特別レポート 

フランスにおける高品質チーズの形成と意義 −ボーフォール・チーズの事例−

宇都宮大学 教授 是永 東彦



1.はじめに


 フランスのアルプス山地では、 高品質チーズによる高付加価値生産の発展に基
づき、 EU酪農政策の価格支持制度に依存することなしに、 山地農業が存続し、 
農村社会の維持に寄与している。 その最も目覚ましい成功例が、 ボーフォール・
チーズの発展である。 これは最近では 「ボーフォール・モデル」 とも呼ばれ、 高
付加価値生産による山地農業の発展モデルとして、 フランスのみならず、 広く欧
州で注目されている。 

 ボーフォール・チーズの成功は、 フランス独自のAOC (原産地呼称管理) 制
度に支えられて実現された。 当初は、 ワインを対象に導入されたAOC制度は、 
第2次世界大戦後、 地域の伝統的生産方法を活かした高品質チーズの品質保証制
度として重要な役割を果たす。 ボーフォール・チーズの生産者たちは、 1960
年代から、 アルプス高地の伝統を引き継いだ高品質チーズの発展に取り組む。 1
968年にAOCデクレ (政令) が初めて制定され、 さらに76年、 86年、 9
3年の改正を通じて、 品質政策が強化された。 こうして、 ボーフォール・チーズ
は、 高付加価値を実現し、 山地農業と山村社会の存続に寄与するという重要な役
割を果たした。 

 本レポートでは、 ボーフォール・チーズの主産地形成のケース・スタディを通
じて、 条件不利な山地畜産の1つの発展方向としての高付加価値生産の意義につ
いて検討したい。 

2. フランスにおける高品質チーズの地位と品質保証制度


(1)高品質チーズの地位

 フランスの高品質チーズは、 いわゆるAOCチーズによって代表される。 AO
Cチーズとは、 原産地呼称管理(Appellation d'Origine C
ontrolee) に関する制度の対象となってるチーズのことである。 AOC
チーズの概況は次のとおりである1 (表1参照)。 

表1 フランスのAOCチーズの生産動向


 資料:INAO
 備考:年変化率は1986〜95年の平均年変化率

 1995年現在で、 AOCチーズは、 32品目存在する。 うち、 牛乳を原料と
するものが24品目、 山羊乳によるものが6品目、 羊乳によるものが2品目であ
る。 生産数量はAOCチーズ全体で17.1万トン、 フランスのチーズ生産全体 
(生鮮チーズを除き、 いわゆる熟成チーズのみをとる) の17%を占める。 

 近年、 AOCチーズの生産量は増大している。 上記の32品目の生産量は、 1
986年の13.6万トン (牛乳チーズ11.7万トン、 山羊乳チーズ0.1万
トン、 羊乳チーズ1.7万トン) から、 1990年14.9万トン (それぞれ1
2.9万トン、 0.2万トン、 1.9万トン)、 そして、95年の17.1万トン 
(それぞれ14.6万トン、 0.4万トン、 2.1万トン)となった。 過去10年
間に年率2.6%のテンポで増大したことになる。 

 AOCチーズの生産者は、 1710のチーズ生産農家 (producteur
s fermiers)、 280の協同組合、 190の私的企業、 155の専門熟
成業者からなり、 その売上額は全体で100億フラン (約2,100億円) と推
定されている。 乳業企業のチーズ売上げ額が422億フラン (約8,900億円)  
(1994年) であるので、フランスのチーズ全体における地位は24%と比較的
小さい。 

 しかしながら、 多くの山岳地域の酪農業にとって、 AOCチーズは重要な地位
を占めている。 この点は次第に明確にしていくが、 ここでは伝統的な山地チーズ
の地位についてのリカードの推計を示すにとどめる(表2)。 今日のフランス・チ
ーズは、 その中身の性状 (pate) から、 熟成しないフレッシュ・チーズ (p
ate fraiche) と熟成される通常チーズに大別され、後者はさらに表2
に示されるように、 軟質チーズ (pate molle)、 プレス・チーズ (pa
te presse)、 ブルー (青カビ) ・チーズ(pate persillee) 
に区別される。 さらに、 プレス・チーズは、 プレスする前に加熱する (cuir
e) かどうかで区別される。 山地酪農として重要な種類は、 保存性のあるプレス・
チーズとブルー・チーズであるが、 これらにおいては、 山地型チーズが量的に見
ても全国生産の2〜5割という重要な地位を占めている。 そして、 質的に見れば、 
山地型チーズには、 名声の高いAOCチーズが数多くみられるのである。 

表2 フランスのチーズ生産における伝統的山地チーズの地位(1991年)

 出所:D.Ricard, Les montagnes fromageres en France.p.168.
 備考:伝統的山地チーズの比率は各タイプの生産全体に対する比率の推定値。

 フランスのチーズに関する品質保証制度としては、 AOC制度のほかに、 農業
ラベル制度も一定の役割を果たしている。 AOC制度は後に詳しく見るとして、 
ここでは後者について簡単に触れておこう。 

