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◆中国◆
追加関税により米国産豚肉の中国向け輸出が急減
中国政府は、4月2日から一部の米国産豚肉とくず肉に25%の追加関税を課し、7月6日以降はさらに25%の関税を賦課した(表5)。これにより、現在、米国産豚肉とくず肉には37〜70%の関税が課されている。
追加関税の詳細については、次のURLを参照されたい。
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002237.html
現地専門家は、米国は中国にとって豚肉の主要な輸入先の一つであるものの、輸入量に占める米国産のシェアは14%(2017年)にとどまっており、代替輸入先も多いことから、追加関税の影響は限定的とみている。
米国農務省によると、米国の中国向け豚肉輸出量は、追加関税の賦課後、6月1週目から週あたり100トンを下回って推移し、7月1週目からはゼロとなっている(図9)。なお、中国の税関当局は、例年、7月末に5月までの輸入データを公表するが、今年は現時点で、3月までのデータしか公表されていない。
2017年の米国の中国向け豚肉輸出量は、週あたり平均で約1000トンであり、少ない週でも130トン程度であったことから、今年の6月以降の輸出にはブレーキがかかったことが分かる。
中国国内の豚生体出荷価格と子豚価格、豚肉の小売価格は、いずれも5月に底を打ち、上昇傾向に転じた(図10)。中国では、5月ごろから豚肉価格が上昇する年が多く、今回の上昇も季節変動の可能性がある。
豚生体出荷価格の上昇により、農家の収益性の指標とされる豚トウモロコシ比(注1)は、7月2週目に6.3まで回復した(図11)。同指標は3月2週目以来4カ月ぶりに6.0を上回った。
(注1)養豚経営の収益性の指標とされる。1キログラム当たりの豚出荷価格を同量の飼料用トウモロコシの卸売価格で除したもの。一般に6.0を上回ると農家は繁殖用母豚を購入し、5.5を下回ると繁殖用母豚を淘汰すると言われる。
中国農業農村部によると、大規模と畜場(注2)におけると畜頭数は、2017年3月以降、前年同月を上回って推移している(表6)。特に、2018年1月以降は、前年同月比で1割以上高い水準が続いている。
大規模と畜場におけると畜頭数の増加には、2015年後半以降、大手企業グループが積極的に増頭したことが影響していると考えられる。
(注2)年間2万頭以上の豚を処理すると畜場。豚のと畜頭数の3割程度を占める。
(調査情報部 三原 亙)