フィリピンの養豚



 フィリピンは、 東南アジア諸国の中では、 豚肉生産量の多い国である。 フィリ

ピンの豚肉生産は着実に伸びてきており、 経済発展に伴う購買力の向上が最大の

誘因であると思われる。 本稿はフィリピン統計協会が出版した 「Philippine Maj

or Hog/Sow/Fattener Suppliers」 1995年版 (94年12月から95年2月にかけて

調査) から全国の約2,500の養豚経営体中、飼育母豚および肥育豚の頭数上位643

経営体を選んで検討したものである。 これら養豚場の中でも特に大型のものは、 

「Pure Food」、 「RFM」、 「Sun Miguel」 などといった加工食品や飲料事業などを経

営する複合企業の傘下に置かれているといわれるが、 この資料では一部を除きグ

ループや養豚場間の関係は明らかではない。 



 

首都マニラを取りまく養豚地域

 フィリピンの主要養豚地域は、 首都マニラ周辺のブラカン、 バタンガス、 リザ ル、 ラグナ州といった地域であり、 人口約900万人といわれる首都の需要を満た すべく立地している。

この10年で過半の養豚場が設立

 養豚経営の設立時期についてみると、 記載のある541経営体の過半数が86年以 降となっており、 養豚産業の拡大が、 比較的近年進んだことをうかがうことがで きる。 なお、 最も古いのは45年の設立である。

母豚飼育頭数の分布

 記載のある569経営体の規模別分布をみると、 2千頭を越える経営体が12あり、 最大のものは1万1千頭の母豚を飼育している。 ────────────────────────── 規模別 (頭) 50〜100 101〜200 201〜1000 1001以上 分 布 (%)  43    25    27     5 ──────────────────────────

肥育豚飼育頭数の分布

 記載のある508経営体のうち1万頭を越えるのは14経営である。 このうちの最大 のものは1万8千頭を常時飼育している。 ───────────────────────────── 規模別 (頭) 101〜1000 1001〜2000 2001〜10000 10001以上 分 布 (%)   59     19     19      3 ─────────────────────────────

月間出荷頭数

 記載のある533経営体のうち、 5千頭を越えるのは3経営体で、 最大のものは 毎月9千頭を出荷している。 ────────────────────────── 規模別 (頭) 100以下 101〜200 201〜1000 1001以上 分 布 (%)  49    22    24      5 ──────────────────────────  以上に示したように、 フィリピンにも、 日本の基準からみても超大型といって よい養豚経営があり、 その幾つかが繁殖手段として人工受精 (61経営) を採用し ている。 種豚については、 「GP」 (64経営)、 「GGP」 (19経営) を輸入しているとの 報告が多く、 中には米国産の銘柄が記載されてしている例もある。 歴史的な経緯 から関係のより深い米国産の銘柄豚がフィリピンに導入されているものと考えら れる。  なお、 フィリピン国内では、 現在でももたびたび養豚場からの口蹄疫発生が伝 えられており、 わが国への豚肉輸出実現の可能性はない。 また、 ASEAN域内では 関税引下げを伴う貿易自由化が進められているのであるが、 フィリピンは豚肉お よび生体豚を関税引下げ適用除外 (センシティブ) 品目に指定する意向と伝えら れており、 同国政府の養豚に対する保護姿勢が明かとなりつつある。 一方で、 同 国は、 順調な経済発展が伝えられており、 豚肉をはじめとした畜産物の需要の拡 大が予想され、 養豚はここしばらくは順調な発展を続けるものと考えられる。 こ の点で日本側の技術援助等対応の余地は大きく、 かつ、 期待も大きいようである。
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