需要は堅調に推移しており、特に中国の育児用調製粉乳の輸入需要が高いことや、前年度と比べてチーズの国際市況が良好であることを受け、総じて増加が見込まれるとしている。

(調査情報部 竹谷 亮佑)


				

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