96年度価格パッケージ案は現状維持 (EU)



 欧州委員会は、 2月14日、 96年度の農産物価格パッケージ案を公表した。 畜産

関係では、 肉用牛に対する奨励金の一部が見直されたほかは、 支持価格、 生乳生

産クオータともに現状維持となっている。 92年CAP改革の実施期間は95年度で終了

するが、 96年度は、 更なる改革に着手するまでの準備期間となりそうだ。 



 

良好な市場環境を反映し現状維持 −乳製品部門−

 乳製品部門では、 バターおよび脱脂粉乳の介入価格、 生乳クオータ数量とも、 据え置きとなっている。 欧州委員会は、 現在の乳製品市場が均衡を保っているこ とをその理由としている。 しかし一方で、 現在の市場の均衡状態が大規模な補助 (輸出補助、 域内消費補助) に支えられた不安定なもので、 構造的な生産過剰が 覆い隠されているとして、 長期的な価格・クオータ政策の改革のための議論を早 急に開始する必要があることも示唆している。

介入価格は据え置き、 奨励金制度は一部変更 −牛肉部門−

 牛肉部門は、 牛肉の介入価格については据え置きとされたが、 各種奨励金の運 用については以下のような見直しが盛り込まれている。 1) 繁殖雌牛奨励金 (肉牛繁殖経営の所得向上を目的)  単価 (144. 9ECU/頭) は据え置き。 旧東ドイツ地域で認められていた対象牛 の定義に関する例外規定は廃止 (2) についても同様)。 2) 雄牛特別奨励金 (肥育牛経営の所得向上を目的)  去勢牛については、 単価 (108. 9ECU/頭) は据え置き。 従来通り生涯2回の 受給が可能。 雄牛については、 2回目の支払いを廃止し、 生涯1回だけの受給 とする。 これに伴い、 単価を14%引き上げ (123. 9ECU/頭)。 3) 季節性是正奨励金 (と畜の季節的な偏りの是正を目的)  単価は据え置き。 9〜11月の去勢牛と畜頭数が年間と畜頭数の 「40%以上」 と なる地域という季節性要件は、 「38%以上」 に引き下げられる。 さらに、 去勢 牛の生産が6割を超える地域では、 前述の季節性要件 (38%) を満たさなくて も、 基本奨励金単価の6割を受給できることとなる。  これは、 本奨励金の対象地域であるアイルランドおよび北アイルランドで、 と 畜シーズンの平準化により、 38%の要件が満たせなくなる可能性が高いことか ら、 これを救済するための措置である。

5月中には実質的な合意へ

 その他、 豚肉、 羊肉については、 現状維持としている。 また、 畜産物以外では、 穀物の基本転作割合を一律18%とすることなどが含まれているが、 いずれも、 わ ずかな調整にとどまっている。  今後、 農産物価格パッケージは、 農相理事会と欧州議会での審議を経て、 新農 産物市場年度が始まる7月までに決定されなければならないが、 深刻な対立点が 見当たらないことから5月中には実質的な合意に達するとの見方が強い。
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