2005年の EU 酪農見通し (EU)



IDBが酪農見通しを策定

 アイルランド酪農ボード (IDB) は、 このほど、 2005年までのEU酪農の見通し を策定し、 発表した。 これによると、 2005年には、 EU (12カ国) の乳牛飼養頭数 は、 93年の2, 160万頭から、 1, 690万頭に減少し、 また酪農家戸数は、 101万戸 から51万戸に減少するとされている。

クオータ制度の動向と2000年以降の世界貿易体制がカギ

 IDBは、 この見通しの策定に当たり、 2000年までおよび2000年から2005年まで のEUの酪農状況について、 それぞれ以下のようにベースを仮定している。 [2000年まで] 1 80年代後半に行われた生乳クオータの削減は行われない。 2 一頭当たりの泌乳量は今までと同様に年々増加してゆく。 3 多くの小規模酪農家 (飼養頭数29頭以下) が、 生乳クオータを他者へ販売し 生乳生産から撤退することから、 酪農家戸数の減少率は、 乳牛飼養頭数の減少 率の2倍以上の高率になる。 [2000年以降2005年まで] 1 新たな世界貿易協定が結ばれて、 関税障壁が一層削減され、 生乳価格の引き 下げ圧力が高まる。 2 生乳、 乳製品の支持価格が引き下げられ、 生乳生産者への直接所得補償制度 が導入される。 なお、 クオータ制度は、 少なくとも、 2005年までは維持される。 3 中・東欧諸国のEU加盟が進展する。  IDBは、 これらのベースを仮定した結果、 2005年までのEUの乳牛飼養頭数、 酪 農家戸数については、 以下のとおり見通している。

EUの酪農業界に一石

 しかしながら、 IDBが見通しのベースとして仮定した今後のクオータ制度の運 用や変更、 中・東欧諸国のEU加盟問題などは、 EU各国の思惑が複雑に絡み合って いるところであり、 示されたとおりの展開となるかどうかは予測しがたい。 また、 UR協定後の貿易秩序を定める2000年以降の新しい貿易協定について、 見通すこ とは、 一層困難である。 したがって、 IDBが今回策定した見通しは、 そうした不 確定要素が大きい中で、 今後のEUの酪農業界に一石を投じたものと解されよう。
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