BSEの母子感染を示唆する研究報告を発表 (イギリス)



● 89年からの実験の中間報告


 イギリス政府は、 8月1日に牛海綿状脳症 (BSE) の母子感染の可能性に関す る研究報告を発表した。  これは、 イギリス中央獣医研究所で89年から行われていた実験の中間報告とい う形で取りまとめられたもので、 反すう動物飼料への肉骨粉の使用禁止措置が導 入 (88年7月) された前後に生まれた牛の中から、 BSEに罹患した牛と、 罹患し なかったもののBSE罹患牛と同じ飼料を摂取できる環境下にいた牛を選別し、 そ れぞれの牛群の産子の罹患状況を調べたものである。  これまで、 7歳齢に達した産子計546頭がと畜、 検査され、 BSEに罹患した牛の 産子273頭中42頭、 対照群の産子273頭中13頭がBSEに羅患したと診断されている。

● 野外では1%の確立で伝播


 この報告を受けて、 イギリスのBSE諮問委員会は、 (1)実験によると母子感染の 危険性はおおむね10%程度 (信頼限界5%〜15%) であるが、 母子感染は母牛の BSEの潜伏期間の末期に発生する傾向があることから野外の通常の条件下でのこ の割合はおおむね1%程度と推定される、 (2)母子感染の経路 (子宮内感染、 出 生時の感染等) については不明であるが、 生乳を介しての感染については、 どの ような伝達性海綿状脳症でも証明されていないことから、 生乳に関してこれまで の勧告を変更する必要は認められない、 (3)水平感染を示唆する知見は認められ ていない、 (4)BSEは、 母子感染によって永続する性格のものではなく、 現行の防 疫措置の下でいずれは撲滅されると考えられるが、 選択的とう汰措置 (BSE罹患 牛と同時期に同農場で生まれた牛のとう汰) の導入に当たっては、 母子感染の要 素を考慮すべきである、 といった勧告を発表した。

● 禁輸解除に新たな課題


 これに対して、 イギリス政府は、 既に母子感染の可能性を考慮に入れてBSE対 策を実施してきたところであり、 また、 BSEの主たる伝播源は、 飼料であること に変わりがないことから、 現段階で新たに措置を講ずる必要はないとしている。  しかし一方で、 イギリス産牛関連製品に対する禁輸措置の段階的解除に当たっ ての前提条件として、 EU規定により法制化が義務付けられた選択的とう汰措置は、 BSEの伝播源を飼料と特定した上で対策が検討されてきたことから、 今回の実験 結果の発表は、 今後の禁輸解除にも少なからぬ影響を与える可能性がある。  既に、 EUのフィシュラー農業委員は、 イギリス政府に対し、 選択的とう汰措置 の再考を求めたが、 EU委員会としての防疫措置などの検討は、 9月に入ってから 行われる見通しである。
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