需給動向 海外

◆米国◆

チーズ在庫量が高水準で推移する中、乳用牛頭数に減少の兆し


生乳生産量が増加する一方、経産牛のと畜も増加

米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が7月20日に公表した「Milk Production」によると、2018年6月の生乳生産量は、828万7000トン(前年同月比1.2%増)となった(図12)。増産の主因は1頭当たり乳量の伸びであり、主要23州では1頭当たり891キログラムと、6月としては過去最高を記録した。

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一方、USDAが年2回公表する「Cattle」によれば、7月1日現在の乳用牛飼養頭数は、経産牛、未経産牛ともに前年並みの水準となっている。しかし、乳用経産牛と畜頭数は2018年1月以降6カ月連続で前年同月を上回って推移しており、2018年上半期(1〜6月)は前年同期比4.8%増の159万2400頭となった。業界紙によれば、現在のと畜ペースは、乳価の低迷によって酪農家の廃業が増加した2013年に匹敵する水準であるとされる。

こうした中、USDAは7月、乳価の下落によって2019年の乳用経産牛頭数が前年比0.1%減の939万5000頭になるとの見込みを公表した。これが実現すれば、乳用経産牛頭数は2013年以来6年ぶりに減少に転じることとなる。

チーズ在庫量は過去最高を更新

生乳の最大の仕向け先であるチーズの在庫量が、高水準で推移している。USDA/NASSが7月23日に公表した「Cold Storage」によると、2018年6月末現在のチーズの在庫量は、63万2000トン(前年同月比5.8%増)となり、2カ月連続で過去最高を更新した(図13)。この背景には、生産量が堅調に推移する一方、国内消費の伸びが鈍化していることに加え、4月まで好調に推移していた輸出が5月に失速したことがある。チーズの生産量は2013年4月以降、一貫して前年同月を上回って推移しており、2018年1〜5月の累計では、前年同期を2.5%上回る2429トンとなった。

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主要輸出相手先が報復による追加関税措置を実施

米国が課した追加関税措置に報復すべく、メキシコ、カナダおよび中国が米国産乳製品に課すとした追加関税は、6月以降7月上旬までに順次発動された(表7〜9)。この3カ国は米国産乳製品の輸出先上位3カ国(輸出額ベース)でもあることから、米国の酪農乳業界は今後の乳製品輸出への影響を懸念している。

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ただし、追加関税が及ぼし得る影響は品目によってさまざまである。このうちチーズに関しては、最大の輸出先であるメキシコが20~25%の関税を上乗せしたことからかなりの打撃が見込まれており、USDAも2018年の輸出量予測を昨年12月時点から6.4%下方修正し、33万4000トン(前年比2.9%減)と見込んでいる。このため、今後も米国のチーズ生産が堅調に続けば、在庫量は引き続き高水準で推移する可能性がある。

一方、脱脂粉乳に関しては、中国が追加関税の対象としたものの、米国の同国向け輸出量は、2017年に総輸出量の1割に満たない水準であったことから、影響は限定的とみられる。このため、USDAは、2018年の脱脂粉乳輸出量を、メキシコやアジア諸国向けの伸びなどから72万トン(同18.8%増)と見込んでいる。

(調査情報部 野田 圭介)


				

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