需給動向 海外 |
◆NZ◆
生乳生産量は減少し、国際市況に落ち着き
ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2018年1月の生乳生産量は、229万4000トン(前年同月比4.9%減)と2カ月連続で前年同月の水準を下回った(図22)。
生乳生産量の減少は、降雨量が平年を大きく下回っているためとみられている。1月上旬にまとまった降雨が見られたものの、これまでの干ばつによる牧草生育環境の回復にはつながっていない。
最大手の酪農協系乳業メーカーであるフォンテラ社の1月の集乳量は、前年同月比8.3%減とかなりの程度減少した。このうち、南島は、同4.6%減と比較的小幅な減少にとどまっている一方で、干ばつの影響が大きいとされる北島は、同10.9%減とかなりの程度減少した。
ニュージーランド統計局(Statistics NZ)によると、2018年2月の乳製品の主要4品目の輸出量は、全粉乳は前年同月の水準をかなり大きく上回ったものの、脱脂粉乳は前年同月並み、バターおよびチーズは前年同月の水準を下回った(表11、図23)。
脱脂粉乳は、マレーシア向けが増加したものの中国向けが減少し前年同月並みとなったが、金額ベースでは、国際相場の低迷を受け、前年同月比で2割以上減少している。全粉乳は、中国向けがわずかに減少したものの、アルジェリア向けやスリランカ向けが増加したことで、かなり大きな増加となった。
バターは、中国向けは増加したものの、サウジアラビアなど中東向けが減少したことで、前年同月の水準を下回った。また、チーズは、日本向けが増加しシェア1位となった一方、中国向けや韓国向けが減少したことで、前年同月の水準を下回った。
2018年3月20日に開催された、乳製品価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下のとおりとなった(表12、図24)。
全粉乳は主要生産国であるNZの生乳生産減少見通しを受け、バターは世界的な需要増を受け、ともに前回並みとなったが、脱脂粉乳とチーズは、前回から下落した。脱脂粉乳については、EUの公的在庫の積み上がりが下落の要因であるとみられている。
フォンテラ社は、2017/18年度上半期(8月〜翌1月)の業績を発表し、3億4800万NZドル(275億円:1NZドル=79円)の純損失を計上した。これは、ボツリヌス菌混入の誤公表を受けて乳製品出荷先の一つであったダノン社が実施したリコールに対する賠償金の支払いや、出資先(中国の乳業メーカー)の株価下落などによるものである。ただし、売り上げについては、国際市況の回復に伴い、98億3900万NZドル(7773億円、前年度比6.5%増)と増加した。これを受け、今年度の生産者支払乳価の見通しについては、直近5年間では2番目に高い、乳固形分1キログラム当たり6.55NZドル(517円)へと引き上げた。
一方、生乳処理シェアの3%程度を占める商系のシンレイ社は、上半期の売り上げが前年同期比1.5倍超えとなる4億3900万NZドル(347億円)に増加した上、同約3.8倍の4066万NZドル(32億円)の純利益となったと発表した。同社は、国際市況の回復に加え、育児用粉乳など収益性の高い乳製品の製造・販売が増加したことを増加の要因として挙げており、今後も研究・開発拠点の新設など、高収益・高付加価値製品の製造に注力していきたいとしている。
(調査情報部 竹谷 亮佑)