東南アジア向け豪州生体牛輸出に陰り (豪州)




● 東南アジア諸国での通貨危機が影響

 7月以来続く東南アジア諸国での通貨動揺のあおりで、 インドネシアを中心と
した豪州の東南アジア向け生体牛輸出が急減している。 

 豪州の生体牛輸出は、 近年の経済成長を背景とした東南アジアでの牛肉需要の
拡大により、 急成長を続けており、 96/97年度 (7月〜6月) の輸出頭数は
対前年度比37%増の86万頭に上った。 このうち、 インドネシア向けは半数以
上、 東南アジア向け全体では8割以上を占めており、 依然として不振から抜け出
ていない肉牛産業にあって、 東南アジア向けの生体牛輸出は唯一活況を呈してき
た。 

 しかしながら、 タイバーツから始まった一連の東南アジア諸国の通貨危機によ
り、 豪州の生体牛輸出はここにきて急激に減少しており、 特に9月に入ってから、 
東南アジア向け生体牛の主要積出港であるダーウィンからの生体牛輸出は、 以前
の水準より半減したと伝えられている。 


● 東南アジア諸国経済の回復がカギ

 豪州食肉畜産公社 (AMLC) によると、 通貨下落にともなう現地での輸入生
体牛価格の上昇率は少なくとも30%に上るとしており、 これに輸入物価上昇に
よるインフレに伴う個人消費の切りつめも加わり、 豪州産生体牛への需要は急速
に減退しているとみられる。 

 このため、 代金回収の遅滞や、 チャーター船料を負担しなければならないこと
など、 豪州サイドの輸出業者の一部は多大な損失を被っているとされる。 現在で
も、 契約の取り消しなどの混乱が続いており、 回復までには2、 3カ月を要する
とみられている。 豪州業界内には、 これを契機に東南アジア向け生体牛輸出は今
後、 急減するとの見方もあるが、 基本的にその動向は、 同地域の通貨危機の終息
と経済回復の如何にかかわっているといえる。 


● 豪州肉牛市況への影響は少ない

 一方、 肉牛の需給が引き締まる傾向にあることに加えて、 牛肉輸出が順調に回
復していることから、 生体牛輸出の減少による豪州肉牛市況への影響はほとんど
表れておらず、 肉牛価格は、 今後も上昇傾向を維持するとの予想が強い。 また、 
東南アジア向けの生体牛供給基地であるクインズランド州のパッカーの一部には、 
これまでの生体牛輸出増によると畜牛不足が緩和されるとし、 好意的に受け止め
る向きもある。 



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