需給動向 海外 |
◆NZ◆
生乳生産量の減少幅は縮小し、乳製品輸出量は回復傾向
ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2018年3月の生乳生産量は、186万7000トン(前年同月比1.5%減)と4カ月連続で前年同月を下回った(図22)。
生乳生産量は、昨年後半の降雨量が平年を下回った影響により減少しているとみられるが、1月上旬にまとまった降雨があったことから牧草の生育環境が改善し、減少率は1月時点の前年同月比4.9%減から回復傾向となっている。
ニュージーランド統計局(Statistics NZ)によると、2018年3月の乳製品の主要4品目の輸出量は、生乳生産が回復傾向にあることや、乳製品の国際需給に改善の兆しがあり主要な輸出先からの引き合いが強まったことなどから、チーズを除き前年同月を上回った。
特に、脱脂粉乳は同39.4%増、バターは同29.0%増と高い伸びを示した(表13、図23)。
脱脂粉乳については、中国、マレーシア、フィリピンなど主要な輸出先で輸出量が増加したが、金額ベースでは最近の国際相場の低迷を受け、前年同月比でわずかな増加にとどまった。全粉乳は、アルジェリア向けがかなり増加したものの、中国向けが減少した。
バター類は、中国向けの増加に牽引され大きな伸びとなった。また、チーズは、日本向けが増加したものの、中国向けなどが減少したことから、前年同月を下回った。
2018年5月15日に開催された、乳製品価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(表14、図24)。
全粉乳は前回をわずかに下回ったものの、他の品目はいずれも前回を上回る結果となった。脱脂粉乳は、2カ月ぶりに1トン当たり2000米ドル台に回復し前回比2.4%高の同2047米ドルとなった。バターおよびチーズについても、3月以降上昇傾向で推移し、それぞれ同2.5%高の同5787米ドル、同4.5%高の4205米ドルとなった。
ニュージーランド(NZ)政府は5月28日、マイコプラズマ(注)・ボビス(Mycoplasma Bovis)の根絶を目指し、12万6000頭程度の牛を、向こう1、2年で殺処分すると発表した。
NZでは2017年7月に、初めてマイコプラズマ・ボビスの乳用牛への感染が南島で確認され、政府は、感染牛を殺処分するなどの対応を進めてきたものの、感染拡大を防げず、5月28日時点で、37農場において感染が確認され、260農場で感染が疑われている。
政府は、マイコプラズマ・ボビスの根絶のため、感染が確認された農場のすべての牛(肉用牛を含む)の殺処分、農場の消毒、牛を再導入するまでに60日以上の間隔をとるなど一連の対策を実施していくとしている。
なお、大規模な殺処分により、今後の生乳生産への影響が心配されるが、現地報道によると、専門家の試算では、殺処分される12万6000頭の大部分は乳用牛でNZの乳用牛飼養頭数の3%程度に相当するが、頭数が減少した分、残りの乳用牛に与える補助飼料を増加させることなどで、生乳生産量の減少は1%未満にとどめることができるといった意見もある。
(注) マイコプラズマは、分類上は細菌とされているが、細菌に見られる細胞壁がないため、細菌とウイルスの中間に位置する微生物ともいわれる。現在、約120種類のマイコプラズマが明らかにされているが、このうち、牛に対して病原性を持つものは、およそ20種類。感染すると、乳房炎や肺炎、関節炎などの症状を引き起こす。
また、一度感染すると細菌が臓器に定着することが多く、治療は難しいとされる。牛からヒトへの感染はなく、感染した牛の肉や乳を摂取しても、人体への影響はない。
(調査情報部 石橋 隆)