 農業ラベル制度は、 1960年農業基本法により制定されたもので、「並みの生
産物」 (produits courants)から区別された 「上質」 (qual
ite superieure)の食料・農産物について品質保証を行うものであ
る。 これには全国ラベル (いわゆるラベル・ルージュの名前で知られている) と
地域ラベルとがある。 地域ラベルは、 全国ラベルの場合に制定されるような品質
基準のほかに、 地域に特有の基準が追加的に定められる。 それだけに、 全国ラベ
ルよりも格が高い。 全国ラベルは1994年に302品目に達したが、 地域ラベ
ルの数は極めて少ない (91年に9品目)。 そして、 農業ラベルは、特に家禽部門
で重要な地位を占める (家禽肉の全国生産の20%、 消費支出の30%) ほか、 
食肉、 ハム・ソーセージ、 チーズなど乳製品、 果物・野菜で見られる (各部門で
生産の数%以内のシェア)。 

 チーズ部門の農業ラベルとしては、 エマンタール・グラン・クリュ (Emme
ntal Francais Grand Cru)、 真正生乳モルビエ (Veri
table Morbier au Lait Cru)、 トム・ド・サヴォア(To
mme de Savoie)などが知られているが、 最初のものが全国ラベル(ラ
ベル・ルージュ)、 後の2つが地域ラベルである。 

 エマンタール・グラン・クリュは、 グリュエール・チーズの一種であるが、 中
東部の13県にわたって生産され、 地域との関連を希薄にしつつ、 ある程度まで
は大量消費・大量生産に対応した近代化路線を追求してきた。 上記の表2におい
て、 山地チーズとしてのエマンタールが加熱プレス・チーズ全体において大きな
地位を占めていることが注目されるが、 それは農業ラベルによる品質保証制度に
支えられて実現されたものであった。 それとは対照的に、 トム・ド・サヴォアは、 
サヴォア、 オート・サヴォアの両県に限定して比較的厳しい生産方法基準を定め
ており、 AOCチーズに近い性格を持っている。 事実、 AOC制度への移行をめ
ざし、 それを申請中である。 表2において、 このチーズは山地型の加熱しないプ
レス・チーズとして第2位の生産量を示しているのである。 


(2)チーズ部門へのAOC制度の適用

 フランスの現行AOC制度は、 原産地呼称の保護に関する1919年5月6日
の法律によって発足したとされる。 当初、 それは司法的手続き (民事裁判) によ
って、 生産物の定義と生産地域の限定が行われ、 これが判例としての効果をもつ
ことを通じて、 原産地呼称の保護が確保されるという仕組みであった。 しかしな
がら、 チーズ部門における原産地呼称の保護がこの法律によって直ちに推進され
たのではなく、 かなり複雑な経緯をたどった。 

 チーズの中で、 最初に原産地呼称の保護を獲得したのは、 ロックフォール・チ
ーズであったが、 それは、 1919年の一般法に基づくのではなく、 1925年
7月26日付けの特別法によって実現された。 同法は、 羊乳によるブルーチーズ
の熟成について、 ロックフォール村の特定地区 (カーヴ) に独占的な権利を与え
るものであった。 このような特権が認められたのは、 それなりの歴史的な背景が
あった。 かなり古い時代にさかのぼるが、 1411年の国王シャルル6世の特許
状、 次いで1666年のトゥールーズ高等法院の決定によって、 ロックフォール
村の住民は、 かかる独占的権利を認められたといわれる。 同法の成立後、 チーズ
の原産地呼称の保護は、 ゆっくりしたあしどりで広まっていく。 両大戦間期には、 
特別法、 行政命令、 あるいは司法的手続きによって、 若干のチーズについて原産
地呼称の保護が認められていくという状況にあった。 

 第2次世界大戦後は、 1950年代中葉までは、 司法的な手続きが主流を占め
た。 1953年にコンテ (Gruyere de comte) チーズがディジョ
ン (Dijon) 裁判所 (1953年7月22日付け)、1955年にサン・ネク
テール (Saint−nectaire) チーズがイソワール (Issoiir
e) 裁判所 (1955年12月1日付け)、 1956年にはカンタル(canta
l) チーズがサンフルール (Saint−Flour) 裁判所 (1956年5月
17日付け) によって、 原産地呼称の保護を獲得した。 

 しかし、 このような司法的手続きに主として依存する状態に、 転機が訪れる。 
それは、 1955年にチーズ原産地呼称に関する法律第55−1533号 (19
55年11月28日付け) が制定されたからである。 これにより、 チーズ原産地
呼称全国委員会 (CNAOF) が設置され、 同委員会での審議を経て、デクレ(政
令) により、 原産地呼称を管理する方法が確立された。 この行政的方法は、 19
66年法 (第66−482号) でさらに整備されるが、 司法的な手続きも存続し、 
制度的には両者が併存する状態がしばらく続いた。 そして、 1973年法 (第7
3−1096号) によって、 従来からの司法的方法が廃止され、 デクレによる行
政的方法が原産地呼称を制定する唯一の方法となった。 その後、 1990年には、 
農産物の原産地呼称管理に関する法律第90−558号 (1990年7月2日付
け) が制定され、 55年法はこれにより廃止される。 こうして今日では、 修正後
の1919年法と1990年法とが、 ワイン、 チーズ、 その他の農産物を対象に
する原産地呼称制度の基本的な法律となっている。 

