牛肉産業への 「O−157」 の影響を懸念 (豪州)



● 日本への最大の牛肉供給国


 病原性大腸菌 「O−157」 による集団食中毒問題の発生などにより、 国内で牛肉 消費の停滞がみられるが、 わが国への最大の牛肉供給国である豪州の牛肉産業に も、 既にその影響が及びつつあるとみられる。  現時点では、 「O−157」 問題に限って、 豪州の牛肉産業に対する直接的な影響 を分析することは困難であるが、 現地報道によると、 対日輸出の比重が大きいパ ッカーの中には、 この問題が深刻さを増し始めた7月以降、 1日当たりのと畜頭 数や操業日数の削減を強いられているところがあると伝えられている。  実際の生産状況をみると、 輸出向け牛肉生産の中心であるクイーンズランド州 では、 6〜7月にはほぼ週5万頭の水準であったと畜頭数が、 8月最終週には4 万3千頭となり、 前年の同時期と比較して約3割の減少を示した。 また、 ニュー サウスウェールズ州でも、 輸出向けのと畜頭数は、 6月末までは週3万頭強の水 準を維持してきたが、 7月には約2割減の2万5千頭台となり、 さらに、 8月中 旬には2万3千頭前後へと低下した。

● 8月の対日輸出量は3割減


 豪州食肉畜産公社 (AMLC) によると、 対日牛肉輸出量 (船積数量ベース) は、 7月には前年同月比10%減の25,845トンであったが、 8月には同36%減の18,841 トンとなった。  AMLCは、 「O−157」 問題が、 日本市場に大きな不安材料をもたらしたとしてい るが、 この見解の背景には、 7月末から8月にかけて、 豪州の輸出業者の多くが、 「O−157」 により日本からの引き合いが減少したと報告したことがある。 また、 日本からの需要の減退を裏づける要素としては、 わが国での輸入牛肉の主要なユ ーザーである外食産業が自ら行っている動向調査において、 今年7月の売り上げ が、 94年1月の調査開始以来、 最大の減少を示した (前年同月比4%減) ことが 挙げられる。 この調査の中で、 特に、 売り上げに対する 「O−157」 の影響の有無 を問う質問に対しては、 全体の7割以上の企業が 「あった」 と答えている。  豪州の牛肉産業は、 すでに、 昨年来の日本市場における米国産牛肉との競争激 化や、 今年春の牛海綿状脳症 (BSE) 問題の影響などにより、 厳しい状況に置か れてきた。 そうした中で、 今回の 「O−157」 集団食中毒の発生は、 状況の悪化に 拍車をかけるものとなっている。  AMLCは、 現在、 日本で大規模な消費拡大キャンペーンを展開中であり、 豪州産 牛肉の安全性と質の高さのアピールに努めているが、 豪州の輸出業者は、 このキ ャンペーンが、 「O−157」 による消費者の不安を解消するきっかけとなることを 期待している。
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