◇絵でみる需給動向◇
豪州農業資源経済局 (ABARE) はこのほど、 97/98年度 (97年7月 〜98年6月) の主要農産物の生産および輸出見通し等を発表した。 これによると、 牛のと畜頭数および牛肉生産量はそれぞれ838万頭 (前年度 比0.7%減)、 180万トン (同0.4%減、 枝肉ベース)と、 ほぼ前年度並み の水準を維持すると予測されている。 この背景としては、 今年に入ってから次第 に顕在化してきた干ばつの影響により、 牛群の整理が進み、 さらに、 肉牛価格が 堅調に推移したことによってと畜が増加したものの、 今後はこの反動が表れると 予想されているためである。 なお、 このと畜頭数に、 依然として高い水準が続く生体牛の輸出頭数を加算す ると、 97/98年度には925万頭の牛が 「姿を消す」 ことになり、 これは7 0年代後半以来の高い数値となっている。 この結果、 年度末の牛飼養頭数は、 前 年度比1.5%減の2,590万頭に低下すると予想されている。 ◇図:と畜・生体輸出頭数の推移◇
次に牛肉の輸出についてみると、 対米、 対日輸出の回復が予想されることから、 前年度比で3.6%増の75万6千トンになると見込まれている。 豪州の牛肉輸出は、 日本および米国で全体の7割弱のシェアを占める構造とな っている。 このうち、 日本向けについては、 病原性大腸菌問題によって低迷した 消費が回復に向かい、 国内市場における米国産牛肉との競合が次第に緩和される との見通しから、 前年度比3.2%増の29万トンになると見込まれている。 ま た、 米国向けについても、 米国内の経産牛のと畜が減少に向かっていることから 加工用牛肉の輸出が増加し、 前年度比4.7%増の22万1千トンになると見込 まれている。 さらに、 他の主要な輸出先についてみると、 インドネシアおよびフィリピン向 けが、 人口増加、 経済成長による所得の向上、 および都市化がもたらすファスト フード店の増加等によって、 合わせて前年度比7.5%増という大きな伸びを示 すとされている。 ただし、 この予測には、 タイの通貨危機に端を発した最近の東 南アジアの経済不安が折り込まれていないことから、 次に述べる生体牛輸出も併 せて今後は、 その動向を注視しなければならない。
牛肉輸出が3%台の増加にとどまると予測される一方で、 主に豪州北部を供給 源とする生体牛の輸出は、 前年度比8.3%増の93万頭に達し、 過去の記録を 更新すると見込まれている。 これらの生体牛の主な仕向け先は、 インドネシアやフィリピンをはじめとした 東南アジア諸国であるが、 97/98年度には、 検疫問題の解決を背景に、 中国 への輸出が大幅に増加すると見込まれている。 また、 中東や北アフリカ向けの輸 出についても、 EUの輸出補助金削減による競争力の向上に伴い、 増加が見込ま れている。
元のページに戻る