 こうした法制度の整備を背景として、 チーズ部門の原産地呼称制度は、 195
5年法の制定後、 特に1960年代から本格的な発展を見ることとなるのである。 

 1955年法の制定後、 同法により原産地呼称管理 (AOC) が設定された最
初のチーズは、 ルーブロション (reblochon)・チーズであった(195
8年8月7日付けデクレ)。1960年以降におけるAOCの設定を山地型チーズ
についてみると、 次の通りである。 

●Salers haute montagne  1961年12月21日

●Laguiole              1961年12月21日

●Beaufort              1968年 4月 4日

●Munster/munster gerome
                       1969年 5月21日

●Fourme d'Ambert/de Montbrison
                       1972年 5月 5日

●Bleu d'Auvergne        1975年 3月 7日

●Mont d'or/vacherin du haut Doubs
                       1981年 3月24日

●Abondance             1990年 3月23日

 ところで、 こうした1960年代以降のAOCは、 1950年代までのものに
比して、 品質保証制度の意義が重視されていった。 1950年代までのチーズの
原産地呼称は、 伝統的な生産地域がその外部からの競争にさらされるようになる
中で、 主たる関心がかかる競争からの保護にあった。 しかし、 1960年代から、 
AOCの観念に明白な転換が現れ、 主たる関心は、 品質を確保するための産品特
性の定義と生産条件に関する基準の制定に置かれるようになる。 外部の競争から
の保護は主要な目的ではなくなる。 AOCのマークの意味するものは、 地域特産
物の品質保証であること、 しかも規格化された標準的な生産物ではなく、 高品質
のイメージと結びついた特殊な生産物の保証であるとされた2。 


3. ボーフォール・チーズの形成過程


(1) 「グリュエール・チーズのプリンス」 

 今日、 グリュエール・チーズの中で、 ボーフォール、 アボンダンス、 コンテの
3品目がAOC制度の対象となっている。 その外に、 グリュエール・チーズの一
種として、 エマンタール・チーズがあり、 その一部がラベル・ルージュの対象と
なっていることは既に述べた通りである。 先の表2によれば、 グリュエール・チ
ーズに相当する加熱プレス・チーズの生産量は、 エマンタール・チーズが圧倒的
な比率を占め、 その中でもラベル・ルージュの対象外のものが多い。 この並みの
品質をもつ大量生産型のエマンタール・チーズの上位に、 ラベル・ルージュが位
置する。 そして、 その上位にAOC対象の3品目が位置するが、 これらの中では、 
生産方法の近代化をある程度取り入れたコンテが生産量では圧倒的な地位を占め
る。 ジュラ地方を山地とするコンテに対して、 北アルプスを産地とするボーフォ
ールとアボンダンスは、 生産量がはるかに少ない。 しかし、 これらは伝統的な生
産方法を重視しつつ、 高品質、 高付加価値を最も熱心に追求し、 それに成功した。 
さらに、 これらの中でもボーフォール・チーズは、 より後発のアボンダンス・チ
ーズに比して、 質的にも量的にも優位に立っている。 高品質を誇るグリュエール・
チーズの世界において、 品質ヒエラルヒーの最頂点に立つのが、 ボーフォール・
チーズであり、 「グリュエール・チーズのプリンス」 と呼ばれるのである。 


(2)歴史的回顧

 ボーフォール・チーズの呼称は19世紀中葉に始まるといわれる。 しかし、 ア
ルプスにおけるチーズの歴史は古く、 すでに古代ローマの時代にその存在がロー
マで知られていた。 そして、 中世における修道院や村落共同体によるアルプス山
地の開墾によって、 広大な草地が形成されるとともに、 家畜が放牧され、 さまざ
まな名称で呼ばれるチーズが生産されるようになった。 近世以降も放牧地、 特に
森林限界の上位に位置するような高地放牧地はしばしば村落の共有地として存続
し、 家畜の共同放牧とこれに基づくチーズ共同加工場が広く設立された。 村落共
同体に基づく草地利用、 家畜放牧、 牛乳生産とチーズの製造・調整・保管にわた
る共同経営 (fruits communs、 fruitieres)は、 近世か
ら20世紀に至る長い歴史を通じて、 フランスの中東部に広く見られた。 ボーフ
ォール・チーズの生産地域であるボーフォールタン (Beaufortain)、 
タランテーズ (Tarentaise)、 モーリエヌ (Maurienne)と呼
ばれる地域では、 部分的には個人経営としての高地放牧と酪農生産も存在したが、 
共同経営の伝統が20世紀中葉まで比較的強く残っていたことで知られている。 

