世界の飼料穀物の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○旧ソ連の穀物需給動向



体制変革後、 穀物生産量がほぼ半減

 旧ソ連 (15カ国) の穀物生産量が、 91年のソ連邦の崩壊後、 大幅に減少してい る。 90/91年度には約2億トンあった穀物生産量 (小麦及び粗粒穀物) が、 95/ 96年度には1億1千6百万トンに減少 (▲42%) するとされており、 過半を占め るロシアでも、 同期間に1億1千万トンから6千万トンと半減する (▲45%) と 見通されている。  これは、 新政府による価格自由化政策がもたらした激しい物価上昇により、 肥 料、 エネルギー等の投入資材の価格が上昇し、 その上昇率が農産物の価格上昇率 を大幅に上回ったため、 穀物生産を取り巻く経営環境が著しく悪化したことによ るものである。 この結果、 多くの生産農場で穀物の栽培面積が縮小され、 肥料投 入量の減少により単位当たり収量が低下したこともあって、 大幅な収穫の減少を 招くこととなった。

家畜の整理が進み、 輸入が減少

 ただし、 穀物生産減少の国内への影響は、 家畜の大量とうたに伴う飼料向け需 要の減少によって、 大幅に緩和されている。 90/91年度以降の4年間で、 食料向 けの穀物需要は7千5百万トンから6千7百万トンへと約10%減少したが、 これ に対し飼料向けの需要は1億5千万トンから7千4百万トンへと半分以下に激減 した。 牛、 豚をはじめとする家畜の大量とうたは、 生産システムの崩壊や通貨下 落による輸入コストの急増により生産資材が高騰したことに加え、 流通部門に対 する補助金の廃止によって農家では採算割れとなり、 一方では、 小売価格が急激 に上昇したことから消費が著しく低迷したことに起因している。  また、 飼料向けの需要が激減した結果、 穀物の輸入量も大幅に減少した。 旧ソ 連は、 91/92年度までは年間4千万トンもの穀物を輸入していたが、 95/96年度 の輸入量は、 約1千万トンに低下すると見通されている。

今後の見通し

 旧ソ連における近年の穀物生産の低迷は、 主に社会・経済的な要因に基づくも のである。 計画経済下では、 競争原理が働かない仕組みの中で、 農産物価格は原 則としてコストに一定の利潤を加える方式で決定されていたため、 生産者のコス ト意識は極めて低かった。 また、 エネルギー価格が人為的に国際水準より相当低 く抑えられていたため、 市場経済移行後は、 特にその価格上昇が著しく、 深刻な 生産阻害要因となっている。 さらに、 社会主義政権下の国営・集団農場では、 完 全雇用を維持するために大幅な過剰人員を抱えていた。 経済が低迷する中にあっ て、 このように非効率な農業生産を放置しておくことは困難となりつつあるが、 政府には必要な制度改革や農業テコ入れ (補助金の投入等) を行う財政的な余裕 がない状況である。  また、 より長期的には、 有機肥料投入量の減少に伴う土壌の悪化や、 土壌管理 の低下による土壌流失の進行が懸念されている。 91年の統計によると、 農用地総 計2億1300万haのうち、 約1億2700万haが深刻な土壌流失に見舞われており、 こ の被害面積は毎年40万〜150万haも増加しているとされている。  旧ソ連の穀物輸入は近年減少しているとはいえ、 経済の安定化が進みつつある 反面、 生産回復の見通しが立っておらず、 再び輸入を拡大することも十分に考え られるため、 国際需給への影響という面からこの地域の今後の動向が大いに注目 されている。 (資料:USDA, World Market and Trade 他)
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