96年上半期の貿易収支はわずかな黒字 (中国)



● 第1四半期は赤字に転落


 中国税関当局が発表した貿易統計によると、 96年上半期の中国の貿易収支は、 輸出が前年同期比8.2%減の640.6億ドル、 輸入が同11.6%増の631.8億ドルとな り、 差し引き8.8億ドル (約950億円) の黒字を記録した。  中国の貿易収支は、 改革開放による経済発展がもたらした輸出好調を反映して、 94年には53億ドル、 95年には167億ドルの大幅な黒字を計上した。 しかしながら、 今年の第1四半期には、 輸出が前年同期を割り込む一方で、 輸入が急増したため、 一転して11.5億ドル (約1,200億円) の赤字となった。  一方、 外貨準備高については、 今年3月末の時点で808億ドル (約8兆5千億 円) と高水準であったことから、 直ちに問題が生じることはなかったが、 第2四 半期に入ってからも貿易収支の赤字傾向が続いたため、 その動向は大いに注目を 集めた。 しかしながら、 その後は、 月間輸出額の減少幅が徐々に縮小する一方で、 輸入額の伸びは逆に鈍化したことから、 結果的には、 上半期の貿易収支はわずか らながら黒字となった。

● 農業関連では穀物輸入が大幅に減少


 上半期の輸入についてみると、 旺盛な産業需要を背景に、 工業原料やエネルギ ー資源の輸入額が依然として大きくなっている。 農業関連では、 政府による農業 てこ入れが強力に推進される中で、 化学肥料が輸入額の上位にランクされた。  これに対し、 第1四半期には前年同期比で72.3%の大幅な増加となった穀物類 (粉製品も含む) の輸入額は、 第2四半期以降、 トウモロコシ輸入量の急減に伴 って大幅に縮小し、 上半期全体では同29.3%の増加にとどまった (14億9千万ド ル、 633万トン)。  一方、 輸出についてみると、 伝統的な主力輸出品目であり、 貿易黒字の立役者 となってきた繊維製品が玩具などが、 全般的に精彩を欠いている。 また、 農産物 では、 トウモロコシの輸出額が前年同期比74.3%減となったほか、 95年にはそれ ぞれ前年比62.1%増、 91.1%増という大幅な伸びを示した鶏肉や豚肉の輸出額も、 96年上半期にはそれぞれ前年同期を7.4%、 6.6%下回った。

● 下半期は貿易黒字が定着か


 対外貿易経済合作部 (貿易省に相当) は、 96年上半期に輸出が停滞した原因と して、 輸出品に対する増値税 (付加価値税) の還付率の引き下げにより輸出コス トが上昇し、 輸出競争力が低下したことなどを指摘している。 しかしながら、 96 年上半期の輸出額の減少は一時的な現象で、 下半期には輸出状況は好転するとの 見通しを示している。  この見通しを裏づけるかのごとく、 その後、 7月の統計では、 輸出額が今年初 めて、 わずかながら前年同月を上回った (1.2%増)。 また、 輸入額は、 前年同月 を引き続き上回ったものの、 その伸び率はさらに鈍化し (1.6%増)、 この結果、 1−7月期の貿易黒字は20億ドル (約2,160億円) に拡大した。  また、 96年の国の計画では、 輸出入総額2,810億ドル (約30兆3千億円) の達 成が目標として掲げられている。 96年上半期の輸出入総額は、 前年同期比0.6% の微増 (1,272億ドル) にとどまったが、 同部は、 今年の経済が安定成長を続け ていることから、 輸出入とも拡大が期待でき、 目標の達成は可能であるとしてい る。  なお、 中国では、 財政赤字が大きい一方で、 内陸部や農業投資・開発向けの資 金需要が強い。 従って、 貿易収支の黒字を保つことは、 内陸部や農業を発展させ る上での重要な政策の一つとなっている。
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