険しくなったオーナー酪農家への道 (NZ)



● 農場取得の 「夢」 が酪農発展を支える


 ニュージーランドの酪農経営には、 農場の所有権は持たないが、 農場オーナー に代わって搾乳などの作業を行い、 その対価として、 一定の割合で農場収入の分 配 (シェア) を受け取る 「シェアミルキング」 という制度があり、 これによって、 手持ちの資金が乏しくとも、 経営意欲のある者が、 酪農に新規参入することが可 能となっている。  また、 こうしたシェアミルカーの多くは、 技術と資本を蓄積した後に、 農場を 取得してオーナー酪農家となることを目指して努力しており、 ニュージーランド の酪農の発展を支える大きな柱となっている。

● 95年の農場価格は最安値時の2倍以上


 ところが、 家畜改良公社の最近の調査によると、 調査対象となったシェアミル カーの98%が、 農場価格の上昇などから、 5年前と比較して農場の取得が困難に なったと考えている。  95年の農場価格は、 1ヘクタール当たり約13,500NZドル (約86万円) であり、 近年のピークであった82〜84年の水準 (95年をベースとしたインフレ調整後で約 13,300NZドル、 約85万円) をやや上回っている。 また、 底値であった87〜89年の 6,000NZドル台前半 (約38万円〜40万円) と比較すれば、 2倍以上の価格となっ ている。

● 農場価格の高騰に見合わない乳価上昇


 農場価格は、 経済原則に従って、 乳価が高い時期には上昇し、 逆に乳価が低い 時には低下している。 95年の農場価格が高騰した背景には、 95年秋から年末にか けて、 国際乳製品市況が非常に好調であったことが挙げられる。 95/96年度 (6 月〜5月) の生産者乳価は、 ここ数年で最高の4.00NZドル (乳固形分1キロ当た り、 以下同じ) を記録した。  しかしながら、 農場価格が95年とほぼ並ぶ高騰ぶりをみせた82〜84年当時、 生 産者乳価は、 実質4.82NZドル (82/83年度) に達していた。 つまり、 95年と82〜 84年を比較すると、 農場価格の水準はほぼ同等なのに対して、 乳価水準には大き な開きがある。 このことが、 今回、 農場の取得を困難にしているものとみられる。

● オーナー酪農家の経営にも悪影響


 調査対象となったシェアミルカーの85%は、 最終目標であるオーナー酪農家に なるためには、 自ら資金を貯めて農場を取得しなければならないと答えている。 このため、 現在のような農場価格の高騰は、 自力で農場の取得を目指すシェアミ ルカーの意欲をそぐ恐れがある。 また、 新規オーナーや規模拡大を目指すオーナ ーにとっても、 農場価格の高騰は過重な負債をもたらし、 経営の圧迫材料となる ことが懸念される。  拡大しつつある酪農生産の抑制材料となりかねないこの問題に、 ニュージーラ ンド酪農界がどのように対処していくのか注目される。
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