◇絵でみる需給動向◇
EU最大の豚肉輸出国であるデンマークの豚肉価格は、 97年5月までの価格 急上昇の反動を受け、 6月、 7月と連続して下落したが、 ここにきて下げ止まり し、 堅調に推移している。 同国の9月の豚枝肉卸売価格 (市場参考価格を平均し たもの、 以下同じ)は、 12.08クローネ(約224円:1クローネ約18.5 円)/kgとなった。 これは、 牛海綿状脳症問題による牛肉からの代替需要で、ド イツ、 イタリア向けなどの輸出が増加し、 価格がピークとなった96年9月 (1 2.34クローネ/kg) と比べると2.0%下回っているものの、 ここ数年で は、 依然としてかなりの高水準を保っている。 ◇図:デンマークの豚枝肉卸売価格の推移◇
このように、 デンマークの豚肉価格が堅調に推移している要因は、 EU最大の 豚肉生産国であるドイツなどの夏期の豚肉需要が好調で、 デンマーク産に需要が 集まったことによるものである。 その背景は、 EU有数の輸出国であるオランダ (生体豚では最大の輸出国)や、 生産量が第3位であるスペインで依然として豚コ レラが発生しており、 その影響が長期化しているため、 清浄国である同国に引き 合いが集中したことが大きい。 ちなみに、 同国の97年上半期におけるドイツ向け豚肉輸出 (生体、 調整品を 含む) は、 対前年同期比22.5%の約15万8千トンと大幅な増加となった。 なお、 ドイツ向け輸出の特徴としては、 生体豚の輸出が大幅に増加したこと (5 6.4%増の51万1千頭のうち約9割が同国向け) が挙げられる。 また、 フラ ンスやイタリア向けなどの豚肉輸出も順調に増加したため、 全体の輸出量は8. 9%増の約70万トンとなった。 さらに、 このことに加え、 96年の下半期以降急減していた対日輸出が、 台湾 での口蹄疫発生による代替需要や、 7月からのわが国のセーフガード (SG) 解 除などにより、 かなり増加していることもその要因となっている。
こうした中、 先ごろ発表されたデンマークの97年8月期の豚飼養に関するセ ンサスによると、 同国の豚の総飼養頭数は、 生体豚の輸出が増加して肥育豚頭数 が減少したことから、 対前年同期比0.1%減の1千93万3千頭となった。 し かしながら、 豚のタイプ別に見ると、 繁殖用雌豚頭数は6.1%増の123万5 千頭、 うち未経産豚頭数は15.2%増の37万2千頭と大幅な増加となった。 このように、 繁殖用豚群に拡大傾向が強く表れたことは、 同国の肉豚供給が、 今後、 さらに増加傾向に向かうことを示している。 また、 この傾向は、 同国の肉 豚生産者の多くが、 現在の良好な輸出環境と価格水準が長期的に維持されるとみ ていることを裏付けるものとも言えよう。 現在の状況から見ると、 オランダなどの豚コレラが短期間のうちに終息すると は考えにくく、 デンマークへの引き合いが続くものと予想されることから、 今後 も豚肉価格は堅調に推移するものとみられる。 97年8月期デンマーク豚センサス 資料:イギリス食肉家畜委員会 「European Market Survey」 注:( )内は内数
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