豪州の牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○最近の牛肉輸出動向


● 輸出は春以降減少傾向を強める


 豪州の牛肉輸出が低迷傾向を強めている。 今年の4月までの累計輸出量は23万 2千トンで、 前年同期を3.8%上回っていたものの、 7月までの累計では41万1 千トンと、 逆に、 前年同期を3.5%下回る結果となった。  輸出の7割を占める日本及び米国向けについても、 日本向けは17万9千トンで、 前年同期比2.4%減、 米国向けに至っては10万1千トンと、 20.6%も下回ってお り、 豪州の牛肉産業にとっての厳しい状況がうかがえる。

● アジア市場の開拓に活路


 現在、 豪州は、 日本、 米国等の伝統的な市場に対する輸出の減少が大きいこと から、 新たな市場開拓の取り組みを強化している。 フィリピンやインドネシアを はじめとした東南アジアへの輸出は、 それらの国々の国民所得の向上を追い風と して増加しており、 7月までの累計で2万7千トンと、 前年同期を34.8%と大幅 に上回った。

● 新品質評価システムにより対日マーケティングの強化を狙う


 そうした中、 豪州食肉畜産公社 (AMLC) は、 先般、 最大の輸出マーケットであ るわが国において、 販売促進手段の一環として、 牛肉の自主品質評価制度 (VSS: Voluntary Standards System) のセミナーを開催した。 当該セミナーでは、 VSS の概要が説明された他、 豪州食肉畜産統一基準局 (AUS−MEAT) 職員による品質 評価のデモンストレーションが行われた。  豪州には、 従来から、 AUS−MEATによるチラーアセスメントと呼ばれる、 日本 向けが主力の穀物肥育牛肉の脂肪交雑、 肉色及び脂肪色に関する判定基準がある ものの、 これは、 わが国や米国のように統一された総合評価基準とはなってはい ない。 このため、 個々の要素を各々ばらばらに評価する同方式が複雑で判りにく いという声が多かった。 そこで、 AMH、 スモーガン、 ギルバートソン、 及びG&Kオ コーナーの4社は、 ユーザーが求める判り易い 「自主的な」 評価基準を作るべく 準備を進め、 チラーアセスメントの判定基準を組み合わせた4等級 (穀物肥育タ イプ2種、 牧草肥育タイプ2種) のカテゴリーを設定した。 これがVSSである。 VSSの利点は、 ユーザーがいずれのブランドの商品を選んでも、 等級を指定すれ ば常に一定の品質の牛肉を入手できるというものである。 一昨年の11月に、 VSS の試行輸出を始めると同時に市場調査を行ったところ、 「日本のマーケットにマ ッチしている」、 「システムが判り易く、 注文し易い」、 「豪州産牛肉の品質向上に 役立つ」 といった反響が寄せられたという。 これらの意見や味覚テストを参考に して、 穀物肥育タイプが1種追加されると共に、 参加企業も増え、 現在では9社 を数えるところとなっている。  豪州は、 世界最大の牛肉輸出国として一貫した品質評価システムを構築する必 要があることを認識しており、 このVSSもAUS−MEATの指導の下に運営されている。 すなわち、 AUS−MEATはVSSのための基準マニュアルを作り、 VSS参加工場におい て、 製品に一貫性を持たせるため、 監査することになっている。  上記の5等級に使用されるマークは、 AMLC認定マークとして、 豪州とわが国の 両国において登録されており、 今後、 AMLCはこのシステムをさらに推進していく ものと思われるが、 この新たな試みによって、 停滞する対日輸出に歯止めがかけ られるか、 注目されるところである。
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