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◆豪州◆
肉牛取引価格、34カ月ぶりに500豪セントを下回る
豪州統計局(ABS)によると、2018年2月の成牛と畜頭数は、60万9200頭(前年同月比7.0%増)とかなり増加した(図7)。内訳をみると、雄牛は32万800頭(同4.5%増)、雌牛は28万8500頭(同10.1%増)といずれも増加したものの、雌牛の増加率が高く、と畜に占める雌牛の割合は47.4%へ上昇した。これは、1月以降、東部の主要肉用牛生産地域が乾燥した天候で推移したことにより、雌牛の淘汰が増加したことが要因とみられる。特に、ビクトリア(VIC)州の雌牛のと畜頭数は、7万5800頭(同34.5%増)と、東部3州の中で最も高い増加率となった。
これらの結果、同月の牛肉生産量(枝肉ベース)は、18万2100トン(同8.4%増)とかなり増加した。
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2月末にクイーンズランド(QLD)州で一定量の降雨があったことにより、2月末から3月中旬にかけてかなり上昇したものの、その後下落に転じ、4月17日には1キログラム当たり499豪セント(424円:1豪ドル=85円)と、2015年6月以来、34カ月ぶりに同500豪セント(425円)を下回った(図8)。また、4月末時点でも499豪セント(424円)と、3月末時点から同50豪セント(43円)程度、前年同月から同150豪セント(128円)程度下落した。
MLAによると、1月以降、VIC州やニューサウスウェールズ州を中心に乾燥した天候が続いており、QLD州も、4月以降は降雨に恵まれないことから、多くの肉用牛生産者が肉牛の早期出荷を行う一方、牧草肥育業者を中心に導入意欲が減退していることが下落の要因としている。また、米国の牛肉生産量の増加に伴い、米国向けの輸出価格や、米国産と競合する日本や韓国向けの輸出価格で引き下げ圧力があり、間接的に肉牛取引価格にも影響を及ぼしているとしている。
MLAによると、2018年3月の日本向け牛肉輸出量は、冷蔵品はかなり増加したものの、冷凍品が大幅に減少したことにより、2万6100トン(前年同月比7.4%減)と減少した(図9)。
日本の貿易統計とは輸送期間などにより時期がややずれるものの、平成29年4月〜翌3月における日本向け輸出量は、29万3700トン(前年同期比6.7%増)とかなり増加した(表2)。冷蔵品・冷凍品別に見ると、冷蔵品が12万1600トン(同5.9%増)、冷凍品が17万2100トン(同7.2%増)と、それぞれ増加したものの、冷凍品の増加率の方が高かった。また、牧草肥育、穀物肥育別では、14万8700トン(同4.0%増)、14万5000トン(同9.5%増)とそれぞれ増加した。中でも、穀物肥育牛肉の冷凍品は、5万3500トン(同12.3%増)と、もっとも増加率が高かった。これは、関税緊急措置(セーフガード)の発動により、米国やカナダなどからの冷凍牛肉にかかる関税が引き上げられたことや、2017年は豪州において、安価な穀物価格を背景に穀物肥育牛の飼養頭数が100万頭を上回り、過去最高を記録したことが影響しているものとみられる。これにより、日本向け輸出量における穀物肥育牛肉の割合は、49.6%と前年度から1.1ポイント増加した。
なお、冷蔵品では穀物肥育牛肉が約8割、冷凍品では牧草肥育牛が約7割を占めた。
(調査情報部 大塚 健太郎)