EUの牛肉の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○子牛肉生産はさらに減少局面へ


● 96年の子牛肉生産量はわずかに減少

 ドイツ市場価格情報センター (ZMP) によると、 96年のEU12ヵ国の子
牛と畜頭数は、 前年比2.5%減の551万6千頭となった。 EUの子牛と畜頭
数は、 その供給源となる乳用経産牛の飼養頭数が減少していることや、 成牛を対
象とした雄牛特別奨励金制度の充実によって生産者が子牛のと畜を抑制する傾向
が強まったことから、 ここ5年間で14%も減少している。 

 96年のと畜頭数を国別にみると、 最大の子牛肉生産国であるフランスで前年
比2.2%減の199万7千頭と200万頭を割り込んだのをはじめ、 イタリア
では6.9%減の123万頭、 また、 子牛肉の輸出割合が高いオランダでは、 ほ
ぼ前年並みの119万6千頭となっている。 なお、 EUの子牛と畜頭数は、 フラ
ンス、 イタリア、 オランダの主要3ヵ国に大きく偏っており、 これら3ヵ国でE
U全体の8割以上を占めている。 

 一方、と畜用子牛の枝肉重量は一貫して増加しており、96年には前年比2.2
%増の141kg/頭になった。 このため、 と畜頭数の減少にもかかわらず、 子
牛肉生産量は、 前年比0.5%減の77万6千トン (枝肉重量ベース) と、 わず
かな減少にとどまった。 

子牛と畜頭数と子牛肉生産量の推移

 資料:ZMP
 (注)1 96年の数値は暫定値
   2 96年の( )内の数値は対前年比


● 子牛肉は牛肉総生産量の約1割

 EUの子牛肉生産は、 乳用雄子牛などを生乳や代用乳等で、 5〜7ヶ月間哺育
育成し、 仕上げることにより主に行われている。 このように生産された子牛肉の
多くは、 一般の牛肉と異なり白身肉に位置付けられ、 淡白な料理素材としてフラ
ンス料理、 イタリア料理で重視されている。 EUでは、 子牛肉が牛肉総生産の約
1割を占めており、 わずか1〜2%を占めるに過ぎない米国と異なり、 牛肉産業
の中での比重は大きなものとなっている。 


● BSE関連措置で子牛肉用初生牛の需給がタイトに

 一方、 牛海綿状脳症 (BSE) 問題に伴うイギリス産子牛の禁輸措置と、 牛肉
過剰対策の一環として実施されている子牛のと畜奨励事業 (初生牛対象) の推進
によって、 最近、 乳用雄子牛などの子牛肉用初生牛の需給はタイトな状況になり
つつある。 これまで、 イギリスはEU最大の子牛供給国であり、 BSE対策がと
られる以前は、 フランスやオランダなどに年間30〜40万頭の子牛を輸出して
いた。 

 また、 EU全体の子牛のと畜奨励事業への奨励金申請頭数は、 本年7月末時点
で108万頭に達しており、 これは年間の子牛と畜頭数の2割弱の水準に達して
いる。 

 このような状況から、 フランス、 オランダなどの主要生産国を中心に、 子牛肉
用初生牛の供給不足が顕在化している。 また、 これらの国々が、 その供給をEU
最大の乳用経産牛飼養国であるドイツに求めてきたことから、 ドイツの乳用雄子
牛 (14日齢) の取引価格は、 ここ数ヶ月間連続して上昇し、 8月中旬には前年
同期を57%も上回る239マルク (1万5千円)/頭に達した。 また、97年1
〜4月におけるドイツから域内向けの子牛輸出頭数も、 前年同期比で80%増を
記録した。 


● 子牛肉用初生牛の不足で子牛肉生産量はさらに減少へ

 EU委員会によれば、 97年の子牛生産頭数は、 イギリス、 フランス、 ドイツ
などの主要生産国で軒並み減少することから、 全体でも3%程度減少すると見込
まれている。 

 また、 オランダ食肉ボードは、 97年のオランダ子牛牛肉生産量について、 前
年比7%減の16万8千トン (枝肉重量ベース) になると見込んでいる。 さらに、 
98年には、 子牛肉用初生牛の供給不足が一層深刻化し、 子牛肉生産量は97年
のレベルを下回ると予想している。 



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