EUの豚肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇

○豚飼養頭数、 引き続き減少


● 96年4月期の総飼養頭数は0.6%の減少


 EU統計局発表の96年4月期の豚センサスによると、 EU15カ国の豚総飼養頭数は 前年同期より0.6%減少し、 約1億1,596万頭となった。 今回のセンサスは、 96年 に入ってから記録的な高水準で推移している豚肉価格が、 飼養動向にどの程度反 映されるのか注目されていたが、 前年同期よりの減少という意外な結果となった。  EU15カ国全体での豚飼養頭数は、 93年後半から94年前半までの価格低迷を契機 として、 長期的な減少傾向を示しており、 94年4月期以降、 連続して前年同期を 下回って推移していた。  しかし、 供給量の減少に加え、 牛海綿状脳症 (BSE) を背景とした豚肉需要の 増加により、 豚肉価格は96年に入ってから高水準で推移していたことから、 飼養 頭数が上向くとの観測もあった。  なお、 今回のセンサスで、 総飼養頭数だけではなく、 繁殖用雌豚頭数も前年同 期より1. 1%減少したことは、 豚肉価格の上昇が、 まだ、 EU全体として生産者の 拡大意欲にはつながっていないことを示している。

● 豚肉価格の高騰を背景に今後は増加の見込み


 EU統計局の見通しによると、 飼養頭数は、 97年第1四半期まで減少傾向が続く とされている。 しかし、 業界関係者の間では、 BSE問題による牛肉消費の減少が一向に回復せず、 豚肉消費の増加が中・長期的にも確実であり、 豚肉価格が今後も堅調に推移する とみられることから、 12月までには、 繁殖用雌豚頭数が増加に転じるとの見方が 強い。  なお、 今回センサスと併せて発表されたと畜見通しによると、 96年のEU全体で のと畜頭数は、 前年を1.2%下回る1億8,579万頭になるとされている。

● 生産の縮小が続くドイツ、 環境規制の厳しいオランダ


 主要国別の動向では、 ドイツの飼養頭数の減少が目立った。 同国の総飼養頭数 は、 前年同期より3.9%減少し、 繁殖用雌豚頭数も4%減少するなど、 加盟国中 最も大きな減少幅を記録した。 ドイツは、 BSE問題を背景とした豚肉価格の上昇 が最も顕著であり、 豚肉市況が域内でも比較的高水準にあるだけに、 この減少は、 やや意外で、 今後の動向が注目される。 なお、 この減少の要因は、 近年の価格低 迷や、 病気の流行が生産部門に予想外に大きな打撃を与えたためとみられている。  また、 オランダでは、 繁殖雌豚頭数が前年同期より3.5%、 うち未経産豚は13〜 14%と大きく減少しており、 同国の環境問題の深刻さと、 規制の厳しさを示す結 果となった。

● フランス、 デンマークは増加傾向


 一方、 フランスは総飼養頭数が0.2%、 繁殖用雌豚頭数が3.5%、 それぞれ前年 同期より増加した。 繁殖用雌豚の中でも未経産豚が3%の増加を示していること から、 これは、 同国政府による養豚経営改善策を反映したものとみられ、 今後も、 さらに拡大傾向にあることを示している。  また、 域内の対日輸出最大手のデンマークでは、 総飼養頭数が前年同期より1. 2%、 繁殖用雌豚頭数が0.6%、 それぞれ減少したものの、 繁殖用未経産豚が2.6 %と増加しており、 好調な域内向け輸出を背景に、 今後は増加に転じるものとみ られている。
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