需給動向 海外 |
◆EU◆
生乳出荷量は16カ月連続で増加
欧州委員会によると、2018年6月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月比1.5%増の1366万3940トンとなり、16カ月連続の増加となった(図13)。
6月の出荷量を加盟国別にみると、2017年にリン酸塩排出削減のために乳牛の淘汰を行ったオランダ(同1.5%減)を除く主要生産国はいずれも増産となった(表10)。
なお、1〜6月の出荷量を見ても、同様の傾向となっている。前年同期比の増加率が最も大きいのはイタリア(前年同期比8.0%増)、次いでベルギー(同5.5%増)、ドイツ(同3.3%増)、ポーランド(同2.9%増)となっている。各国の増加率には大小があるものの、2015年3月末に生乳クオータ制度が廃止され、各加盟国が自由に生乳を生産できるようになったことが生産量増加の主な要因とみられる。2017年に輸出需要が増加したことなどもあり、放牧地の確保などの面でも増産が可能な生産国では、生乳出荷量が増加しているものと考えられる。なお、EU全体の生乳出荷量は2010年以降8年連続で増加しており、この傾向は、2018年、2019年についても続くとみられている。
欧州委員会によると、7月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比3.7%安の100キログラム当たり32.92ユーロ(1キログラム当たり43.13円:1ユーロ=131円)となった(図14)。生乳生産量が増加傾向で推移する中、乳価は、2018年4月に18カ月ぶりに前年比で下落に転じ、4カ月連続で前年同月比安となった。
この夏の熱波の影響で、複数のEU加盟国が干ばつに見舞われている。現地報道によると、アイルランドや英国などでは、牧草の生育状況が悪いことから、冬場の飼料として確保していたサイレージを給与する酪農家もみられるという。
欧州委員会は、干ばつが農作物の生産と動物福祉の面で大きな影響を与え、特に飼料不足を招く懸念から、今年後半の畜産農家の所得に影響を及ぼす可能性があるとしている。
このような中、同委員会は、8月2日、CAP(Common Agricultural Policy:共通農業政策)の下での既存の支援に加えて、二つの具体的な支援措置を決定した。一つ目は、農業経営のキャッシュフロー改善のため、直接支払いの最大70%、農村振興政策による補助金の最大85%が、12月から10月中旬に前倒しされて支払われるというものである。二つ目は、緑化支払の要件である「作物の多様化」、「生態系保全用地の維持」の免除により、休耕地などでの家畜飼料生産を可能にするというものである。
また、農家が飼料生産を柔軟に行えるよう、緑化支払要件のさらなる免除についても検討されている。
現時点で、生乳生産への干ばつの影響がどの程度になるかは明確ではなく、欧州委員会は全ての加盟国に対し、干ばつの農業者への影響に関する情報について、8月31日までに報告するよう求めている。
(調査情報部 前田 絵梨)