EUの牛乳・乳製品の需給動向


◇絵でみる需給動向◇


○世界の乳製品貿易に占めるEU産のシェア


● 輸出補助金削減による大きな変化は見られず

 ガット・ウルグアイ・ラウンド (UR) 合意により、 95年以降、 EUの乳製
品輸出は、 輸出補助金の数量的、 金額的な削減が課せられ、 輸出競争力の低下が
懸念されていた。 

 このたび、 ドイツ市場価格情報センター (ZMP) が発表した世界の乳製品貿
易に占めるEU産のシェア (以下 「輸出シェア」 という。) の推移を見ると、品目
によって状況は異なるものの、 補助金削減前と比べて、 予想されたほどの大きな
輸出シェアの低下は見られず、 96年時点では、 EUは、 引き続き、 世界の乳製
品貿易に大きな影響を有していたことを裏付けるものとなっている。 

 なお、 UR農業合意によれば、 輸出補助金は95年から2000年までの間に
数量ベースで21%、 金額ベースで36%を削減することとなっている。 


● バター、 脱脂粉乳の輸出シェアはUR合意前と変わらず

 96年の輸出シェアを品目別にみると、 バターは95年の28% (輸出量21
万6千トン) から26% (18万7千トン) に、 また、 脱脂粉乳は35% (37
万6千トン) から27% (22万7千トン) に低下した。 

 95年の輸出シェアの方が高いのは、 同年にバターおよび脱脂粉乳の国際需給
が逼迫し、 国際価格が大幅に上昇したことに刺激されて、 EUの輸出が増加した
ことによるものである。 なお、 96年の輸出シェアを、 UR合意による補助金削
減開始前の94年以前と比較すると、 必ずしも輸出シェアの低下は見られない。 
これは、 96年のバターおよび脱脂粉乳の国際価格が95年ほどではないものの
比較的高水準で推移したことに加え、 米ドル高による為替要因も相まって、 輸出
補助金の削減による価格競争力の低下がみられなかったためと考えられる。 


● チーズの輸出シェアは徐々に低下

 これに対して、 チーズの輸出シェアは、 94年以前は過半を占めていたものの、 
95年は49%、 96年には48%と徐々に低下している。 なお、 96年の輸出
量は52万5千トンと、 ほぼ95年以前の輸出水準を維持していることから、 輸
出シェアの低下は、 世界のチーズ貿易量の増加によってもたらされたと言える。 
なお、 当該増加分は、 主にオセアニア諸国からの輸出増により賄われたものであ
る。 

 なお、 チーズの輸出補助金削減約束に基づく補助対象数量 (以下 「補助対象枠」 
という。) は、 96年においては、 40万5千トンとされており、輸出量の大幅低
下が心配されたが、 世界的にチーズ需要が好調であったことや、 米ドル高により
輸出競争力が向上したことから、 補助対象枠を12万トン上回ることとなった。 

 また、 全粉乳の輸出シェアは、 90年代前半の水準には及ばないものの55% 
(54万6千トン)を、 練乳は年々低下傾向にあるものの65% (29万1千トン) 
を、 ガゼインは安定的に40% (6万2千トン) を占めている。 


● 今後の輸出シェアの低下は必至

 また、 EU委員会は、 先に生乳クォータ制度を2006年まで継続することを
提唱したが、 これを実行した場合、 域外市場に輸出することになる余剰量は、 生
乳換算で900〜950万トンで安定的に推移すると予想している。 したがって、 
乳製品ごとの需給動向によって品目間の増減はあるものの、 EU委員会は、 域外
輸出量が、 今後もほぼ現行レベルで推移するとみていることになる。 

 一方、 世界の乳製品貿易は、 人口増加や経済発展による乳製品需要の増大や、 
UR合意による関税率の引き下げ等のアクセス改善などによって、 アジア諸国や
南米諸国を中心に着実に増加するとみられている。 これらの需要増加分は、 主に
生産拡大が予想されるオセアニア諸国から供給されると予想されることから、 結
果として、 EUの輸出シェアは、 今後、 徐々に低下するものと考えられる。 

世界の主要な乳製品貿易に占めるEU産のシェアの推移

 資料:ZMP
 (注):96年の数値は暫定値。

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