 伝統的なボーフォール・チーズの生産構造は、 第二次世界大戦後、 1950年
代から60年代に諸困難に直面し、 新たな適応を迫られた。 伝統的な生産構造は、 
零細経営と豊富な労働力に依存するものであったが、 第2次世界大戦後における
農村人口の流出と農村労賃の上昇の中で、 零細経営の消滅と高地放牧の衰退が進
行する。 他面、 フランス中東部の一帯で、 工業的グリュエール・チーズの生産が
増大し、 具体的には、 エマンタール・チーズの増産と価格競争力の強化がみられ
た。 こうした市場条件の変化の中で、 伝統的なボーフォール・チーズは、 品質に
ばらつきが発生し、 品質の劣化と価格競争の激化に見舞われる。 

 このような状況の中で、 ボーフォール・チーズの生産は、 停滞ないし縮小を余
儀なくされた。 1960年前後には、 生産量は500トン程度に落ち込んだ。 生
産条件の不利な伝統的な生産地域は、 外部 (前山地方、 イゼール県やアン県など) 
における低コストのボーフォール・チーズの出現に直面するようになった。 こう
して1960年代初頭、 ボーフォール・チーズは、 存亡の危機に立っていたので
ある。 


(3)1960年代以降の取り組み

 1960年代における以上のような危機への対応は、 酪農協同組合の再編およ
びAOC制度による品質政策の両面から推進された。 前者については、 従来の協
同組合がチーズの熟成・保管・販売だけを行ったのに対して、 チーズの製造過程
自体をも含む協同組合の設立が構想された。 まず、 ボーフォルタン酪農協同組合
が設立され (1957年設立、 61年活動開始)、それに続いて1960〜64年
に、 タランテーズ地区およびモーリエヌ地区において、 いくつかの酪農協同組合
が設立された。 特に、 ムーチエ(Moutiers)、 サンマルタン・ド・ベルヴ
ィル(Saint−Martin−de−Belleville)、 ブール・サン
モーリス (Bourg−Saint−Maurice) に設立された3つの組合
が重要であった。 1964〜65年において、 これらにボーフォルタンの組合を
加えた4つの酪農協同組合は、 ボーフォール・チーズ生産の50%以上のシェア
を占めた。 次いで1965年、 これらの酪農協同組合は、 ボーフォール・チーズ
に関する技術支援と販売事業の推進のために、 ボーフォール生産者同盟 (UPB, 
Union des Producteurs de Beaufort) を設立し
た。 UPBは、 協同販売事業を1972年には停止する (その後は各協同組合が
販売を担当) が、 ボーフォール・チーズのAOC制度の推進組織として重要な役
割を果たすことになる。 それは、 UPBがその後、 このチーズのAOCの管理・
運営機関である 「呼称防衛組合」(Syndicat de defense) の中
心勢力となることによって推進される。 

 危機への第2の対応策は、 このような生産の組織化を踏まえた品質政策の推進、 
具体的にはAOC制度の適用であった。 すなわち、 酪農協同組合とUPBという
地域的組織により生産態勢を確立したボーフォール・チーズ生産者たちは、 AO
C制度を通じて、 ボーフォール・チーズの呼称保護と品質向上を目指す活動に積
極的に取り組むのである。 ボーフォール・チーズのAOC制度は、 1968年の
発足以来、 次のように推移した。 

●1968年:最初のデクレが制定。 伝統的な生産地域を考慮して原産地呼称を
       認める地域を指定するとともに、 チーズ製造の特殊な条件や少な
       くとも4ヵ月の熟成について比較的簡単な基準を定めた。 

●1976年:デクレ改正。 より詳細な基準制定 (生の全乳の使用、 木型の定義
       と保護、 乳牛は地方品種に限定、 凝乳酵素の添加までの猶予時間、 
       サイレージなど発酵飼料の禁止)。 

●1986年:デクレ改正。 「夏」 のチーズや「アルパージュ」 のチーズといった
       表示についての明確な基準の制定、乳牛の地方品種はタリーヌ(タ
       ランテーズともいう) とアボンダンスに限定。 

●1993年:デクレ改正。 集約的牛乳生産を抑制する仕組みの導入 (平均搾乳
       量5,000kg以下という粗放化の基準、 草地空間の維持のた
       めに伝統的な放牧方式の維持)。 

 こうしたAOC制度の基準の厳格化を通じて、 高付加価値生産としてのボーフ
ォール・チーズが形成されていく。 それは地域における職能組織の意向の反映で
あり、 いわば下からの運動に支えられた品質政策の展開であったことが注目され
る。 


4. 現行AOC制度の内容


 ボーフォール・チーズのAOC制度は、 その原産地呼称を法的に保護している
が、 かかる公的な品質保証には当該チーズに関連するさまざまな基準の設定と遵
守が前提になっている。 こうした制度の内容について現行の93年デクレ3を中
心に紹介しよう。 


