EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○脱脂粉乳の介入在庫量が増加


● 介入在庫量、 前年同月に比べ3倍以上の増加


 EUの脱脂粉乳の介入在庫量が増加傾向を示している。 脱脂粉乳の介入在庫量は、 95年には需給の引き締まりによる高価格を反映して減少傾向で推移し、 96年3月 には約8千トンにまで減少した。 しかしながら、 96年4月以降、 アイルランド、 イギリス、 ドイツなどを中心に買入 (205.52ECU/100キログラム;約29,000円) が実施され、 7月には前年同月に比べ3倍以上増加の約7万3千トンに達した。 これは、 94年12月の介入在庫量とほぼ、 同じ水準である。

● 域内飼料向け需要の減少等が原因


 脱脂粉乳の介入在庫量が増加している原因は、 域内の飼料向け需要の減少と、 最近の国際需給の緩和による域外向け輸出量の減少により、 域内の脱脂粉乳価格 が低迷していることによるものである。  脱脂粉乳の指標価格の一つであるドイツ工場渡し価格は、 8月には、 383マル ク/100キログラム (約280円/キログラム) と前年同月に比べ、 4.5%の値下が りとなった。  現在のところ、 価格が回復する材料は乏しい。 高い比重を占めている、 子牛用 飼料向けの需要は、 牛海綿状脳症 (BSE) 対策の一環である、 子牛のと畜計画の 進行と、 現在の牛肉価格の低迷による肉牛生産者の生産意欲の減退により、 減少 傾向を示している。  また、 脱脂粉乳の国際需給は引き続き緩和しており、 8月の国際価格は、 前年 同月に比べ20.5%低下して1,650米ドル/トン (約18万1,000円) と、 96年に入っ てからは、 8カ月連続の値下がりとなった。  さらに、 このような状況下で、 95年度から実施されているガット・ウルグアイ ラウンド合意による最低輸入量 (ミニマム・アクセス) 約束に基づいた、 中・東 欧諸国からの脱脂粉乳の輸入が、 域内の脱脂粉乳価格の低迷に、 追い打ちをかけ ている。

● 域内市場は、 今後も低迷の見込み


 EUでは、 脱脂粉乳の買入は、 3月から8月までの6カ月間に期間が限定され、 かつ買入上限数量は、 10万8千トンとなっている。 今年は買入数量が、 上限を超 過することが予想されており、 買入が停止された後の措置については民間在庫補 助の実施などが検討されている。  このような中で、 EU委員会は、 8月14日付けで、 脱脂粉乳の輸出補助金を55EC U/100キログラム (約7,800円) から63ECU/100キログラム (約8,900円) へと15 %引き上げた。 これは、 EU委員会が、 さらに増加が予想される介入買入に要する 財政負担を考慮した結果、 少しでも輸出に仕向けることで財政負担を減らすとと もに、 域内の市況へのテコ入れを狙ったものと考えられる。  しかしながら、 関係者の間では、 今回の輸出補助金の引き上げは対応が遅く、 現在の国際需給からみると、 域内の脱脂粉乳の市況を回復させる結果とはならな いとの見方が強い。 現状では、 国内需要の増加の目算が立たないことから、 国際 市場の回復による域外向け輸出の増加がみられない限り、 EUの脱脂粉乳市場は、 当分の間、 厳しい状態が続くものと思われる。
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