需給動向 国内 |
平成29年12月の牛肉需給を見ると、生産量は3万1983トン(前年同月比5.4%増)と3カ月連続で前年同月をやや上回った。品種別では、和牛が1万5326トン(同5.4%増)と前年同月をやや上回り、交雑種も8390トン(同12.9%増)とかなり大きく増加したものの、乳用種が7842トン(同1.4%減)と前年同月をわずかに下回った。
輸入量は、冷蔵品が2万3384トン(同1.4%増)と14カ月連続で前年同月を上回り、冷凍品も2万3526トン(同7.1%増)とかなりの程度増加したことから、全体では4万6994トン(同4.2%増)となった。国別に見ると、輸入量の半数を占める豪州産は2万5820トン(同3.6%増)とやや増加し、次いで輸入量の多い米国産は1万8432トン(同6.4%増)とともに増加した。また、カナダ産も1180トン(同48.5%増)と大幅に増加した。
推定出回り量は、前年同月をやや上回る8万4776トン(同5.6%増)となり、推定期末在庫は前月から6200トンほど取り崩したものの、輸入量の増加により11万1252トン(同3.1%増)と前年同月をやや上回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。
平成29年(1〜12月)の牛肉輸入量は、国内で高まる肉ブームなどを背景に57万2994トン(前年比13.8%増)と前年をかなり大きく上回った。このうち、冷蔵品は26万5597トン(同16.1%増)と前年を大幅に上回った。国別に見ると、米国産は13万6798トン(同34.8%増)と大幅に増加し、次いで豪州産は11万7750トン(同0.5%増)とわずかに増加した(図1)。また、フィードロット飼養頭数が増加傾向にあるカナダ産は3285トン(同34.2%増)となり、北米産牛肉がシェアを伸ばした。
豪州産については現在、牛群再構築の途中にあり、1〜11月までのと畜頭数が前年同期比8.9%減と推移する中、米国向けに加え、中国向けなどの輸出が好調に推移したことから、日本向け価格が高値で推移した。そのため、増産が進み、供給面で安定している米国産への需要が高まったものとみられる。業界関係者によると、米国産冷蔵品輸入量の増加の背景として外食産業などが他の部位よりも安価であったバラ肉にシフトしたことも要因の1つとみられている。
この結果、冷蔵品輸入量に占めるシェアは、豪州産が28年の51.1%から44.3%へと6.8ポイント減少した一方、米国産は44.3%から51.5%へと7.2ポイント増加した。米国産のシェアは同国でのBSE発生により輸入が禁止された平成15年以降、過去最高を記録し、牛肉自由化以降、初めて首位を獲得した。
また、冷凍品輸入量も8月1日から関税の緊急措置が発動(関税率50%(通常は38.5%)が適用)されているものの、好調な需要を背景に30万6744トン(同12.1%増)と前年をかなり大きく上回った。国別に見ると、日豪EPAにより関税の緊急措置が適用されない豪州産が16万9923トン(同9.0%増)とかなりの程度増加した。また、米国産は10万2270トン(同13.5%増)、カナダ産も1万5425トン(同40.2%増)と増加した。
平成29年の牛肉輸出量は2706トン(前年比41.7%増)、輸出金額は192億円(同41.4%増)と過去最高を更新した(図2)。31年の輸出目標(250億円、4000トン相当)の達成に向け、着実に増加している。冷蔵品・冷凍品それぞれの輸出量は、冷蔵品が1336トン(同32.9%増)、冷凍品が1370トン(同51.6%増)となり、冷凍品の伸びが目立った。主な輸出先国を見ると、カンボジアが最も多く全体の約3割を占め、次いで香港、米国が続く。牛肉輸出量が増加している背景には、日本畜産物輸出促進協議会や(独)日本貿易振興機構(ジェトロ)による各国での輸出促進プロモーションの実施など、国を挙げて輸出振興を図ってきたことなどがあげられる。
(畜産需給部 山神 尭基)