(1)生産地域の指定

 ボーフォール・チーズの製造と熟成並びに原料牛乳の生産は、 指定地域内で行
われるのでなければならない。 指定地域は、 サヴォア県の東部に位置する山岳地
帯である (図1参照)。 伝統的な地域名でいえば、 ボーフォルタン、タランテーズ、 
モーリエヌの3地域をカバーする。 デクレでは、 行政単位により次のように定義
される (68年以降、 不変) 。 サヴォア県は、 アルベールヴィル大郡とサンジャ
ン・ド・モーリエヌ大郡 (エーグベル小郡を除く) で、 換言すれば、 シャンベリ
大郡の全域とエーグベル小郡を除く県東部 (おおむねアルベールヴィルの東側) 
の全域が含まれる。 オート・サヴォア県は、 2つのコミューン (Praz−su
r−ArlyおよびContamines−Montjoieの一部) のみで、 
それはサヴォア県の北部山地に自然的に一体化された高地放牧地である。 

図1 ボーフォール・チーズAOC制度の指定地域



(2)産品の特性に関連する基準

原料乳の生産条件−原料牛乳の生産条件の基準は、 デクレの改正のたびに厳格化
され、 アルプス山地の伝統的牧畜方式の維持を具体的に明示する方向で修正され
てきた。 

●乳牛種は地方品種たるタリーヌおよびアボンダンスであること、 サイレージそ
 の他の発酵飼料は禁止されること(86年デクレ)。 指定地域外からの粗飼料の
 使用は冬季に補完的にのみ認め、 また濃厚飼料の使用も制限される (93年デ
 クレ)。 

●家畜群 (酪農経営) における平均生産量は、 搾乳牛1頭当たり年間5,000
 kgを超えないこと (93年デクレ)。 

●アルプス山地の伝統的放牧方式の維持のための規定を導入(93年デクレ)。 す
 なわち、 高地放牧地の維持は 「放牧区画の全体に家畜糞尿が適正に配分される
 ように、 伝統的な放牧方式と結合されるべきこと」、 また、谷間の採草地・放牧
 地なども 「堆厩肥が同様の原則で散布されるべきこと」。 

チーズの製造−次のような製造の全過程について細かな基準を設けている。 

●原料乳は高温殺菌をしない生の全乳を使用、 搾乳後直ちに加工場へ搬入 (農場
 に冷却装置がある場合は、 1日1回でよい)。 

●搾乳後6時間以内に (1日1回の製造で、 原料乳を冷却する場合には、 最初の
 搾乳から20時間以内に) 凝乳酵素を添加。 使用する凝乳酵素の作成や入手、 
 凝乳の際の温度 (32〜35度)、 凝結の程度と性状の評価について規定。 

●凝結した牛乳の攪拌と加熱(53〜56度)、 凝乳粒 (grains) の乳清か
 らの分離、 凝乳粒の木型への詰め込み、 プレス掛け、 木型の引っくり返し、 木
 型からの取り出し、 チーズの冷却、 塩水浸しなどの諸工程について規定。 

チーズの熟成−デクレ改正のたびに基準の厳格化がなされたが、 現在は次の通り
       である。 

●製造の日から、 少なくとも5ヵ月間、 温度12度以下、 湿度92%以上のカー
 ヴで熟成を行う。 

●チーズの長期保存を可能にする表皮の状態は重要であり、 熟成によって表皮に
 モルジュ (morge,表皮についているネバネバしたもの) が形成されなけ
 ればならない。 このため、 塩水を用いて、 チーズを擦ったり引っくり返したり
 する作業を行う (内部規則で設定)。 

チーズの形状・性状

●表面が平らで、 側面が窪んだ車輪型、 重量20〜70kg、 直径35〜75c
 m、 高さ11〜16cmであること。 

●熟成後において、 脂肪分48%以上、 乾燥成分62%以上。 表皮は固く、 黄色
 味を帯び、 中身は、 やや固くしなやかで、 アイヴォリないし淡い黄色。 


(3)表示

 AOCを示す表示を所定の方法で行うほか、 特に生産条件を示す次の2つの表
示が認められている。 

●“Ete" (「夏」 の意):6月から10月までの夏季に、 「正当かつ不変の地域
 慣行に従って」 生産されたボーフォール・チーズ。 

●“Chalet d'alpage" (「高地放牧農場」の意):標高1,500m
 以上の高地放牧農場で、 当該農場産の牛乳のみを使用して1日2回、 伝統的方
 法で製造されるボーフォール・チーズ (なお、 86年デクレでは、 単に“Al
 page"の語が用いられ、 このため 「アルパージュ」 チーズと呼ばれた)。 


(4)特化義務

 ボーフォール・チーズは、 これに特化した加工場で製造されるものでなければ
ならない (93年デクレの新規定)。 すなわち、 「当該デクレの基準に適合する牛
乳のみを使用する加工場」 で製造されなければならず、 例えば、 所定の地方品種
以外の乳牛をあわせ飼養する農場のチーズは、 ボーフォール・チーズの呼称を認
めないこととされた。 


(5)監視制度

 ボーフォール・チーズのAOC制度を監視、 監督するための管理委員会 (co
mmission decontrole)が設けられる (県農政部および地方競
争・消費者政策局の代表ならびに関係職能団体の代表で構成)。 同委員会は、IN
AOの乳製品全国委員会の指揮の下に、 監視、 監督を行い、 基準に対する不適合
があれば、 AOC呼称の使用停止などの措置をとる。 


