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脱脂粉乳の卸売価格、公的買入価格を下回る水準が続く
欧州委員会によると、2017年11月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比6.2%増の1214万8000トンと9カ月連続の増産となり、増加率もこの間で最大となった(図14)。また、11月の出荷量としては過去最大となった。
EU最大の出荷量を誇るドイツ(同6.4%増)と第2位のフランス(同5.4%増)をはじめ、主要国で軒並み前年同月を上回った(表9)。なお、2017年1〜11月の累計では、EU全体で前年同期比1.7%増となっている。
欧州委員会によると、2017年12月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、14カ月連続で前年を上回り、前年同月比14.2%高の100キログラム当たり37.77ユーロ(1キログラム当たり51.74円:1ユーロ=137円)となった(図15)。同価格は、生乳出荷量が増産傾向にある中、6月から11月まで一貫して前月を上回って推移しており、12月も高値傾向が続いているが、前月比では0.2%安とわずかに下落した。
生乳取引価格が高値で推移する中、主要乳製品価格は下落傾向で推移している。
欧州委員会によると、脱脂粉乳の平均卸売価格(EU28カ国)は、公的在庫が膨らむ中、昨年6月をピークにほぼ一貫して下落し、2018年1月22日の週では、100キログラム当たり139.9ユーロ(1万9166円)と過去最安値を更新し、昨年9月11日の週以降、公的買入価格(同169.8ユーロ(2万3263円))を下回る水準が続いている(図16)。高騰していたバター価格も、同447ユーロ(6万1239円)とピーク時の昨年9月から約3割の下落となっていることから、これまで上昇基調にあった生乳価格にも陰りが見えてきている。
欧州委員会は、1月16日に実施した脱脂粉乳公的在庫の売渡入札の結果、過去16回のうち最大となる1864トンが落札し、最低落札価格は100キログラム当たり119ユーロ(1万6303円)となったと公表した(表10)。
今回の最低落札価格は、これまでの入札で最低だった前々回(同139.02ユーロ(1万9046円)を14.4%下回り、前述の公的買入価格を29.9%下回った。また、前回不落とした同130ユーロ(1万7810円)を8.5%下回っている。
欧州委員会は、今回の入札に先立つ昨年12月16日、公的在庫の売渡対象数量をこれまでの2万2000トンから10万1000トンに大幅に拡大した。これについて欧州委員会は、生乳取引価格が11月まで6カ月連続で前月を上回っていたこと、公的在庫が37万8000トンを超過していることが背景にあるとした。
また、同委員会は、2017年において、脱脂粉乳の生産量が減少している一方で、輸出量は、低価格により競争力が高まったことから大きく伸びているため、民間在庫が非常に少ない状況となっており、公的在庫を放出する余地があるとしている。
脱脂粉乳の公的在庫が膨大となる中、欧州理事会は2月1日に関係規則を改正し、価格下落に伴う酪農経営への悪影響を避けるため、2018年の脱脂粉乳の公的買い入れについて、一定条件のもと固定価格(100キログラム当たり169.8ユーロ)で買い入れる数量をゼロとした。この結果、固定価格での公的買い入れは行われないものの、入札による公的買い入れが行われることから、酪農家に対するセーフティーネットは引き続き機能するとしている。
(調査情報部 玉井 明雄)