鶏肉輸入禁止が他の畜産部門に波紋を広げる (豪州)




● 豪州政府、 鶏肉輸入解禁の決断を下さず

 豪州は、 検疫上の理由から、 鶏肉は、 ニュージーランドからの加熱調理品を除
いて、 全面輸入禁止としている。 しかし、 この措置は、 その科学的根拠が必ずし
も明確でなく、 自給完結型の養鶏産業の保護のための 「措置」 とみられている。 

 鶏肉の輸入解禁は、 タイ、 米国、 デンマークが要請しており、 豪州検疫検査局
は、 これに対応して、 すでに2年半余り前に科学的見地から輸入解禁の可能性を
検討し、 適切に加熱処理されたものは、 検疫上のリスクはないと判断した。 

 しかし、 当時の労働党政権は、 輸入解禁の最終決断を引き延ばしてきた。 その
後、 昨年3月の政権交代直後の5月に、 アンダーソン第一次産業大臣は、 加熱処
理済み鶏肉の輸入解禁を示唆したが、 養鶏関係者、 関係政治家の強硬な反発に遭
い、 検疫条件等の細部を関係者と継続協議することを約束し、 未だに最終結論が
下されていない。 


● タイ、 報復として豪州畜産品ボイコットを示唆

 このように、 豪州側の対応が遅々として進まない中、 先頃、 強く輸入解禁を要
請しているタイ政府の高官が、 解禁が認められない場合、 豪州産食肉・乳製品の
輸入をボイコットすることを示唆したことから、 本件は、 他の畜産部門を巻き込
んだ問題に発展してきた。 

 これに反応して、 酪農関係団体は、 直ちに、 不必要な検疫保護が酪農を危機に
陥れているとして、 鶏肉などの輸入にかかる検疫障壁の撤廃を政府に求めた。 ま
た、 豪州肉牛生産者協会会長も、 牛肉産業が 「人質」 にされてはならないと、 科
学的根拠に基づく迅速な解決を政府に求める声明を発表した。 


● 第一次産業大臣の今後の対応に注目

 アンダーソン大臣は、 昨年来、輸出産業としての豪州農業の繁栄のためには、W
TO (世界貿易機関) ルールを遵守していく以外に選択の余地はないと発言し、 
鶏肉の輸入解禁問題についても、 政治家の干渉を許さず、 科学的根拠に基づいて
最終判断を下すとしてきた。 しかしながら現実には、 養鶏業界の抵抗は、 依然と
して強硬で、 決断のタイミングが見出せない状況にある。 

 今回、 政治的にも影響力がより大きい酪農、 牛肉業界が巻き込まれたことから、 
大臣としては、 決断が下しやすい状況が整ってきたとみることもでき、 今後の対
応が注目される。 



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