ロシア向け鶏肉輸出、 懸念を拭い切れず (米国)



衛生問題を理由に輸入禁止を示唆

 ロシア農務省は、 先月、 米国における家きん肉の衛生検査体制が不十分である として、 この問題の解決が図られない場合、 今年3月19日以降、 米国産家きん肉 の輸入を禁止するとの方針を明らかにした。  この中で、 ロシア農務省のアビロフ獣医局長は、 ロシアの衛生基準は一般的な 国際基準の範囲内であるとした上で、 品質の悪い米国産家きん肉からロシアの消 費者を守るためには、 断固とした措置をとらざるを得ないとの考え方を示した。

米国側は非関税貿易障壁として反発

 しかしながら、 米国では、 農務省をはじめとする家きん肉産業関係者が、 今回 のロシアの措置は、 科学的根拠のない、 明らかな非関税貿易障壁であると強く反 発した。  最近、 ロシアでは、 食料輸入の急増を懸念して、 国内生産を強化すべきである との声が高まっている。 米国は、 ロシア産の家きん肉が、 品質と価格の両面で米 国産に対抗できないことから、 政治的手法により輸入を阻止する策に出たのでは ないかとみている。 なお、 ロシアは、 今年2月1日から、 家きん肉の輸入関税を 25%から30%に引き上げている。

ロシアは米国産ブロイラーの最大輸出市場

 米国は、 ロシアが最大のブロイラー輸出市場であるという事情から、 この輸入 禁止問題を非常に重視した。 米国鶏肉鶏卵輸出協会によると、 95年のロシア向け ブロイラー輸出量は60万トンを超え、 輸出量全体に占めるシェアは37%に達した とされている。  また、 今回のロシアの禁止措置によって、 米国内のブロイラー市場が低迷した 場合には、 競合する牛肉や豚肉などの価格にも少なからぬ影響が及ぶことが予想 されたため、 食肉産業全体がこの問題に懸念を表明していた。

ロ首相が禁止措置を実施しない旨を伝達

 その後、 両国の政府間で、 問題の解決に向けて交渉が行われていたが、 3月5 日、 米国のゴア副大統領は、 ロシアのチェルノムイルジン首相が3月19日からの 輸入禁止措置を実施しないと伝えてきたことを明らかにした。  米国側は、 これをひとまず歓迎したものの、 この伝達が口頭でなされたもので あることから、 文書で正式に処理されるまでには、 注視を続ける必要があるとし ている。 なお、 今回の衛生問題については、 今後も引き続き両国間の協議が行わ れることとなっており、 米国にとっては、 ロシア向け家きん肉輸出に対する懸念 が、 完全に払拭されたわけではない。
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