需給動向 海外

◆ブラジル◆

1〜3月の輸出量は前年から微減、今後も輸出量減が懸念


1〜3月の輸出量は前年から微減

ブラジル開発商工省貿易局(SECEX)によると、2018年1〜3月の冷蔵・冷凍鶏肉輸出量は、前年同期比2.5%減の94万4487トン(製品重量ベース)と前年同期をわずかに下回った(表9)。

027a

輸出先別の輸出量をみると、最大の輸出先であるサウジアラビア向けは、同国における2017年1月からの輸入鶏肉関税の引き上げや生産の拡大による影響で、昨年から引き続き大幅に減少している。一方、中国向けは、前年同期比10.2%増の11万426トンとなった。これは、近年、高病原性鳥インフルエンザが発生した米国などから種鶏や原種鶏の輸入を停止した結果、生産量が減少し、引き合いが強まったことが背景にあるとされている。第3位の日本向けは、輸出量は同0.6%減にとどまったものの、ブラジル現地相場安に引っ張られ、単価が同7.6%安となったことから、輸出額はかなり減少した。

ブロイラーの生産コストは急増

ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)養鶏・養豚調査センター(CIAS)によると、最大の鶏肉生産州であるパラナ州における2018年4月のブロイラー生産コスト指数は、219.91と、8カ月連続で上昇した(図12)。同指数は、2016年7月以降、生産コストの約7割を占める飼料の主原料であるトウモロコシ価格が、豊作により下落していたことから、2017年8月まで低下を続けていた。しかし、それ以降はトウモロコシ生産者が価格安から売り控えを行ったことで需給がひっ迫したことで、上昇していた。

028a

また、2018年4月は、同年1月比で15%近く上昇している。これは、2017年11月頃から、アルゼンチンで干ばつが発生し、同国のトウモロコシ生産量が2割以上減少することが見込まれていることから、ブラジル産トウモロコシの引き合いが強まり、価格が上昇していることが要因である。

懸念されるEU向け輸出停止とストライキの影響

欧州委員会は、5月14日付けの官報に、ブラジルの食鳥処理場や加工場など20カ所についてEUに動物由来製品を輸出できる施設のリストから削除する旨の規則(EU2018/700)を掲載した。この要因として、EUは、昨年3月に発生した食肉不正問題後のブラジル側の対応が不十分だったことに加え、2018年3月に、EU向け食肉輸出に対する検査施設の認証に関して不正が発覚したことを上げている。今回輸出停止となった20カ所のうち、12カ所が国内最大のパッカーであるBRF社であることから、EU向け輸出の大幅減が見込まれている。また、EUに仕向けられない鶏肉が国内に流通しており、今後の相場下落が懸念されている。なお、ブラジルからのEU向け鶏肉輸出は、低関税割当のある加塩鶏肉が主流である(図13)。

028b

加えて、5月21日以降、トラック運転手によるストライキの影響で、23州の主要幹線道路が10日以上通行不可能となった。その結果輸送が滞り、生体鶏の死亡や製品の腐敗などが発生していることから、5月の輸出量の減少は確実視されている。また、生産者へのひなや飼料の供給も滞ったため、生産現場では疾病のまん延や餓死が発生しているとされ、今後の生産量の減少も懸念されている。現地報道によると、7月以降の生産調整を検討しているパッカーも多いとしている。

(調査情報部 佐藤 宏樹)


				

元のページに戻る