需給動向 海外 |
◆EU◆
生乳出荷量が増加する中、乳価の上昇は減速へ
欧州委員会によると、2018年3月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比1.0%増の1368万1500トンとなり、13カ月連続の増加となった(図18)。しかしながら、対前年同月比(増加率)は、2017年11月をピークに縮小傾向にある。
3月の生乳出荷量は、前年同月を上回ったものの、関係者の予想を下回る結果となった。これは、2月から3月にかけ、欧州の大部分が寒波による積雪や降雨に見舞われたため、牧草の生育が遅れたことなどによるものである。加盟国別にみると、二大生乳生産国であるドイツ(前年同月比1.5%増)とフランス(同0.3%増)のほか、ポーランド(同1.6%増)などでは増加したが、英国(同1.3%減)、オランダ(同2.6%減)などでは減少した(表10)。
なお関係者によると、牧草の生育が遅れていた、ドイツ(北部)、オランダ、デンマークでは、4月中旬以降の温暖な気候により牧草の生育が回復してきているとのことである。
欧州委員会によると、2018年4月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比0.8%高の100キログラム当たり33.44ユーロ(1キログラム当たり42.80円:1ユーロ=128円)となった(図19)。同価格は、2016年11月以降、18カ月連続で前年を上回っているものの、生乳出荷量が増加傾向の中、2017年11月をピークに前月の水準を下回って推移し、2018年4月には前年並みに低下するなど、乳価の上昇は減速している。
欧州委員会によると、第1四半期(1〜3月)の主な乳製品の輸出量は、いずれも前年同期を上回った(表11)。
脱脂粉乳は、前年同期比8.1%増となった。EU産の脱脂粉乳価格が低い水準で推移していることが輸出拡大の後押しとなっている。前年同期と比べ増加量が大きかったのは、アルジェリア(同1万7208トン増)とエジプト(同3801トン増)であった。
チーズは、同1.3%増、バターは、同7.6%増となった。チーズとバターの第1四半期の輸出量はそれぞれ前年を上回っているものの、3月の輸出量は、最大の輸出先国である米国向けが減少したことなどから、共に、4カ月ぶりに前年を下回った。前年同期と比べ増加量が大きかったのは、チーズではチリ(同2290トン増)、レバノン(同1169トン増)、バターではサウジアラビア(同1412トン増)、モロッコ(同1063トン増)であった。
なお、欧州委員会は、4月に公表した短期的需給見通しの中で、2018年の輸出量を脱脂粉乳は前年比5.0%増、チーズは同4.0%増、バターは同5.0%増と見込んでいる。
(調査情報部 前田 絵梨)