シンガポールの採卵養鶏



 鶏卵需要の約3分の2をマレーシアからの輸入に依存するシンガポールでは、 

養鶏企業が、 新聞広告等を通じて、 新鮮さと安全性を強調することにより、 国産

鶏卵の消費促進を図っているが、 自由競争の下で、 厳しい国際競争を余儀なくさ

れている。 



鶏卵需給の現状

 シンガポールの鶏卵需要は、 1日当たり300万個といわれる。 そのうち200万個 が隣接するマレーシアからの輸入であり、 隣接するジョホール州やマラッカ州の 大型養鶏場から、 産卵後2〜3日かけてシンガポールに搬入されてくる。 残りを 7社ほどある国内養鶏場が供給しているが、 輸入品に対しては厳しい競争を強い られている。 マレーシアの方が、 用地コストが低く、 かつ労賃も安いことなどの 理由から、 経営的に有利である。 一方、 シンガポールでは、 土地は20年間の貸与 のうえ、 5年ごとに賃貸料の見直しが行われる。 また、 政府の支援は技術的なも のに限られている。

望まれる検査体制の整備

 シンガポール政府当局 (第1次産品局) は、 食品の安全性確保に大きな関心を 払っている。 このため、 国内養鶏場では定期的に、 また、 輸入鶏肉に対しては抽 出により残留抗生物質やサルモネラ感染に関する検査を行っている。 シンガポー ル最大の養鶏企業は、 自社の生産物は完全に把握できるが、 輸入品は通関後、 生 産元が分からなくなるとして、 検査体制の強化を主張している。 同社の生産する 鶏卵には、 会社名と、 生産後1週間過ぎたものを店頭から回収する目的で生産日 が記号で印刷されている。 また、 飼料工場も保有している同社は、 エサの配合を 工夫して、 低コレステロール卵の生産も行っている。

観光需要に期待

 日本の淡路島に近い面積のシンガポールでは、 未加工農産物の国内生産はあま り期待されていない。 事実、 大部分の農産物が輸入である。 そのような環境下で は、 高度な経営努力が要求されるため、 採卵養鶏は極めて厳しい状況下にある。 冒頭の鶏卵消費促進キャンペーンに必要な資金も、 7社の養鶏企業が保有羽数に 基づいて共同で拠出したものである。 なお、 シンガポール企業にとって幸いなの は、 観光客が多いため、 ホテルやレストラン向け需要に、 品質面でアピールする ことができることである。
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