需給動向 海外 |
◆米国◆
豚肉価格には報復関税の影響も
米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2018年6月28日に公表した「Quarterly Hogs and Pigs」によると、6月1日時点の豚総飼養頭数は、前年同月比3.4%増の7345万1000頭と過去最高を更新した(表2)。飼料穀物価格が安定して推移したことに加え、と畜処理施設の新設や規模拡大により生産者の意欲が高まっていることなどが増加要因として挙げられる。
繁殖豚は、同3.5%増の632万頭と前年同月から約20万頭増加した。州別に見ると、イリノイ州とサウスダコタ州の増加が大きく、それぞれ同4万頭増加した。中西部のアイオワ州やミネソタ州などに新設されたと畜処理施設への出荷の増加を見込んだ動きとみられている。
肥育豚は、同3.4%増の6713万1000頭となり、すべての重量区分で増加した。さらに、3〜5月の産子数は、前年同期比4.3%増の3316万7000頭となったことから、出荷頭数は、今後も前年を上回って推移すると見込まれている。
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2018年6月の肥育豚価格は、前年同月比6.0%安の100ポンド当たり56.99米ドル(1キログラム当たり141円:1米ドル=112円)となった(図6)。肥育豚頭数の増加などを背景に2月以降前年を下回って推移しているものの、下落幅は豚肉卸売価格よりも小さく、新設や規模拡大したと畜加工施設からの肥育豚需要の増加などが下支えしたとみられている。また、7月の肥育豚価格(速報値)は、同12.5%安の同57.00米ドル(同141円)となった。
USDAは今後の肥育豚価格について、肥育豚頭数の増加に加え、メキシコや中国が米国産豚肉に課した追加関税による需要の減退などにより、2018年第3四半期(7〜9月)は、前年同期比11.9〜15.5%安の同47〜49米ドル(同116〜121円)、第4四半期(10〜12月)は、同17.6〜22.0%安の同35〜37米ドル(同86〜91円)と大幅な下落を見込んでいる。
USDA/ERSによると、2018年6月の豚肉卸売価格は、前年同月比14.2%安の100ポンド当たり83.34米ドル(1キログラム当たり206円)となった(図7)。また、7月(速報値)も、同18.4%安の同84.00米ドル(同207円)と前年を大幅に下回った。
7月の部位別価格(速報値)を見ると、もも肉は、同32.2%安の同53.00米ドル(同131円)と前年を大幅に下回った。生産量の増加を背景に3月以降前年を下回っていた中、もも肉の主要輸出先であるメキシコや中国が米国産豚肉に追加関税を賦課したことも影響した可能性がある。また、ばら肉は、同5.7%安の同204米ドル(同504円)となった。3月以降前年を下回って推移しているものの、価格の下落幅は縮小した。
(調査情報部 渡邊 陽介)