需給動向 海外 |
◆EU◆
2017年の牛枝肉生産量は前年並み、牛肉輸出量は1割増
欧州委員会によると、2017年の牛枝肉生産量(EU28カ国)は、787万4131トン(前年比0.1%増)と前年並みとなった(図4)。
と畜頭数をみると、前年比0.7%減の2726万頭と、4年ぶりに減少に転じた。一方、一頭当たり牛枝肉重量は、酪農生産者が乳価低迷を背景に肉用牛との交配を進めた結果、交雑牛のと畜頭数が増加したことなどから、同0.8%増の288.8キログラムとなった。牛枝肉生産量は、一頭当たり牛枝肉重量の増加がと畜頭数の減少をカバーした形となった。
牛肉生産国のうち、上位4カ国(フランス、ドイツ、英国、イタリア)はいずれも減産となり、と畜頭数も減少した(表1)。
一方、続く4カ国(スペイン、アイルランド、ポーランド、オランダ)はいずれも増産となり、と畜頭数も増加した。強い輸出需要に支えられたポーランドは4年連続で増産(前年比11.0%増)となり、リン酸塩排出削減のために乳牛の淘汰を行ったオランダは同5.6%増となった。
欧州委員会は、4月に公表した農畜産物の短期的需給見通しの中で、牛枝肉生産量を、2018年は前年比0.9%減、2019年は同1.3%減と見込んでいる。なお、地域別では、主要生産国を含む西欧(15カ国)では減産、東欧(13カ国)では増産と見込んでいる。
減産を見込む理由としては、これまでの増産の主な要因の一つであった酪農部門における飼養頭数増の動きが一段落したことを挙げ、EUの牛枝肉生産量の約1割を占める東欧諸国やスペインの牛肉産業は引き続き発展するものの、西欧での減産分をカバーしきれないとしている。
2017年の牛肉輸出量(EU28カ国)は、主要輸出先である香港、トルコ、スイス、フィリピンなどへの輸出量が増えたことにより26万9478トン(前年比10.7%増)となり、2014年以降4年連続で増加した(図5)。
EUはこれまで、禁輸措置をとっているロシアに代わる市場として東南アジアなどへの輸出を増やしてきた。しかしながら、2017年12月から始まったロシアによるブラジル産牛肉の禁輸措置によるブラジル産牛肉の動向や、主な牛肉輸出国である米国やアルゼンチンなどとの競合により、今後の輸出拡大の余地は限定的とみている。
そのため、欧州委員会は、短期的需給見通しの中で、今後の牛肉輸出量を2018年は前年比2.0%増、2019年は同3.0%減と見込んでいる。
2017年の牛枝肉卸売価格は、輸出需要の高まりなどを受け、4月または5月以降、前年を上回って推移した(図6)。
欧州委員会によると、2018年3月の牛枝肉卸売価格(EU28カ国)は、雄牛が前年同月比4.0%高の100キログラム当たり387.62ユーロ(5万1941円:1ユーロ=134円)、去勢牛が同1.5%高の同400.97ユーロ(5万3730円)と、引き続き高い水準を維持している。
(調査情報部 前田 絵梨)