5. AOC制度の下でのボーフォール・チーズの発展


(1)目覚しい生産の増加

 1960年代初頭の危機の時代に500トンの水準に低落したボーフォール・
チーズの生産量は、 その後、 長期的には順調な増大を示した。 すなわち、 70年
代半ばには1,000トンを超え、 80年代半ばに2,000トン、 そして93
年には3,000トン、 さらに95年には3,600トンに達した。 その間、 U
PBの協同販売が行き詰まった1972〜73年、 乳牛の地方品種の限定問題で
揺れた1984〜86年には、 生産量の停滞ないし減少がみられたが、 それ以外
の時期は順調な増大を示し、 とりわけ86年デクレ以降の10年間は、 年率7%
を超える高度成長を記録したことになる(表1参照)。 フランスおよびヨーロッパ
における酪農部門が過剰問題の深刻化と84年に始まる生産割当ての下で生産の
停滞する時期に、 こうした目覚しい発展がみられたことは注目すべきであろう。 

 なお、 こうしたボーフォール・チーズの増産は、 他の乳製品生産からの転換と
いう側面があった。 特に、 1980年代前半まで、 サヴォア県のチーズ生産にお
いて量的には中心的な地位を占めていたエマンタール・チーズが80年代中葉か
ら急速に減少した (1971年5,630トンから1993年2,270トンへ)。 
県内の牛乳生産量が1950〜60年代に急減した後、 70年代後半以降横ばい
に推移する中で、 県内アルプス山地における高品質チーズの増産がみられた訳で
ある。 


(2)増産を支えた生産構造

 1960年代初頭の危機への対応策として酪農協同組合が設立されたことは既
に述べたが、 その後の生産の発展においても協同組合が重要な役割を果たした。 
この点は、 ボーフォール・チーズの生産構造を検討することによって明らかとな
る。 

 ボーフォール・チーズの生産構造は、 その担い手の面からみて多様である。 元
来、 AOC制度は、 協同組合のほかに、 私的企業、 個人的な生産者、 協同経営体
など様々な担い手による生産を広く対象とするものである。 いま、 ボーフォール・
チーズの生産の担い手を種類別に示せば、 次の通りである (数値は1990年の
実績、 カッコ内は生産全体におけるシェア) 4。 

1)酪農協同組合 (恒常的営業) 
 8組合、 生産量2,199t (75.7%) 

2)酪農協同組合 (夏季営業) 
 3組合、 生産量125t (4.3%) 

3)私的乳業企業
 3企業、 生産量218t (7.5%) 

4)個人的アルパジスト (牧畜業者) 
 17人、 生産量154t (5.3%) 

5)牧畜集団、 SICA (夏季営業) 
 10集団、 生産量209t (7.2%) 

 このうち、 1)、 2)、 3)は自らは牛乳を生産せず、 集荷した原料乳によってチー
ズを製造するが、 4)と5)は牛乳生産とチーズ製造の双方を行う一貫生産の牧畜業
者である。 なお、 5)は、 かつての村落共同体による共同放牧の慣行を継承したい
わゆるフリュイチエール (チーズ生産組合) が1960年代以降、 牧畜集団 (G
roupement Pastral) やSICA(農業共同利益組合) という新
たな組織形態のもとに再編されたものである。 

 こうした多様な生産者が存在する一方で、 夏季営業のみの組合を含めた酪農協
同組合のシェアは80%と高い。 この比率は1980年には72%であった5。 
時の経過とともに、 酪農協同組合のシェアが向上してきたことが注目される。 私
的乳業企業は、 AOC制度による品質政策を主導する酪農協同組合の活動に食い
込むことができずに、 10%以下のシェアにとどまっている。 他方、 個人的アル
パジストや牧畜集団・SICAは、 ボーフォール・チーズの中でも、 特に伝統的
で高品質のイメージのあるアルパージュ(Alpage)・チーズに特化する傾向
がみられ (これらの生産者の場合、 この種のチーズが1990年には生産量の6
2%に達した)。 こうしたアルプスの高地放牧地に立地し、特に伝統的な性格の産
品に特化する個人的生産者や少人数の農家により設立された牧畜組合などの存在
も注目されるが、 恒常的に活動する8組合を中心とする酪農協同組合が、 ボーフ
ォール・チーズの担い手として極めて大きな役割を果たしてきたのである。 


(3)販売ルートと高付加価値の実現

 UPBによる協同販売が廃止された1970年代初頭以来、 各酪農協同組合は、 
独自の販売ルートによって、 ボーフォール・チーズの販売を行ってきた。 ボーフ
ォール・チーズの販売ルートについては、D.リカールの推定があり6、 これによ
れば、 1990年代初頭において次のような3つに区別される。 

1)伝統的な乳製品販売業者 (cremiers traditionnel) 約
 半分を取り扱い、 この部分は専門的なチーズ販売店を通じて消費者に販売され
 る。 

