需給動向 国内

◆牛 肉◆

第1四半期の冷凍牛肉、セーフガードの発動なし


平成30年6月の牛肉需給を見ると、生産量は2万6327トン(前年同月比1.2%増)と9カ月連続で前年同月を上回った。品種別では、乳用種が7395トン(同4.5%減)と5カ月連続で前年同月を下回ったものの、和牛が1万1356トン(同2.1%増)と10カ月連続で、交雑種は酪農家での黒毛和種交配率の上昇により7254トン(同6.4%増)と24カ月連続で前年同月を上回った。

輸入量は4万7319トン(同5.7%減)と2カ月連続で前年同月を下回った。このうち、冷蔵品が2万3445トン(同0.4%増)と前年同月をわずかに上回った一方、冷凍品は関税緊急措置(以下「セーフガード」という。)の発動回避のため、輸入業者が通関数量を絞ったものとみられ、2万3843トン(同11.0%減)と前年同月をかなり大きく下回った。

推定出回り量は、前年同月をわずかに下回る7万1010トン(同2.7%減)となり、推定期末在庫は前月から2368トン積み増したものの、10万6611トン(同1.6%減)と4カ月連続で前年同月を下回った(農林水産省「食肉流通統計」、財務省「貿易統計」、農畜産業振興機構調べ)。

冷凍牛肉輸入量、発動基準数量の約9割にとどまる

冷凍牛肉の第1四半期(4〜6月)輸入量は、最大のシェアを占める豪州産が4万8111トン(前年同期比3.5%減)、次いで多い米国産が3万1803トン(同12.3%増)となり、全体では9万9トン(同1.0%増)とわずかな増加にとどまった(図1)。

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財務省が7月31日に告示した当該四半期の冷凍牛肉の世界全体輸入量(9万96トン)は、セーフガード発動基準数量(10万4427トン)の86%、協定対象外(豪州、メキシコ、チリ以外)輸入量(4万18トン)も、同発動基準数量(4万4254トン)の90%となった。

米国産については、4月のセーフガード解除に伴い関税率が50%から発動前の38.5%に戻ったことから、4月の輸入量は前年同月を大幅に上回った。しかしながら、当該第1四半期の発動基準数量が、セーフガードが発動した前年度第1四半期の輸入量(8万9253トン)の117%と比較的高水準となっていることに加え、輸入業者が5、6月分の通関を必要量のみに絞ったとみられることから、8月以降のセーフガード発動は回避となった。

米国産、豪州産ともに、国内やアジア諸国での需要の高まりを背景とした好調な輸出需要などを受けて現地相場が高い水準にあるほか、為替が円安傾向で推移したことも影響したとみられる。

輸入品仲間相場、高値で推移

輸入品仲間相場(部分肉卸売価格)の推移を見ると、米国産については、現地の生産増を受けて、ロインなど一部の部位は前年を下回って推移しているものの、テーブルミートや業務用として汎用性の高いチャックアイロール(冷蔵品、「かたロース」に相当)は、安価なステーキ材として現地の需要が高まっていることから、上昇基調で推移している。また、焼肉店や牛丼店などで多く使用されるショートプレート(冷凍品、「ばら」に相当)は、韓国や香港などへの好調な輸出需要を受けて、1キログラム当たり800円前後の高値で推移している。豪州産については、現地の干ばつにより、雌牛のと畜頭数が増加しており、ハンバーガーパティなどに利用されるカウミート(85CL(注)・冷凍品)は弱含みの展開で推移しているものの、ショートプレートの代替品として需要の高いナーベルエンドブリスケット(冷凍品、「ばら」に相当、グラフには掲載なし)は、中国や韓国などからの堅調な需要を背景に、上昇基調で推移しており、ショートプレートとの値差が縮まっている(図2)。

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セーフガード発動は回避されたものの、最近の肉ブームを背景に、輸入牛肉への需要が高まる中、現地の輸出需要の増加などにより輸入業者とっては手当てしにくい環境が続くとみられる。

注:CL(Chemical Leanの略)とは、赤身肉の構成割合を指す。例えば、85CLの場合、赤身肉が85%を占める。

(畜産需給部 二又 志保)


				

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