回復の兆しが見える旧東ドイツ地域農業 (ドイツ)



 90年10月のドイツ統合以来、 旧東ドイツ地域では農業振興対策が積極的に実施

されたが、 農業生産は大きく低下してきた。 昨今畜産部門では、 酪農部門がよう

やく回復基調に転じつつあるが、 養豚部門で依然として低迷している。 ただし、 

同地域では、 一農場当たりの経営規模が格段に大きいことから、 全体的に回復が

軌道に乗れば、 今後のドイツ農業に大きな影響を及ぼすとみられる。 



 

農業再建に向け、 さまざまな支援策を実施

 旧東ドイツ地域では、 統合以来、 農家に対する補助金 (労働時間などに応じた 所得補償的補助) や農業経営を改善するための資金供与 (低利融資、 投資補助) など、 合計172億マルク (約1兆2, 600億円) にのぼる助成措置が実施されてきた。 さらに、 肉牛奨励金や生乳生産クオータなどについても、 受給資格要件の緩和や 追加割当てなどの特別措置が認められた (なお、 これらの支援策は経過的な措置 であり、 今後数年以内に段階的に廃止される見込みである)。

酪農部門は、 順調に回復の見込み

 酪農部門では、 統合前の水準に比べて、 乳牛頭数は4割程度に落ち込んでいる が、 手厚い支援策が奏功して、 1頭当たり乳量の向上などにより生乳生産量は7 割程度までに回復している。 統合時に、 100kg当たり10マルク以上あった東西の 乳価格差 (西高・東低) は、 現在では約2マルクにまで縮小している。 さらに、 一頭当たりの乳量が引き続き増加すると見込まれることから、 今後、 同地域の酪 農は順調に回復するとみられる。  しかしながら、 同地域の乳業メーカーの生乳処理能力は依然として充分でない ため、 95年には、 約77万トン (14%) が旧西ドイツ地域へ移出された。

養豚は依然として低迷

 これに対して、 肉畜部門の主力である肉豚生産は、 以下のような理由から、 依 然として急速な頭数減少が続いており、 現在も不振からの回復の兆しが見えてい ない。 1 経営面積の大きい同地域では、 休耕補償金を伴う穀物生産の方が魅力が大き いため、 養豚部門への経営資源の投入が進まないこと。 2 環境対策や動物愛護に関する規制が大きな制約となって、 新規参入が妨げら れていること。 3 既存の大規模養豚施設が、 経営不振により相次いで閉鎖されていること。

経営の効率化も生産回復の要因

 旧東ドイツ地域では、 酪農部門以外でも、 一部で生産回復の兆候が見え始めて いる。 こうした兆候は、 政策的なテコ入れによるものばかりでなく、 非効率な経 営方式に、 体制変革を通じて競争原理が持ち込まれ、 効率化が進んだことに負う ところが大である。  社会主義時代の集団農場は協同組合組織に変わり、 また、 生産現場の合理化が 進んだ結果、 農業人口は約5分の1に激減した。 こうした効率化の進展に加えて、 集団農場時代の大型の経営規模が引き継がれていることを考慮すると、 旧東ドイ ツ地域の農業発展が、 ドイツ農業全体に及ぼす影響は、 極めて大きいとみられる。
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