2)直接販売 (circuit court) 大規模生産者では10〜20%程度
 であり、 販売価格のより高い小規模生産者においてその比率はより高くなる。 

3)大規模流通ルート (grande distribution)残りの部分、 す
 なわち生産全体の40〜50%が大規模流通企業により取り扱われる。 

 大規模流通企業の取り扱い量よりも、 伝統的な専門店組織と直接販売の合計量
が大きく、 ここでは高水準の定価に基づく販売が可能である。 大規模流通企業に
対しても、 その要求に譲歩するよりも販売を拒否することが可能であり、 D・リ
カールによれば、 販売価格の3%を超える割引をしないとのことである7。 ボー
フォール・チーズは、 通常、 スーパーマーケットで買うことはできず、 チーズ専
門店か直接購入によらねばならない。 

 こうしてボーフォール・チーズの販売は、 売り手市場であり、 このことによっ
て高価格が形成される。 AOC制度による原産地呼称の保護は、 生産の地域独占
を可能ならしめ、 供給のいわば構造的な不足状態を生み出したのである。 牛乳の
生産割当制の導入はかかる需給ギャップをさらに強める効果をもたらした。 むろ
ん、 こうした独占は競争を完全には排除しない。 地域内では、 私的企業を含めた
競争が存在することは言うまでもないが、 地域間では、 同種のチーズ (ここでは
グリュエール・チーズに属するアボンダンス、 コンテ、 エメンタールなど) 相互
間の競争がある。 ボーフォール・チーズの価格は、 こうした競争を通じる相対価
格によって決定されることになる。 

 フランスの高品質チーズの相対価格は、 D・リカールの整理した図2によって
みることができる。 それは、 1992年の平均的な工場渡し価格を示すが、 グリ
ュエール・チーズの中でもっとも価格が低いのはエマンタール・チーズで、 27
〜30フラン(570〜630円)/kgである。 その中で、 最も大衆性のあるエ
マンタール (EP) が27フラン (570円) (kgあたり、 工場渡し価格)、 ラ
ベル・ルージュの対象となっている上質のエマンテール・グラン・クリュ (EG
C) が30フラン (630円) であった。 コンテ・チーズの価格帯は32〜48
フラン (670〜1,010円) と幅がある。 平均的品質 (CT1) は32フラ
ン (670円)、 上質 (CT2) が36フラン (760円)、 特上 (CT3) が4
8フラン (1,010円) であった。 アボンダンスは、 35〜43フラン (74
0〜910円) であった(工場製が35フラン (740円)、 フェルミエが43フ
ラン (910円))。 これらに対して、 ボーフォール・チーズ (B) は、 最高水準
の52フラン (1,100円) を示している。 同図にはないが、 夏チーズは冬チ
ーズに比してかなり割高であり、 また、 アルパージュ・チーズはさらに高くなる
8。 こうして、 グリュエール・チーズの中にあって、 ボーフォール・チーズは、 
工業的製法によるエマンタール・チーズに比して約2倍の価格を実現しているこ
とがわかる。 

◇図2:フランスの山地型チーズの比較収益性◇

 なお、 図2の横軸は、 原料牛乳1リットル当たりに換算した価格である。 グリ
ュエール・チーズは、 チーズ1kgを生産するのに12リットルの牛乳を要する
ので、 横軸で見ても上記の価格の序列は同じである。 ただ、 アボンダンス・チー
ズは、 1kgのチーズに10.5リットルの牛乳でよいので、 原料牛乳あたりの
チーズ価格はボーフォール・チーズに並んでいる。 

 このようなボーフォール・チーズの高価格を反映して、 原料乳の価格も相対的
に極めて高い状態にある。 1990年において、 フランスの乳価がEU共通酪農
政策の下で、 2.10フラン (44円)/kg (指標価格)であるときに、 ボーフ
ォール・チーズの酪農協同組合は牛乳生産者に3.00〜3.30フラン (63
〜69円) を支払うことができた9。 現時点 (1996年) でも、 一般の乳価は
2.10フラン (44円) 前後であるが、 筆者の訪問したムーチェ酪農協同組合
は、 3.17フラン (67円) の支払いをしていた。 チーズの高価格により形成
された付加価値の一部が原料生産者に配分されている訳

6. 結 論


 ボーフォール・チーズの主産地形成についての以上の検討から、 結論として次
の3点を指摘したい。 

 第1に、 注目したいのは、 ボーフォール・チーズ生産地域が、 山地農業の持つ
自然的なハンディをかえって高付加価値形成のための決め手として活用すること
ができたことである。 そして、 これを可能にした制度的要因として原産地呼称制
度が決定的ともいえる役割を果たしたことは、 かかる品質保証制度の農業政策と
しての重要性を示唆する。 

 第2に、 ボーフォール・チーズのAOC制度は、 品質政策として、 伝統的なチ
ーズの品質とその製造過程について基準を設定しただけではなく、 その川上にさ
かのぼって、 牧畜・営農システムについても、 乳牛品種をタランテーズとアボン
ダンスの地方2品種に限定し、 搾乳量は5,000kg以下とし、 また、 伝統的
な飼料システムの基準を導入した (サイレージなどの発酵飼料の禁止、 粗飼料の
域内自給の原則、 伝統的な草地管理方式の維持など)。それは農業自体の粗放的性
格と環境調和的な性格を強化する方向性をもち、 したがって農業の多面的機能を
配慮した地域農業の確立という意味をもっていたといえよう。 

