北東部地域の飲用乳価設定に関する協定締結を承認 (米国)



● 96年農業法の新しい規定


 96年農業法では、 小規模酪農家が多く、 乳価が低迷した場合の影響が大きい北 東部地域 (コネチカット州、 メイン州、 マサチューセッツ州、 ニューハンプシャ ー州、 ロードアイランド州、 バーモント州) では、 農務長官が公共的利益がある と判断した場合に限り、 飲用乳価設定に関する協定を締結することができると規 定している。  今回、 農務長官は、 この協定の締結を認めるとの声明を発表した。 今後、 この 地域では、 飲用品質牛乳の最低取引価格を定めるミルク・マーケティング・オー ダー制度の改革・再編が実施されるまでの間、 乳価の設定について柔軟な取扱い が行われることになる。  農務長官は、 協定の締結を認める理由として、 北東部6州の議会が協定締結の 議決を行い、 知事もこれに署名していること、 今回の決定に際し、 農務省が関係 者に求めたコメントの結果においても、 約95%が協定の締結を支持するものだっ たことを挙げている。

● 農務長官、 協定内容に重大な関心


 ただし、 農務長官は、 協定の締結を認めたものの、 今後検討される協定の内容 については、 大きな関心を持っているとして、 協定の内容が期待に沿うものでな かった場合には、 今回の決定を無効とする場合もあり得ると、 警告している。  同長官は、 協定の内容に関する関心事項として、 (1)協定が他の地域の負担と ならないこと、 (2)農業法の規定と整合していること、 (3)他の地域の酪農家の収 入に悪影響を及ぼさないこと、 (4)牛乳の小売価格の上昇につながるものでない こと、 などを挙げている。

● 政治色の強い規定


 96年農業法におけるこの規定は、 当初、 上院案では盛り込むことが否決され、 下院では当初から規定されていなかった。 しかしながら、 上下両院で農業法案の 調整を行う過程で、 北東部地域選出の議員の強力な働きかけにより、 両院協議会 において最終的に法律に盛り込むことが決定された極めて政治色の強いものであ る。

● 主要生乳生産地域選出議員から反発


 当初から、 この規定が地域別の生乳取引に大きな障害となるとして、 これに強 く反対してきたコール上院議員 (民主党、 ウィスコンシン州選出) は、 「この協 定は、 政治的取引によって導入された誤ったものであり、 憲法上、 行政は、 この ような権限を認められていない。」 とし、 また、 フェインゴールド上院議員 (同) も 「中西部の酪農家にとって不利となるこの協定の取り消しを、 断固求めていく。」 と述べて、 今回の農務長官の決定を批判している。
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