生体牛の輸入条件を強化 (インドネシア)




● 豪州産素牛輸入による大規模生産が拡大

 インドネシアでは、 国内経済の発展に伴い、 牛肉に対する需要が急速に拡大し
ている。 政府は国内肉牛生産の振興に力を入れているが、 国内の牛肉供給は、 主
に、 小規模農家による肉牛生産、 フィードロットによる大規模生産および牛肉輸
入の3つの方法で行われている。 特に小規模農家による牛肉生産は、移民政策(人
口の過密なジャワ島から他の島への移住) の一貫として位置付けられており、 農
村における就労機会の拡大、 農村地域の所得向上のために、 政府によって広く一
般に推奨されている。 

 しかし、 これらの奨励策にもかかわらず、 実際には、 小規模農家による肉牛飼
養頭数や牛肉生産は伸び悩んでいる。 その一方で、 豪州産を中心とするフィード
ロット向けの肥育素牛の輸入が大幅に増加している。 同国の肥育素牛輸入頭数は、 
93年には4万頭であったが、 95年には19万頭へ、 96年には37万頭へと、 
大幅に増加した。 97年にも、 約30万頭の肥育素牛が輸入されると見込まれて
いたが、 最近公表された農業省畜産総局の統計によると、 輸入頭数は、 1月から
6月までの半年間で、 既に19万4千頭 (年間輸入見込頭数の65%) に達して
いる。 


● フィードロット業者の肥育素牛輸入条件を強化

 こうした中で、 一部には、 と場直行牛以外にも、 肥育素牛として輸入した生体
牛を直接と畜場に持ち込むフィードロット業者も現れており、 輸入生体牛からの
牛肉供給の増加が国内の小規模農家による肉牛/牛肉生産を圧迫している。 

 このため、 政府は、 今年から、 フィードロット業者に対し、 次のような条件を
付して輸入許可証を交付するなど、 生体牛輸入に対する条件の強化を開始した。 

1)輸入した肥育素牛の20%以上は、 近郊の契約農家に肥育させること

2)輸入頭数の15%以上は妊娠牛とすること

3)輸入頭数の15%以上に当たる頭数の国内産肥育素牛を購入すること

 しかし、 先ごろ畜産総局が取りまとめた調査結果によると、 上記の3項目とも
に実績が目標を大きく下回っていることが明らかとなった。 事態を重く見た畜産
総局は、 条件を満たさない業者に対しては、 輸入許可の取消しを含め、 厳しい対
応で臨むことを検討している。 また、 輸入生体牛を直接と畜場へ持ち込むことを
規制するため、 350キロ以上の生体牛に対する関税を大幅に引き上げることを
大蔵省に要請する予定である。 

 一方、 フィードロット業者側は、 政府が定めた条件を遵守する意向を持ってい
るものの、 契約農家や国内産肥育素牛を確保することが難しい事から、 意に反し
て条件を満たせない業者も多く、 政府に対する反発を強めている。 



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