 第3に、 ヨーロッパの山地農業政策の理念において、 いわゆるボーフォール・
モデルは、 価格支持や補助金という公的支持にもっぱら依存するのではなく、 地
域的イニシャテイヴに基づく高付加価値生産の確立という自立的な戦略を導入し
たという意味で注目されよう。 それは農村振興政策を重視するEU農政改革の方
向とも合致するものとして、 今後の農政論議の重要な論点を成すものと思われる。 

 最後に、 以上のフランスの経験が我が国にとってどのような示唆を与えるかを
考えてみたい。 

 第1に、 畜産振興における条件不利地域つまり中山間地域の位置付けについて、 
粗放的山地畜産の役割を見直す必要があるのではないかという点である。 我が国
の中山間地では草食家畜がほとんど消滅しており、 家畜の口と蹄による草地空間
の管理がほとんど行われなくなっている。 しかし、 本質的に山国であり傾斜地の
多い我が国では、 将来の世界的な食料問題の深刻性を考えると、 国内の農林資源
の保全のあり方として、 山地型草地畜産、 特に山地酪農の振興を考えてよいので
はなかろうか。 

 第2に、 最近我が国でも、 乳製品の多様な発展、 例えばナチュラルチーズの生
産が盛んになっているようであるが、 高付加価値生産としてのフランス・チーズ
の事例は、 さまざまな意味で示唆に富むであろう。 我が国酪農は、 国土条件のハ
ンディから、 原料乳の競争力は強くないとしても、 品質やそれに関連する諸要素 
(自然や伝統・文化まで) を生かしたいわゆる製品差別化によって、高付加価値を
実現する可能性が常に存在している。 また、 品質保証や表示に関する制度を通じ
て、 高付加価値生産の展開を支援することも重要と思われる。 

 第3に、 ボーフォールの事例は、 地域の主体的な取り組みが成功の重要な条件
であったといえるが、 我が国農業の将来の展開において、 こうした地域レベルの
農業振興の取り組みを重視する必要があろう。 地域ごとに多様な農業が存在しや
すい条件を如何に工夫するかは、 今日のEU農政の重要な課題であるが、 我が国農
政も、 地方分権化に向けた改革が検討されている中で、 同様の課題に直面してい
るといえよう。 本文で簡単に触れたフランスの農業ラベル制度では、 全国ラベル
よりも地域ラベルの方が格が高いが、 こういう関係の発生しやすい制度が望まし
い。 

1 以下の記述は、 特記しない限り、 フランス農務省およびINAOの資料によ
 っている

2 D.Ricard, Les montagnes fromageres en Erance. 
 CERAMAC, 1994.chapitre 4. 

3 Decret du 12 aout 1993 relatif a l'appellation d'origine controlee 
 《Beaufort》, Journal Officiel, 19 aout 1993.


4 UPB資料 (D.Ricard, op. cit. p.277)。 

5 B.Dubeuf, et al.,“Problematique de la gestion de la qualite dulait 
 dans la filiere fromagere des Alpes du Nord”dans Qualite et systemes 
 agraires, Etud. Rech. Syst. Agraires, Dec.1994,28. p.117.

6 D.ricard, op. cit. p.280. 

7 ibid.

8 1992年において、 ボーフォール協同組合の小売価格は、 冬チーズが58
 フラン (1,220円)、 夏チーズが65フラン (1,370円) であり、10
 %を超える価格差があったが、 夏チーズとアルパージュ・チーズの差はごく僅
 かであったといわれる (D.Ricard, op. cit. pp. 280 et 345, note 11)。 た
 だ、 筆者が1996年9月、ムーチェ協同組合を訪問したときは、冬チーズ65
 フラン (1,370円)、夏チーズ80フラン (1,690円)、アルパージュ9
 0〜95フラン(1,900〜2,000円)とのことであった。  近年は、品質
 による価格差が拡大する傾向にあるとの印象を受けた。 

9 D.Ricard. op. cit. p.281. なお、 ボーフォール・チーズの酪農協同組合が
 原料牛乳について通常価格よりも高い価格を支払える
 ようになったのは、 組合の事業開始から14年を経過した1974年からであ
 ったといわれる(B.Dubeuf et G.Burleraux,“La dynamique de qualification 
 territoriale mise en place par les producteurs de beaufort”,INRA,1996)。

10 1990年は D.Ricard, op. cit. p.242,1995年は筆者がINAO訪問時
 に直接入手した資料による。 

本報告書は、 平成8年度に当事業団が実施した畜産物需要開発調査研究報告から、 
宇都宮大学教授是永東彦氏に改めてとりまとめていただいたものです。 
全文を入手希望の方は、 FAXにて企画情報部情報第一課あてにお申し込み下さ
い。

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